なぜ、海外大学との提携プログラム解消?
2021年8月14日、中国政府は、海外教育機関との協力関係見直しの一環として、海外大学との提携プログラム286件の廃止を発表しました。中止が決定したのは、ロンドン市立大学、ニューヨーク大学、香港大学といった名門大学とのパートナーシップも含まれています。
当局が公表したリストでは、以下のような提携プログラムの中止が明らかになりました。
- 「ハルビン理工大学」と「ロンドン大学シティ校」間の、機械設計と自動化に関する学士プログラム
- 「北京大学」と「香港大学」間の、経済・金融に関する修士プログラム
- 「華東師範大学」と「ニューヨーク大学」間のソーシャルワークプログラム
日本に関連するものとしては、「東北財経大学」と「立命館アジア太平洋大学」間の、国際経済・貿易学士プログラムが終了。ただし、「大阪産業大学」、「長岡技術科学大学」、「山梨大学」など10件のパートナーシップはそのまま継続が確定。
中国当局は各プログラムを中止とした理由には触れていませんが、一定の評価基準に満たないと判断されたプログラムは随時中止し、場合によっては新たなプログラムに認可を与えるケースもあるとの見方もあるようです。
英語教育への取り締まりも強化
ただ、7月の英語教育業界の取り締まりから1ヵ月も経たないタイミングでの発表に、大きな不安を募らせる当事者も少なくないようです。事実、7月24日の中国主要機関が策定した教育産業への取り締まり策は、業界全体へ大きな衝撃を与えました。
中国政府は、学習指導を行う企業に対して非営利団体への切り換えを強制し、新会社設立を禁止するほか、海外からの投資の受け入れを違法行為として定めました。教育企業は、サービスの柱であるオンライン英語講座で海外のネイティブスピーカーを使用できなくなり、いっせいに中国在住の英語チューターを募集するなど慌ただしい対応に追われたり、中国でのサービス提供を当面停止するケースや、破産申請を行う大手企業も出てきています。
こうした規制強化の動きには、社会問題化している過剰な教育熱を鎮め、経済的にも精神的にもゆとりをもたらすことで、出生率低下に歯止めをかけたい中国政府の狙いがあるようです。
いっぽうで、この海外チューターによる英語教育の禁止と海外大学との提携プログラム終了は、中国政府主導の教育産業規制強化の一環という見方、定期的な評価プロセスに過ぎないという意見もあります。
しかし、いずれにしても教育熱心で経済的に豊かな家庭は、このような規制強化があってもあらゆる手段で教育支出を重ねていくのは変わりないようです。