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【EDU-Portニッポン】日本型教師の育成、部活を輸出…海外展開事業からみる日本型教育の強み
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日本型教育の魅力とはなんなのか
海外の学校に在籍する機会があると、日本の学校の子どもたちの備えた算数力や基礎的な運動能力の高さに改めて気づかされた、という人も少なくないと思います。
諸外国の首脳や教育大臣などからも日本型教育への関心は高く、「日本の小中学校制度は独自であり、インドにモデルとして導入したい」(インドのモディ首相)、「テイン・セイン大統領から日本の初等中等教育の教育制度を取り入れるように指示があった」(ミャンマー・大統領府大臣)など、具体的な方針を示す国もあります。
そんななか、2016年8月、日本の関係省庁や政府系機関、教育関連企業などを中心とする日本型教育の海外展開官民協働プラットフォーム事業「EDU-Portニッポン」が立ち上がり、有望な海外展開案件を後押ししていく取り組みがスタートしています。

EDU-Portニッポンの目的は、①親日層の拡大、②日本の教育機関の国際化、③経済成長への貢献を掲げていますが、2001年から2012年までの世界の教育分野市場は1.5倍に拡大しており、日本型教育を売り込むチャンスでもあります。
さて、このEDU-Portニッポンでは、9月30日〜10月14日まで、日本型教育の海外展開モデルとして適した「パイロット事業」を募集。
パイロット事業に選ばれると、海外展開先における現地関係機関との交渉・調整支援、実施費用の一部支援(公認プロジェクトのみ)を受けることができます。
申請のあった26機関についての審査結果が11月25日に発表され、5機関が「公認プロジェクト」、9機関が「応援プロジェクト」(予算はつかない)に採択されました。
これらのプロジェクトを見ていくと、さまざまな教育機関や自治体などがこれまで培ってきた教育の特色やノウハウが濃縮されており、日本型教育の強みとはなんなのか、よくわかるラインナップとなっています。
タイにおいては、「東京学芸大学」が日本人学校を拠点に日本型教師教育の国際展開モデル(公認プロジェクト)を、「スポーツデータバンク」は日本型部活を輸出(応援プロジェクト)する予定。
また、ベトナムでは、「ミズノ」の全公立小学校への導入を目指す運動プログラム、「ヤマハ」の初中等教育の音楽教科に器楽教育導入・定着事業が公認プロジェクトとして採択されており、国の後押しがないとなかなか導入が難しいプロジェクトなので、今後の展開が興味深いですね。
「公認プロジェクト」5機関
1. 在外教育拠点(日本人学校)を拠点とする日本型教師教育の国際展開モデルプロジェクト
- 機関名:東京学芸大学
- 対象国:タイ
現地日本人学校との密接な関係をベースに、「授業研究」を日本型教育の特徴として位置づけ、タイ(バンコク日本人校)からその展開を図る。まずは同学校の日本人教員を指導者として育成し、現地大学と連携して現地指導者を育成するなどにより日本人学校を拠点とする海外展開モデルに取り組む
2. 子どもの主体性を培う『日本型防災教育モデルBOSAI』を用いた安全で安心な学びの環境づくり支援
- 事業名:広島大学
- 対象国:ネパール
震災を経験したネパールの小学校に対し、国際協力機構(JICA)の支援により開発された防災教育モデルを普及する。現地NGOと協働し、学校と地域の連携のもと、生徒が主導的に参画する学校防災策定計画モデルを実証・普及する
3. インドにおける日本型職業訓練事業
- 機関名:(株)学研ホールディングス
- 対象国:インド
国内の専門学校・自動車学校等と連携し、インドにおいて日本型の職業訓練学校を開設。初期段階においては、ニーズの高い運送系自動車運転免許訓練、重機オペレーション訓練を対象とし、スキルだけでなく、安全教育や労働モラルを身につけた人材の輩出を目指す
4. 初等務教育・ヘキサスロン運動プログラム導入普及促進事業
- 機関名:ミズノ(株)
- 対象国:ベトナム
ベトナム教育訓練省との交渉、指導者育成、パイロット校における実証等を通じ、独自に開発した運動プログラムのベトナム全公立小学校への導入を目指す。これにより、体育の授業時数が限られ、「走る」「跳ぶ」「投げる」の運動要素が少ないベトナムの体育授業の課題を改善する。そして、運動することの楽しさと喜びを提供し、肥満に代表される健康被害の低減、健康増進に寄与することを目指す
