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- 「レゴが大好き!」な少年は、建築専攻の大学院へ
- 大学受験はAO入試へとシフト=尖った才能が評価される
- 大人になってから「集中力」を獲得するのは難しい
「レゴより公文を優先」は正解か?
2015年に発売された、慶應義塾大学総合政策学部准教授・中室牧子さんの著書「教育の経済学」(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)が、ベストセラーになりました。高校受験や大学受験にお金をかける以上に、幼児期での投資が教育において効果があるという内容です。
この本にあるように幼児教育が盛んな昨今ですが、幼少期にはいったい何を学ばせるべきなのでしょうか?
私の知り合いで、小さなころからレゴや絵を描くのが好きな少年がいました。家族ぐるみで仲良くしていたので、一緒に旅行をしたり、ホームパーティを開いたりして、その成長をずっと見て来ました。
レゴで遊んだり、絵を描いたりしているときは何時間でも集中して、ときに独創的な作品を作って見せてくれました。
いっぽう、親御さんの方針は「公文式」。小学校受験を目指していたので、年少さんから漢字の書き取りや計算を始めていました。
その子は、「間違えると怒られる」勉強より、「創ると褒められる」レゴのほうが大好きでしたが、旅行でもノルマの漢字と計算をやらされ、家族旅行が台なしになることもありました。
中学校に入るくらいまでレゴで遊び、部屋の広さほどの作品を作ったこともあり、「3Dのように完成作品が頭の中に浮かんでいるのだろうね」などと分析したこともありました。
幼少期に育むべき資質とは?
さて、幼少期に何を学ばせるかはさておき、「育むべき資質」としては「好きなモノへの集中力」を筆頭にあげたいと思います。
集中してひとつのことに取り組む姿勢、これこそが何をするにおいても必要になる力ではないでしょうか。
現代の子は飽きっぽいとか、好きなモノがないと言われることもありますが、それはとりも直さず幼少期にそのような資質を育んでこなかったからではないでしょうか?
この知り合いの少年は、いまでは大学は建築学部に入学し、「ピサの斜塔」や「サグラダ・ファミリア」など海外の有名な建築物を研究に行ったり、単なる建築士ではなく、世界的な建造物を設計する建築士になりたいと大学院への進学も決めました。
小さなころに「そんなこと(レゴやお絵かき)してないで勉強しなさい!」と好きなことを取り上げてしまっていたら、いまの彼はあったでしょうか?
培った集中力は「未来を生き抜く力」になる
昨今ではAO入試が主流になりつつあり、ひとつの尖った能力で大学受験に挑戦できる時代になりました。1教科の優れた才能を評価してくれる大学も増えています。
たとえば、「公立会津大学」コンピューター理工学部のセンター試験は、物理・化学・生物・地学のどれか1教科で受験でき、「青山学院大学」地球共生学部の「自己推薦入試」では英検2級を持っていると小論文だけで受けることができます。
海外の大学では、英語力の点数やGPAが少々低くても、「将来何がしたいのか? そのために大学で何を学びたいのか?」「それはこれまでどんな活動をして来たからなのか?」という志望動機が明確であれば合格することもできます。
2020年の学習指導要領の改訂では、「深い学び」を求めています。これは知識を覚える勉強ではなく、物事の本質を深く探って真相を明らかにするような学びで、これが「探究学習の意味」です。
みなさんも実感しているように、社会に出ると、深い学び・探究の連続です。簡単に答えが出て、成果が出るような仕事はひとつもありません。
モノをひとつ売るにしても、たくさんのリサーチをし、議論し、試作する。ダメなら何度も何度も手直しをし、課題を解決し、そしてひとつの商品がやっとできあがったとしても、さらにいい状態を求めて探究が続きます。
集中力がある子は、スイッチが入れば成果が出るまでやり切る力を持っていますが、あきらめの早い子は、結果まで辿り着けずに終わってしまいます。これは勉強だけでなく、仕事においても同じではないでしょうか?
勉強をパソコンに例えると、問題を解く能力がOSだとしたら、集中力はCPU。いくらOSが優れていても、処理能力が低ければ結果は出せないのではないでしょうか?
大切なのは「何かに集中する力」。それはまさしく幼少期に身に付く資質で、大人になってからではなかなか得がたい力だと思います。
◉今日からはじめる「共育」実践
文/鏑木 稔
(株)ジプロス代表取締役。東京東部で22年間学習塾を経営するなかで、のべ6000名を超える生徒の進路を指導。教育の最前線に携わりながら、わが子の教育環境や進学について考えていくなかでグローバル教育の到来を予見し、2015年に本物の英語力を育成する探究スクール「GLI」を開校。
◎提供:GLI晴海校