英国(ケンブリッジ)式カリキュラム | 160の国と地域を含む約1万校が採用
「英国式カリキュラム(ケンブリッジ式カリキュラム)」とは、Cambridge Assessment International Educationが開発したイギリスを中心に採用されている教育課程です。
このカリキュラムは、イギリス国内の教育機関にとどまらず、世界中に広がる英国式インターナショナルスクールの姉妹校や、歴史的にイギリスと深く関わる国と地域の私立スクールなどで幅広く提供されています。
たとえば、かつてイギリスの植民地支配下にあったマレーシアやシンガポールでは、独立後も当時の教育システムが引き継がれ、全面的に英国式カリキュラムを実践するインターナショナルスクールも多いです
さらに、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも元々はイギリスにルーツがあることから、英国式カリキュラムに対応する学校が一定のシェアを占めています。
世界規模では、160の国と地域を含む約1万校がケンブリッジ式カリキュラムを採用。
同じく世界的に認知されている国際バカロレアの採用校は約5600校となっており、英国式カリキュラムはもっとも普及率の高いグローバルなプログラムと言えます
英国(ケンブリッジ)式カリキュラム | 3才~19才を対象とした全5段階の課程
英国式(ケンブリッジ式)カリキュラムは、就学前教育を含めると3才~19才を対象とした全5段階の課程で構成されています。
IGCSEに至るまでの5段階を用意
キーステージ4(Upper Secondary)までが、英国式の義務教育期間に定められ、GCSEおよびIGCSE(International General Certificate of Secondary Education)が中等教育修了試験という位置付けです。
Cambridge Pathway | Early Years Foundation Stage(EYFS) | Cambridge Primary | Lower Secondary | Upper Secondary | Cambridge Advanced | ||
Nursery (3才~4才) | Reception(4才~5才) | キーステージ1 (5才~7才) | キーステージ2 (7才~11才) | キーステージ3 (11才~14才) | キーステージ4 (14才~16才) | シックス・フォーム (16才~19才) | |
国際資格試験 | CambridgIGCSE (GCSEのグローバル版) | Cambridge International AS & A Level |
初等教育:Primary School(キーステージ1~2)
- キーステージ1対象学年…Year 1~2(5才~7才)
- キーステージ2対象学年…Year 3~6(7才~11才)
Primaryのカリキュラムでは、広範かつバランスのいい学習体験を目指し、以下のような10科目が提供されます。
- 英語(母語または第二言語)
- 数学
- サイエンス
- アート&デザイン
- コンピュータ
- デジタルリテラシー
- Global Perspectives(リサーチ、分析、評価、コミュニケーションスキルなどを伸ばすための学際的教科)
- Wellbeing(ウェルビーング)
- 音楽
- 体育
これらは柔軟に適用することが認められており、各学校の教育方針に沿って特定の科目を重点的に学んだり、独自のアレンジが加えられたりするケースもあります。
また、評価方法の枠組みも、コンピュータベース試験(Cambridge CEM)やクラスルーム評価など複数パターンを学校側が自由に組み合わせることが可能です。
初等教育終了時には、Cambridge Primary Checkpointという最終試験を経て、生徒や保護者には将来を見据えたフィードバックが共有されます。
中等教育課程前半:Lower Secondary(キーステージ3)
- 対象学年…Year 7~ 9(11才~14才)
中等教育課程前半のキーステージ3でも、英語(第二言語を含む)、数学、デジタルリテラシーなど基本的にPrimaryと同じ10科目が提供され、各学校のスタンスに応じて多様な組み合わせが認められています。コア科目扱いとなる英語、数学、理科については、
学校側の判断でCambridge Progression Testという理解度を測るモニタリング試験も実施。
Year 9終了時には、外部評価試験のCambridge Secondary Checkpointに取り組み、3年間の学習到達度を確認します。
英国(ケンブリッジ)式カリキュラム | Cambridge IGCSE(キーステージ4)
- 対象学年…Year 10~11(14才~16才)
英国の義務教育修了資格GCSEの国際版に当たるIGCSEは、世界でもっとも人気のあるアカデミックな国際資格と言われています。
受験時の試験結果は将来にわたって保持されることから、海外では大学入試や就職試験でもIGCSEの成績が考慮されるケースも少なくありません
30種類の言語を含む70以上の科目を用意
IGCSEのカリキュラムでは、30種類の言語を含む70以上の科目が用意されており、幅広い分野から受験科目を選べるしくみをメリットと捉える人も多いでしょう。
ただし、英語、数学、サイエンスは必修科目となり、学校独自の方針によってさらに必修科目が追加される可能性もあります。
また、サイエンス(理科)の科目オプションがやや複雑で、物理・化学・生物といった単独科目だけでなく、サイエンス3分野をまとめて学ぶ「Combined Science」(1単位換算)や「Co-ordinated Science」(2単位換算)も選択可能です。
難易度を考慮すると、Combined Scienceがもっとも基礎的な内容にとどまり、「Chemistry」や「Biology」など単独科目がより応用レベルまで深掘りされます。
IGCSEの評価について
IGCSEの資格試験は、最上級の「A*」を含めたA~Gの8段階評価と不合格扱いの「U」によって成績を算出。
ただ、試験によって難易度も異なるため、厳密にどの正解率が各グレードに該当するかは確定事項ではありません。一般的傾向としては、以下のような対応関係が想定されます。
