海外も選択肢? でも、娘に合うのかわからず不安 〜ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」と足場かけ理論から考える

「うちの子にはまだ早いかも…」という不安
中学2年の娘がいます。先日、学校の先生から「将来の選択肢に海外も入れてみては?」と言われました。
確かにこれからは、国内だけじゃなく海外という選択肢もある時代。でも、うちの子は慎重な性格で、大きな環境の変化にちゃんと対応できるのか、正直なところとても不安です。
英語も特別得意というわけではないし、いきなり海外で学ぶなんて本当に大丈夫なのかな? そもそも本人にやってみたいという意欲があるのかもわからなくて…

「合わなかったらどうしよう」という気持ちがぐるぐるして、なかなか前に進めません
ヒント:レジリエンスに目を向けて」コンサルタントの視点
このようなご相談内容、とてもよく耳にします。進路の選択肢が広がる一方で、「この子に合うのか」という問いは、じつはとても深いもの。
私たち大人が見ているのは、“いまの状態”。でも大切なのは、“ここからどれくらい伸びるか”という可能性のほうです。
「安心基地」になってあげる
心理学者のヴィゴツキーは、人の成長は「発達の最近接領域(ZPD)」——つまり、「少し背伸びすれば届く範囲」でもっとも促されると提唱しました。



そして、その背伸びを支える存在が、保護者や教育者の“足場かけ”なんです
「小さな成功」を一緒に見つける
たとえば、海外の学びも“いまの状態では難しい”ように見えるかもしれません。けれど、段階を踏んで、小さな体験を重ね、伴走する存在がいれば、“合うようにしていく”ことは可能です。
大事なのは、本人がどこかで「やってみたいかも」と思えるきっかけを持つこと。そしてそのときに、「大丈夫だよ、一緒に考えよう」と支えられる関係があることです。
ヴィゴツキーのZPDとスキャフォルディングとは?
レフ・ヴィゴツキー(1896-1936、ロシア)は、「他者の支援によって可能になる学びの領域」をZPDと呼び、そこにもっとも深い成長があると述べました。
保護者や先生が「ちょうどいい支援」をすること=“足場かけ(スキャフォルディング)”によって、その子が本来持っている力が引き出されるのです。
海外進学はまさにこの“ZPD”の中にある挑戦かもしれません。だからこそ、「まだできない」ではなく、「できるようになる可能性がある」というまなざしが大切になります。
チェックシート:自分の価値観や心のクセを見つめてみよう
- □ 海外はハードルが高いと感じる
- □ この子は慎重なタイプだから、無理かも
- □ 私自身が海外に縁がなかった
- □ 日本の方が安全で安心
- □ 海外に行かせるのは、親として無責任な気がする
- □ 周りの目が気になる



チェックが多かった人は子ども思いの、慎重で優しいママです。でもその不安が、「わが子の本来の可能性」をそっと閉じてしまうことも
生活での実践:この経験を、進路選択の“軸”に変える
- 海外プログラムはまず短期から試してみる
- 英語力よりも“安心できる人がそばにいる”ことが大切
- できたことを一緒に振り返る経験を積む
- 本人の「ちょっと興味あるかも」の声を見逃さない
進学先ではなく、「向き合い方」が未来をつくる
その後、短期の海外キャンプの案内を娘と一緒に見てみました。
最初は「自信ない」と言っていたけれど、「1週間だけならちょっと行ってみようかな」と少しずつ前向きな気持ちが見えてきました。
親として「できるようになる可能性がある」という目で見られるようになったことで、娘にも変化が生まれたのかもしれません。



“合うかどうか”ではなく、“合うようにしていく”。そう思えたとき、不安は少しずつ希望に変わっていきました