伊藤澪里(UWC ISAK Japan 2年生)
Middle East studiesにとくに興味があります。中学までは川崎市の私立中学校に通っていましたが、帰国子女の友達に影響され、ISAKへの入学を決めました。ISAKは長野にある全寮制高校ですが、興味のある講演会には東京に行ってでも参加する熱意があります[/author]
新しい場所で自分を発見したい!
私は高校2年生の夏、カナダのビクトリアにある全寮制のインターナショナルスクール「ピアソン・カレッジUWC Pearson College UWC」で行われたサマースクール、「ピアソン・セミナー・オン・ユースリーダーシップ Pearson Seminar on Youth Leadership 2018」(PSYL2018)に参加してきました。
ピアソン・カレッジUWCは、1974年に創設され、世界に17校ある「UWC」(United World Colleges)の2校目として選ばれた、歴史のある高校です。UWCは日本にもあり、私が在籍している、軽井沢の全寮制インターナショナルスクール「UWC ISAK Japan」となります。
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私の留学経験は、これまでセブ島での2週間程度の語学研修のみでしたが、長い夏休みに新しい土地で新しい人に会えば、自分を変えられるかなと考えていました。
とはいえ、留学をしたくても、未知の場所に行くのはやはり不安。そんなとき、学校の先輩が「変わったプログラムだけど、澪里なら楽しめると思うよ」と紹介してくれたこのプログラムに参加することにしました。
「トビタテ!」で奨学金を得て参加
「PSYL2018」は、2018年7月15日(日)〜8月4日(土)の3週間に渡り開催されました。15才から18才の生徒が応募でき、英語のショートエッセイなどを提出して参加を許可されます。
プログラム参加費は、3週間で約34万円。早めに応募して、早めに飛行機のチケットを購入すれば、全部で50万円くらいと、カナダのサマースクールのなかではかなり安価です。
私の場合、PSYLには2017年12月19日に応募し、すぐ参加許可をもらいました。
今回のプログラムは、文科省の奨学金制度「トビタテ!留学JAPAN」を利用して参加しましたが(高校生コース4期生として採用)、トビタテには2018年1月上旬に応募書類を提出していたので、その時点でPSLYへの参加は確定していました。
ちなみに、トビタテの応募書類には「誰も負けることのないコミュニティーを作るカギをみつけたい」と書いたのですが、カギを見つけるどころか、PSYL自体が本当に素晴らしいコミュニティそのものでした。トビタテには、ぜひ自信満々でチャレンジしてください。そうすれば、きっと受かりますよ!
世界から70名の高校生が参加
さて、7月15日にスタートしたPSYL2018ですが、カナダやアメリカ、ヨーロッパ、中国、台湾、日本から70名ほどの参加者が「ピアソン・カレッジUWC」に集合しました。
日本からの参加者は、私を含め8名ほど。そのほとんどが日本の普通高校に通う高校生で、友人同士で来ている人もいましたが、日本ではあまり英語でのコミュニケーションする機会はないようでした。
このキャンプでは、自分自身・他人・コミュニティへと貢献することを通して、3週間をかけて「自分の」リーダーシップを身につけていきます。
「自分の」というのは、このプログラムにリーダーシップのための講義はなく、アウトドア・アクティビティやディスカッション、ワークショップなどを通して、参加者が自分自身で感じ、主体的にリーダーシップを向上させていくしかけとなっていました。
このキャンプでは、とくに1週目は朝から晩まで、毎日ぎっしりスケジュールが詰まっていました。
毎日かならず行われるのが、朝9時の「Community Building」(朝礼のようなもの)と、夕食後の7時に行われる「Spirit Spot」です。
「Spirit Spot」は、45分間、芝生やベンチのうえなど自分で選んだ場所で、日記を書いたり、寝たりと、自由に過ごしながら、ひとりで心を落ち着けるための時間です。3週間、毎日45分間同じ場所でじっとしているーーこのキャンプはかなり忙しいので、1日のなかにこのような休憩する時間があるのは理にかなっていると思いました。
深い学びが得られた「学びのサークル」
アクティビティでとくに強く印象に残ったのは「LGBTQ2+」に関するものですが、ほかにも、社会的圧力がどのようにマイノリティーの人々に影響するかなどを学ぶ「Oppression」、「地球温暖化」「政治問題」など、さまざまな講義やワークショップが提供されました。
