日本人はどのくらい留学しているのか——
昨今、若者が留学しない「内向き指向」が問題視されてきましたが、フィリピン留学のように、ここ数年多くの日本人が訪れる新たなる留学トレンドも到来しているというのに、「ホントに留学しなくなったの?」とギモンに感じていた人もいるかと思います。
ひとくちに留学生といっても、その属性や目的、期間、渡航先によりだいぶ事情は異なってくると思いますが、留学生数として参考にされているのは、文部科学省が毎年公表している統計「日本人の海外留学者数」が多いようです。
これはOECDやユネスコ、各国統計機関の調査結果を集計したもので、2016年3月に発表された最新(といっても2013年の調査)の留学生数は、5万5350人。
内向き指向であるという指摘は、この文科省の統計に基づいたものが多く、「低迷していた留学生が、2012年に6万138人に増加したものの、2013年にはまた5万5350人に減少した」と、分析されています。
文科省の調査が特殊なのは、海外の高等教育機関(学部や大学院留学)に在籍している学生に限った統計だということ。
つまり、フィリピンや夏の短期研修などに参加した、もっとも層の厚い「語学留学」の数はカウントされていません。
さらに、国内の大学に在籍しながら協定先の海外大学に留学したケースなども含まれておらず、実際にはどのくらいの留学生がいるのか把握されていませんでした。
中高生は1万2000人が留学
しかし、2016年11月16日に「一般社団法人海外留学協会」(JAOS)が公表した統計によると、日本人留学生は年間約17万人と試算。
JAOSとは、1991年に設立された、留学サービス事業者を中心に65以上の団体が加盟する民間機関で、おもに個人向けの語学留学や、現地の高校・中学などに通う留学生を対象にサポートする団体が参加しています。
このような短い期間や私費での留学の実態を把握するべく、2016年1月に、文科省の外郭団体「日本学生支援機構」(JASSO)が、JAOS加盟事業者を対象に「留学事業者36社による日本人留学状況調査」を実施。
これにより、文科省の統計とはほぼ重複しない、6万4988人の留学生(2014年度、2014年4月〜2015年3月)がいることが判明したそうです。
この数字に、さらにJASSOによる国内大学等と海外大学の協定に基づく留学生など(「協定等に基づく日本人学生留学状況調査」2014年度)5万2132人、先の文科省の5万5350人を合計すると、17万2470人に。
もちろん、JAOSに加盟していない留学サポート事業者も存在しており、それらの数字を加えることでさらに留学生数は増えることになるはず。
でも、より実情に即した数字がわかって、なんだかちょっとスッキリしますね。
ちなみに、この「留学事業者36社による日本人留学状況調査」によると、フィリピンには4338名が語学留学しているほか、中学・高校留学(交換留学&私費留学)では1万2552名が留学しているそうです。
中学・高校留学は、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの英語圏5ヵ国に集中しているそうですが、こんなにもたくさんの中高生が留学していることに勇気をもらえますね。
【2014年度留学事業者36社による日本人留学状況調査】
- 調査主体:独立行政法人日本学生支援機構
- 調査時期:2014年度(2014年4月〜2015年3月)
- 調査手法:「JAOS」に加盟する留学事業者へのアンケート調査