グレード | A* | A | B | C | D | E | F | G |
得点 | 90%以上 | 80%以上 | 70~79% | 60~69% | 50~59% | 40~49% | 30~39% | 20~29% |
評価のしくみ
IGCSEでは、筆記試験や口頭試験のほかに、提出課題や実技も含めてグレードを算出し、日ごろの学習姿勢も最終評価に適正に反映されるしくみを採用。
また、多くのIGCSE科目でCoreカリキュラムとExtendedカリキュラムを選択できますが、総じて基本レベルに設定されているCoreの場合は、ハイスコアを達成したとしてもC評価が上限になってしまいます。
そのため、志望進路においてA*~Bの上位評価が必要な場合は、かならずExtendedカリキュラムを選ぶようにしましょう。
IGCSE試験の時期
IGCSE試験は、6月と11月の年2回ペースで実施されます。基本的に9月頃入学の学校は6月受験、1月頃入学の学校は11月受験を目指して学習に取り組みます。
また、最終試験で望ましい成果が得られなかった場合は、科目変更はできませんが個人的に再受験することもできます。
2度受験した結果、順番を問わず高い方のグレードを提出できるので安心です。
英国(ケンブリッジ)式カリキュラム | シックス・フォーム(AS & A Level)
- 対象学年…Year 12~13(16才~19才)
シックスフォームで取得するA-Levelは、ケンブリッジ式カリキュラムが認定する大学入学資格に該当します。
大学出願に活用できるA-Level
IGCSE資格だけで大学出願要件を満たす事例もゼロではありませんが、たいていはIGCSEの延長線上で学べるA-Level取得を目指すか、1年間のファウンデーションコース(大学進学準備コース)を経て大学に正規入学するケースが多いです。
AS & A Levelカリキュラムには、文系から理系まで幅広い約55科目が用意されており、とくに必修科目の制約もありません。
そのため、各々の生徒が得意な科目に集中できる優位性はあるものの、シックス・フォームを設ける学校が全科目に対応するとは限らない点や、大学側がAレベル科目を指定する場合が多い点などは要注意
科目選びにおける留意点
科目を選ぶ時点で、志望校が定まっている場合は、出願先が求める科目を事前確認すること、進路が未確定なら、一般的に大学側が指定しやすい科目を選んでおくことも検討しましょう。
たとえば、経済学部を志望する場合は、「数学」が指定される傾向にあり、サイエンス分野に出願する場合は、関連性の深い「物理」や「化学」が要件に含まれるなど、おおまかなビジョンに基づいてある程度は選択候補を絞り込めるはずです。
必須ではないASレベル試験(1年目)
ASレベルとは、シックス・フォーム生が1年間をかけて12年生の終わりに取得する資格ですが、大学入学資格としてAレベルを取得する方針であれば、1年目にASレベル試験を受ける必要性はなくなりました。
そのため、所属スクール独自の要請がなければ、2年を費やしてAレベル試験だけに取り組むというスタンスも認められています。
また、科目によって、AS & Aレベルの双方を選択できるケースや片方にしか対応していないケースもあり得ます。
A-Level試験の成績表記
A-Level試験の成績表記は、IGCSEとも似ており、A*(90%以上)、A(80%)、B(70%)、C(60%)、D(50%)、E(40%)という6段階評価を採用。
Eが資格取得の最低ラインとなりますが、難関大学進学を念頭に置くならA*~A評価を揃えるというのが主流です。
A-Levelの科目数は、大学側がトータル3科目を指定するケースが最も多く、個々人の判断に任されるものの、シックス・フォーム1年目では4科目を選択履修する生徒が多いです
英国(ケンブリッジ)式カリキュラム | 大学進学にはどのように役立つか
A-Levelはイギリス発祥の大学入学資格ですが、実際にどの程度大学進学のパスポートとして有効なのか気になるのではないでしょうか。
まず、イギリス本国ではあらゆる大学が入学資格として認定しており、英国の大学を優先的に目指すのであればA-Levelは最適な選択のひとつと考えられます。
アメリカの大学での受け入れ状況
いっぽう、米国ではA-Levelを認定可能なケース(約800大学)は、IBDPを受け入れ可能な大学数よりも下回っており、母数に対する普及率として限定的と言わざるを得ません。
ただし、アイビーリーグをはじめとして認知度の高い大学全般に通用するため、A-Level資格でも米国に進学しやすい実感は得られるでしょう。
日本の大学での受け入れ状況
ここでとくに検討を要するのが、進学先に日本の大学を考えているケースです。
まず、国の方針として、ASレベルのみは対象外ですが、Aレベル資格取得者には国内の大学入学資格を認める旨が明言されています(Q6)。
文部科学省「入学資格に関するQ&A」(平成31年1月31日現在)
しかし、上記のように国側がA-Levelを認めている反面、現場の大学ではA-Level資格者を受け入れる環境はそこまでは整っていない状況です。
A-Level資格者の出願を受け付けている大学
2024年1月時点で確認できる情報として、以下のような国内大学が一定の条件とともにA-Level資格者の出願を受け付けています。
- 東京大学…帰国生徒の特別選考(全学部若干名)
- 筑波大学…帰国生徒特別入試(指定学部のみ)
- 早稲田大学国際教養学部(SILS):AO入学試験
- 慶應義塾大学…帰国生対象入学試験(全学部若干名)
- 上智大学…国際教養学部入学試験
- 国際基督教大学…帰国生入学試験
IBDPを選択するルートもあり
そこで国内大学の選択肢を増やしたければ、セカンダリーでIGCSE取得後は、同じケンブリッジ式のA-Levelには進まず、国際バカロレアDPに取り組むルートも考えられるでしょう。
まとめると、A-Level資格者の国内の大学進学は、国の意向としてGoサインが出ているものの、各大学の対応は少しずつ進んでいる段階で、まだ出願可能なケースは少ない状況にあります
また、こうしたグローバルな出願資格は毎年見直される傾向にあるため、過去の情報だけで判断せず、常に最新情報を把握するようにしましょう。