アクティビティでは、下記のような4つの要素からなる「学びのサークル」を通じて、深い学びを得ることができます。
<学びのサークル>
- 状況の把握(いま何が起こっているのか、何が一番大切なのかを理解する)
- ワークショップ
- リフレクション(実際にその問題がどのように世界に実在しているかを講演や映画を通じて知る)
- 自分たちで理解したことをプレゼンテーションやワークショップを作るなどして外に出す
また、このワークショップでは、さまざまなタイプの学習者が同じ内容をほぼ平等に学びを得ることができるよう設計されていることに感動しました。
学習者には、下記のような4種類のタイプがあります。
- 体験型学習者
- 観察型学習者
- 考察型学習者
- 実験型学習者
もっとも一般的な「体験型学習者」は、ワークショップのなかで生まれた気づきや感情をそのまま学習としてインプットにすることができる人たちです。
ほとんどのワークショップがこの体験型学習者向けに作られていますが、このタイプのワークショップでは深い学びを得ることが難しい人たちがいます。
「観察型学習者」は、映画や講演、他の人の行動を観察したり、ワークショップ後のリフレクションを通して学び、頭脳型の「考察型学習者」は、問題やシステムについて理屈や分析を重視して考えることで学習し、「実験型学習者」は、実際に自分たちが主体となってワークショップをしたりすることによって得た結果を元に学びます。
これまで私が受けてきたワークショップは、すべて「体験型学習者」のことだけを考えて作られており、「観察型学習者」寄りの私は、学びを実感することはありませんでした。そもそも、この4タイプの学習者の種類が存在することすら知りませんでしたが、PSYLではこの基本から教えてくれ、どのワークショップもこの概念に基づいて作られていたので、みんながそれぞれ深い学びを得ることができました。
ほかにも、「Workshop Design」というワークショップに参加できたことも、PSYLに参加してよかったことのひとつです。ここでは、大人が学習する際のルールやキャパシティを学び、質のいいワークショップの作り方も学びました。
チームで開催したワークショップに満足!
キャンプの終わりのほうで、自分の思いを共有したい参加者がワークショップを開催できる日がありました。私は、ワークショップに関して得た知識を使い、「イスラエル・パレスチナ問題」に関するシミュレーション型ワークショップを開きました。
私の親友の家族がパレスチナのガザに住んでおり、「イスラエル・パレスチナ問題」にとても関心があったので、シリアのパレスチナ難民キャンプで生まれ育った人、模擬国連でパレスチナの問題を扱った台湾人、同様の関心のあるカナダ人をメンバーとするチームを組みました。
ワークショップでは思い通りに進まないこともありましたが、参加してくれた人たちからはポジティブなフィードバックを受けることができ、メンバー全員が満足できる結果になりました。
カナダの大自然も満喫した3週間
このサマーキャンプでは、講演やワークショップだけでなく、ビクトリアの街中にある有名な広場でフラッシュモブをしたり、アウトドア・アクティビティやダンスパーティー、タレントショーなども楽しみました。
日本人の参加者と協力して「ソーラン節」のセッションを開き、練習に参加した10人で最後の週に行われたタレントショーで発表しました。
アウトドア・アクティビティでは、カヌーやカヤック、ハイキング、サイクリングなどができます。
私はハイキング先の湖で溺れたり、蜂に刺されたりしながらも、カナダの自然が大好きになってしまうくらい、カナダは美しかったです。
PSYLは、小説として書けるくらいたくさんの出来事が詰まったプログラムでした。この夏の日々を通じて、私は新しい自分と毎日出会い、より深く自分自身を発見できました。
苦手な言語の壁とシャイな性格を取り払い、「私の」リーダーシップを実現できたことは確かです。自分を変えたい人、新しいことがしたい・知りたい人にオススメです!
Pearson Seminar on Youth Leadership
【Pearson Seminar on Youth Leadership 2018】
- 主催:ピアソン・カレッジUWC
- 日程:2018年7月15日(日)〜8月4日(土)
- 場所:「ピアソン・カレッジUWC」
- 対象:15〜18才
- 参加費:3950カナダドル(早期申し込みの場合)