都立国立高校在学中に、SDGsを身の回りから実践するための高校生を主体とした学生団体「50cm.(50センチ)」を創設した入江遥斗さんが、大学に進学して立ち上げた「Design,more.」。
持続可能な社会を実現するための行動の創発を目指し、「デザイン」の視点を取り入れたコンテンツを用いて多分野横断的な活動を展開するプロジェクトで、「学びと気づきの場をすべての人に」を理念に、映像制作・出張授業・講演活動などを展開しています
Design, more.(デザインモア)
入江遥斗(いりえはると)さん
横浜国立大学・都市科学部都市社会共生学科1年生。高校1年生の生物の授業でSDGs(持続可能な開発目標)を学んだことがきっかけで、学生のジブンゴト化を目指した映像制作に取り組む。学校の授業で取り入れやすい2分間の動画「What’s SDGs?」をはじめ、各種映像や冊子、プレゼンテーションのデザインを手がける。大学では、都市構造の視点からコミュニティやWell-beingについて研究している
なぜこの活動を始めたのですか
私は高校1年生でSDGsを知り、基本理念(No one will be left behind)はもちろんのこと、各目標のつながりや主体の包摂性(誰もが活動の主体になれること)に魅力を感じました。
同時に、社会課題を「自分ごと」として捉え身の回りのことから活動できる場(高校生を主体としたプラットフォーム)がないことに気づきました。
このような気づきから、学校や学年の枠を超え、SDGsを身の回りから実践するための、高校生を主体とした学生団体「50cm.(50センチ)」を創設。
2019年に受験のため初代代表を退きましたが、いまでも高校生が独創的なアイデアで社会課題をパワフルに解決しています。
※下の動画は、「第1回SDGs Creative Award」で「SDGs普及促進映像大賞」を受賞した入江さんの作品「「Take Action, Again.」
現在、学校や会社のなかでサステナブルという言葉が加速度的に注目を集めていますが、実際に行動に移している人はまだまだ少数です(学校現場では、SDGsの項目を17個暗記することを教えられるなど、SDGsの本質からは意識が離れてしまっているように感じます)。
同時に、行動している人は「意識高い系」として認識され、活動に近寄りがたいような印象がありますが、このような近寄りがたさや精神的な「気恥ずかしさ」を、福祉の世界では「スティグマ」という言葉で表現します。
福祉の世界と同様に、行動する人としない人の間に存在する意識と行動の壁(スティグマ)を「デザイン」のチカラでクリエイティブに乗り越えようと思ったのが、現在の活動(Design,more.)を始めたきっかけです。
どのような活動をしていますか
現在、Design,more.が展開している活動を大きくわけると
- コンテンツ制作
- ワークショップ
- イベントの登壇
の3つです。
設立日 | 2020年 |
創設者 | 入江遥斗(共同創設:村瀬悠) |
所在地 | 東京都町田市野津田町3741-5 |
チーム | 横浜国立大の同期で共同創設者の村瀬悠さんと活動 |
連絡先 | designmore2020@gmail.com |
SNS |
1.コンテンツ制作
学校の授業や企業の研修で活用いただける動画やプレゼンテーションの制作、公開を行なっています。
公開しているプレゼンテーションには、クリエイティブコモンズライセンスが付与されており、好きな資料を活用できます。デザインが社会に与える影響について説明することで、新しい意識変革の波を生み出すことができます。
2.ワークショップ
次世代にデザインの持つチカラと行動変革の重要性を伝えるために、ワークショップを構築・開催しています。
コロナ拡大で対面のイベントが難しくなっているなか、現在力を入れているのがオンラインワークショップ「TY2 Project」です。昨年8月に広島県安芸郡の公立中学校で第1弾を行いました。
このプロジェクトでは、地域ごとのニーズに対応するオリジナルの資料やスライドを活用して学生に「学びとつながりの場」を提供し、主体的な学びを応援したいと考えています。
3.イベントの登壇
各種イベントで、SDGsを自分ごと化し行動するための実践例や、意識改革とデザインの重要性について講演しています。
今年度からは、元米国副大統領で現在は環境保護に注力するアルゴア氏のコンテンツ(The climate reality project)やコミュニケーションデザインなどの新しい分野にも挑戦しています。
新型コロナウイルス感染症の影響により対面による活動展開がなかなか難しいことから、現在はオンラインイベントやコンテンツ開発に力を入れています。
2021年からは所属している大学や他団体との提携など、活動の幅をより広げたいと考えています(新しいコンテンツも続々と登場予定ですので、乞うご期待!)。
活動の目的について教えてください
日本を代表するバンドであるサカナクションの山口一郎さんは、しばしば「マイノリティの中のマジョリティ」という言葉を使っています。
持続可能な社会を実現するためには、ひとりひとりがSDGsの本質を理解し、行動することが不可欠です。
このように、マイノリティ(少数派)とマジョリティ(多数派)の橋渡しとしてDesign,more.が機能し、「多様性」や「賑わい」が生まれることが理想です。
現在の学業と活動はどのようにリンクしていますか
活動のなかで、上述のように意識差に関する問いを立てた私は、人々が集中し、意識差が生まれる「場」としての都市に興味を抱きました。
都市について深く調べるうちに、都市計画やコミュニティのデザインが、多様性や賑わいを生み出す可能性を見出しました。
横浜国立大学の都市科学部では、都市基盤計画から文化交流まで、都市を構成する要素について分野横断的に学ぶことができます。授業のなかで、活動に関する気づきや学びを得ることができています。
このように、自身の興味対象の「場」に注目してみることも進路選択のひとつの方法であると考えています。
どのようにすれば活動に参画することができますか
以下の方法で私たちの活動に参画できます。
コンテンツの利用
Design, more.では、デザインの視点から社会問題を捉え、クリエイティブな解決方法を引き出すコンテンツ(プレゼンテーション・ワークシート)を多数用意しています。
これらのコンテンツを学校の授業や課外活動などに取り入れ発信していただくことにより、より多くの人にDesign,more.の取り組みを知ってもらう機会となります。同時に、利用いただいた方の発信力の向上にもつながります。
イベントへの参加
現在、さまざまな機会でDesign, more.の活動を話すことができるようになってきました。
2021年は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況に応じて、さまざまな形でイベントを展開していきたいと考えています。登壇情報はDesign,more.の公式ホームページおよびFacebookから確認できます。
ご相談
Design, more.は「社会課題をクリエイティブに解決したい」「SDGsの達成のためにできることはなにか」など、みなさんの悩みに向き合い、最適な方法を模索していきます。
また、地域に根ざしたトピックや中高生向け資料など、「自分ごと化」しやすいトピックを打ち合わせのなかでオリジナル制作します。製作した資料などは、今後のワークショップなどで持続的に利用できます。
Design, more.を支援する方法はありますか
Design,more.の公開しているコンテンツを利用いただくことはもちろん、ワークショップ運営の依頼も受け付けています。教育に係るイベントなどは原則無料で開催できます。
イベントやワークショップでは、参加者がSDGsを「自分ごと」化できるようなオリジナルのスライド・ワークシートを作成します。これらの資料はイベント終了後にも継続して利用できます。
いちばんの支援は「ともに気づきや学びを広げる」機会づくり(登壇)をいただくことです。イベントの開催方法については、公式サイトやFacebookから問い合わせください。