ラオスの古都に佇む「ネズミお兄ちゃん」とは?
マレーシアよりこんにちは。
先日訪れた、ラオスの古都・ルアンパバーンに、「Big Brother Mouse」(ネズミお兄ちゃん)という不思議な名前の場所がありました。
グローバルエデュをフォローしているみなさんにオススメなので、ぜひご紹介したいと思います。
世界文化遺産に指定されているルアンパバーンの旧市街は、こじんまりとした静かな街。その大通りを端から端までスタスタ歩けば、大人の足でほんの15分くらいのものです。
滞在中、レストランや雑貨店で何度かに目に留まったのが、「ネズミお兄ちゃんの物語」と書かれた日本語の無料小冊子。よく見ると、英語版やフランス語版、中国語版もあります。
ルアンパバーンでは、日本語で書かれた標識や広告がほとんどないので、とても目立ちました。
フルカラーの小冊子は、32ページに及びます。もらったその場で読みきれなかったものの、裏表紙に出ていた文章が気になり、近くだったので行ってみました。
小冊子の裏表紙に出ていた文章:「ネズミお兄ちゃん」では、いろいろなことができます。
- 熱心なラオスの生徒たちに英語を教える。
- 『市場で見つけたよ』などの本を読んでラオス訪問をもっと楽しむ。
- ラオス農村部の子どもたちに初めて本に触れる機会を提供する。
- ラオスの友人へのプレゼント、世界の友人へのお土産を買う。
ルアンパバーンで初めての本屋さん
一軒家を開放したような「Big Brother Mouse」は、「書店」兼「コミュニティスペース」です。
2006年6月にラオ人所有の非営利団体として設立され、ルアンパバーンで初めて出版免許を取得した出版社でもあります。
ラオ人は近年まで、「本を読まない人々」だったそうです。本といえば、教科書くらい。読んで楽しむ本は、ほぼ存在していなかったのです。
家が貧しくお寺の小僧さんになって寺子屋で読み書きを覚えた勉強好きなカムラと、師範学校を卒業したら何かやりがいのある仕事をしたいと願っていた青年シポネ。そこに、アメリカで15年間経営していた出版社を手放し、旅先ラオスでまったく本がないことに驚いたサーシャが出会いました。
なんとかしてラオスの若者に出版の仕事を教え、楽しくてためになる本を自分たちで作れるようにできないか。そう考えたサーシャの助けを借り、ゼロからの出版業を始めたのです。
設立当時、店にはたった6冊の本が並べられただけでしたが、看板には誇らしげに「本屋」と掲げたそうです。なぜなら、それでも北部ラオスで一番の品揃えを誇る本屋だったから。
現在でも、首都ビエンチャン以外で出版免許を保有する唯一の団体なのだそうです。
旅行者ができること:本の購入からボランティア参加まで
現在、お店にはあらゆる世代が楽しめる、ここでしか手に入らないユニークな本がたくさん並んでいます。
そしてさらにユニークなのは、旅行者はここで本の購入からボランティアへの参加まで、いろいろなことができるのです。
本を買う
多くの本はラオ語と英語で併記されていて、私たちにも読むことができます。ラオスの昔話や自然、暮らしを扱ったものが多く、旅の記念やおみやげにも最適。
表紙に惹かれて一冊の絵本を買ってみたところ、ラオスの身近な風景にちなんだ足し算や引き算のお話で、小学1年生の息子にぴったりでした。
「ソネスリラットくんは、8匹のコオロギを焼いて3匹食べました。残りは何匹でしょう?」
前の日に食事をしたレストランにも、コオロギのメニューがありました。昆虫は食材として貴重だし人気があるのなのだな、とあらためて実感。
「5人の小僧さんがいました。今日、2人が袈裟を脱いでお寺を去りました。小僧さんは何人残ったでしょう?」
など、ラオスならではの例文がとっても興味深いのです。
本を寄付する
農村部の学校に届けるための本を店頭で購入し、その場で寄付できます。1冊からでもいいし、数冊セットになったものも用意されています。
私は、読書を始めたばかりの子におすすめの6冊セット(約1200円)を購入し、寄付箱に入れてきました。
Big Brother Mouseでは、農村部や山奥の学校に本を届けています。2013年からは、学校で毎日読書の時間を持てるように「読書プログラム」をスタート。各教室に70冊ほどの本を設置しているそうです。こうした活動のために、現金での寄付ももちろん歓迎されます。
英会話のボランティアをする
毎日午前9時と午後5時からの2時間、ラオスの人たちと英語で交流する場を提供しています。事前登録は不要、行けるときに直接行けばオーケーです。
最近まで英語の本も入手困難だったため、ラオスには英語が流暢に話せる学校の先生が足りないそうです。少しずつ観光地化が進むルアンパバーンでは、英語が話せるようになりたいと切望する若者や子どもたちが増えており、学校や仕事帰りに寄って、さまざまな国から来た旅行者と英語でおしゃべりすることを楽しみにしているそう。
どんな人が話す英語でも理解できることはプラスになるので、ボランティアは英語圏のネイティブでなくて構いません。ただ、なるべくゆっくり、はっきり話してほしいとのこと。
旅行者にとっても、地元の人たちと会話ができるのは魅力的ですよね。
もっとボランティアをする
まる1日、またはそれ以上、英語を使ったボランティアをしてみたい、という人にも、ぴったりのプログラムがあります。
2016年にルアンパバーンの田舎に設立された学校「Big Sister Mouse」でのお手伝いです。
ラオスの公的な教育カリキュラムをベースにしながら、より読書に力を入れたインタラクティブな学校づくりを目指していて、2018年現在は3才から9才の子どもたちが在校。生徒たちの年齢に合わせて今後も学年を増やしていくそうです。また、教師を目指す若者へのトレーニングもしています。
こちらも、事前予約なしで朝9時にBig Brother Mouseにいればよし! 9時に出発し、学校で本の読み聞かせ、ゲーム、英会話などのお手伝いをして、夕方に市街地に帰ってきます。
往復の交通費と昼食代として、12ドルの寄付が推奨されますが、必須ではないそうです。6人以上のグループ参加や、1週間以上の長期参加を希望する場合は、事前に連絡くださいとのこと。
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今回のルアンパバーン滞在は短期間で、ボランティア活動のことは後でウェブサイトを読んで知りました。もし、事前に知っていれば親子で参加してみたかったなあと感じたので、ここでご紹介しました。
ウェブサイトにはほかにも情報が満載です。ルアンパバーンを訪れる予定があれば、ぜひのぞいてみてくださいね。
また、無料配布されている小冊子の日本語訳は、オーストラリアの川崎トランスレーションスタジオさんがご厚意で提供されたそうです。素晴らしい〜。
【Big Brother Mouse】
- 住所:Thongnathao Road, Luang Prabang
- 営業時間:8時〜19時 ※ラオスの祝日を除く
東京生まれ。2011年より約4年間シンガポールに滞在、2015年1月よりクアラルンプール在住。翻訳者・ライター。共訳書に「メディカル ヨガ 〜ヨガの処方箋〜」(バベルプレス)、書籍「アンコールの神々 BAYON」(小学館)、WEBサイト「シンガポール経済新聞」、「シンガポールナビ」、マレーシア在住日本人向けフリーマガジン「Weekly MTown」などに記事を寄稿。グローバルエデュ 姉妹サイト「旅キッズ」で「てくてくシンガポール」を連載。