5. 初等中等義務教育の音楽科への器楽教育導入及び定着化事業
- 機関名:ヤマハ(株)
- 対象国:ベトナム
ベトナムの初中等教育の音楽教科に器楽教育を導入するため、クラブ活動での試行、器楽教育に関する専門家派遣、教員養成や教材開発の支援等を行う。器楽教育には、自由な感情表現を通じた他者との協調や責任感の醸成といった教育上のメリットがあり、本事業はベトナムにおける音楽教育の充実に寄与する
「応援プロジェクト」9機関
1. 埼玉版アクティブ・ラーニング型授業による授業改善のための教員研修支援プロジェクト
- 機関名:埼玉県教育委員会
- 対象国:フィリピン
フィリピン共和国(セブ市内)の初等中等教育の学校に対して、主体的・対話的な深い学びを実現できる埼玉版アクティブ・ラーニングである「知識構成型ジグソー法(KCJ法)」による授業を実践できるようにするための教員研修を実施する
2. ミャンマー国の工科大学への日本方式実験室安全教育の普及
- 機関名:愛媛大学
- 対象国:ミャンマー
複数の国内大学との連携のもと、ミャンマーの工学系大学へ日本型安全衛生教育を導入。具体的には、現地大学の教員に対して日本で安全衛生教育を実施する。つぎに、国内で使用している教材を修正し、将来的には現地大学の学生への安全衛生教育の充実を図る
3. 福井型教育の日本から世界への展開」スタートアップ事業
- 機関名:福井大学
- 対象エリア:アフリカ
21世紀の学校づくりと教師の学びのための専門職学習コミュニティ・ネットワークの創設に向け、アフリカからの研修生を対象とした授業づくり・学校づくりに関する日本型教育の実践交流会を、国際協力機構(JICA)事業と連動して実施する
4. モンゴルにおける日本型宇宙教育とIoT / ICT 技術の海外展開・運用人材育成、高専教育連携
- 機関名:千葉工業大学
- 対象国:モンゴル
モンゴル国の大学と連携し、モンゴル国に新たに開校する高等専門学校の学生を対象として、日本型の宇宙教育を提供する。システムエンジニアリングに基づくプロジェクト経験や実務教育により、高等専門学校において技術者・現場監督を育成する
5. 知・徳・体 日本型教育の連携、フィリピン三大学をキーステーションとする教員研修計画
- 機関名:日本教育工学会
- 対象国:フィリピン
日本教育工学会が中心となって国内の複数大学が連携した取り組み。フィリピンを対象国として、21世紀型情報教育を担う教員養成のため、オンライン研修および講師派遣を実施
6. タイ人大学生ビジネス人材育成事業~日本型ビジネス教育の学びシステムの構築~
- 機関名:HR Japan ヒューマン・リソーセス・ジャパン
- 対象国:タイ
日本国内で実施している企業社員研修向けのコンテンツ(ビジネスマナー、社会人としての心構え、仕事の進め方)をベースにして、タイの大学生向けに研修を提供。Web学習とリアルな研修を組み合わせて実施することで日本型ビジネス人材の育成を図ると共に、研修参加者情報を集約することで、現地に進出した日本企業による採用活動への貢献も企図
7. 日本型学習プラットフォーム「みっけ」のアジア展開
- 機関名:(株)朝日新聞社、(株)博報堂
- 対象国:タイ
タイで実施している小学生向け学習コンテンツ提供事業の一層の拡大を図るとともに、インドネシア、ベトナム、インド、マレーシア、台湾、ミャンマーなど近隣アジア諸国への展開準備を推進する。質の高い学習教材の提供を通じ、優れた日本式学習コンテンツの供給を促進し、対象国における教育の質の向上を図る
8. 日本型部活動の海外輸出
- 機関名:スポーツデータバンク(株)
- 対象国:タイ
日本型教育のひとつとして「部活動」に注目し、タイ(バンコク)へ日本人講師の派遣を通じて現地で「部活動」を展開する。将来的には、協賛企業の確保、タイ国内および周辺国への拡大、「部活動」の種目拡大を目指す
9. ベトナム人日本語学習者における語彙定着プログラムの開発準備
- 機関名:(株)ベネッセコーポレーション
- 対象国:ベトナム
ベトナム人向けの日本語学習(とくに語彙習得)教材の開発を行い、ベトナムにおける日本語レベルを引き上げることで、将来的な留学生増への貢献などを企図する。具体的には、教材のベータ版および学習前後の語彙力を計測するためのテストを開発し、実際の学習とその効果計測を実証
【EDU-Portニッポン「パイロット事業」採択】
- 採択時期:2016年11月
- プロジェクト:公認機関/5機関、応援プロジェクト/9機関
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