3年ごとの国際的な学習到達度調査
「経済協力開発機構」(OECD)は、国際的な学習到達度調査の最新版「PISA2018」を、2019年12月3日(火)に発表しました。
「PISA」(Programme for International Student Assessment)は、15才を対象に「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野について、2000年から3年ごとに調査を実施。PISA2018は7回目の調査となり、日本では高校1年生を対象に2018年6~8月に実施されました。
日本は、「読解力」が15位(504点/OECD平均は487点)、「数学的リテラシー」が6位(527点/同489点)、「科学的リテラシー」が5位(529点/同489点)と、いずれも前回2015年の調査時より低下し、「読解力」は過去最低となりました。
2018は読解力にフォーカス
PISAでは、毎回中心分野を決めて詳細な調査が行われますが、2018は「読解力」について重点的に調査・分析を実施。
OECDは、読解力について「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと」と定義。①情報を探し出す、②理解する、③評価し、熟考するという3つのポイントで能力を測定しています。
これらの調査結果から、日本の生徒は「テキストから情報を探し出す問題や、テキストの質と信ぴょう性を評価する問題の正答率が低く」、さらに「読解力の自由記述形式の問題において自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することに課題がある」との分析がされました。
「有意な変化が見られない」日本
ちなみに、日本の順位と得点はどのように推移してきたのか? 気になりますよね。下記に過去7回のPISA結果をまとめてみました。
<過去7回のPISAにおける日本の順位とスコア>
読解力
- 2000年…8位(522)
- 2003年…14位(498)
- 2006年…15位(498)
- 2009年…8位(520)
- 2012年…4位(538)
- 2015年…8位(516)
- 2018年…15位(504)
数学的リテラシー
- 2000年…1位(557)
- 2003年…6位(534)
- 2006年…10位(523)
- 2009年…9位(529)
- 2012年…7位(536)
- 2015年…5位(532)
- 2018年…6位(527)
科学的リテラシー
- 2000年…2位(550)
- 2003年…2位(548)
- 2006年…6位(531)
- 2009年…5位(539)
- 2012年…4位(547)
- 2015年…2位(538)
- 2018年…5位(529)
OECDは「各国・地域の平均得点の長期トレンド」も分析しており、日本の傾向は「統計的に有意な変化が見られない「平坦」タイプに該当する」としています。
平均得点のトレンドに統計的に優位な変化がない
- 緩やかなU字型…アイルランド
- 平坦…日本、フランス、カナダ、アメリカ、イタリア、イギリス
- こぶ型/緩やかな放物線…香港、台湾
平均得点のトレンドが上昇している
- 平坦から上昇…マカオ
- 上昇…エストニア
- 上昇し平坦…ドイツ、ポーランド
平均得点のトレンドが下降している
- 平坦から下降…韓国、オランダ
- 下降…オーストラリア、ニュージーランド、フィンランド
- 下降し平坦…スウェーデン
「PISA2018」ランキングもチェック
それでは、気になる「PISA2018ランキング」をチェックしていきましょう。2018には、OECD加盟国(37ヵ国)を含む、全79ヵ国・地域が参加しています。
※グリーンの国・地域は非OCED加盟国・地域
<読解力>
- 北京・上海・江蘇・浙江(555)
- シンガポール(549)
- マカオ(525)
- 香港(524)
- エストニア(523)
- カナダ(520)
- フィンランド(520)
- アイルランド(518)
- 韓国(514)
- ポーランド(512)
- スウェーデン(506)
- ニュージーランド(506)
- アメリカ(505)
- イギリス(504)
- 日本(504)
- オーストラリア(503)
- 台湾(503)
- デンマーク(501)
- ノルウェー(499)
- ドイツ(498)
<数学的リテラシー>
- 北京・上海・江蘇・浙江(591)
- シンガポール(569)
- マカオ(558)
- 香港(551)
- 台湾(531)
- 日本(527)
- 韓国(526)
- エストニア(523)
- オランダ(519)
- ポーランド(516)
- スイス(515)
- カナダ(512)
- デンマーク(509)
- スロベニア(509)
- ベルギー(508)
- フィンランド(507)
- スウェーデン(502)
- イギリス(502)
- ノルウェー(501)
- ドイツ(500)
<科学的リテラシー>
- 北京・上海・江蘇・浙江(590)
- シンガポール(551)
- マカオ(544)
- エストニア(530)
- 日本(529)
- フィンランド(522)
- 韓国(519)
- カナダ(518)
- 香港(517)
- 台湾(516)
- ポーランド(511)
- ニュージーランド(508)
- スロベニア(507)
- イギリス(505)
- オランダ(503)
- ドイツ(503)
- オーストラリア(503)
- アメリカ(502)
- スウェーデン(499)
- ベルギー(499)
なお、今回の調査結果で浮き彫りになった課題に対し、文部科学省は下記のような見解を発表しています。
- 来年度からの新学習指導要領の着実な実施により、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や、言語能力、情報活用能力育成のための指導を充実
- 学校におけるひとり1台のコンピュータの実現などのICT環境の整備と効果的な活用
- 幼児期から高等教育段階までの教育の無償化・負担軽減等による、格差縮小に向けた質の高い教育機会の提供などの取り組みを、学校・教育委員会等の関係者と連携・協力して推進
さらなる調査結果の詳細は、「国立教育政策研究所」公式サイト、OECD「PISA」公式サイトで確認できますよ!
【PISA2018】
- 調査元:経済協力開発機構(OECD)
- 公表日:2019年12月3日(火)
- 調査期間:OECD加盟国(37ヵ国)含む、全79ヵ国・地域
- 調査対象;国・地域: