国際バカロレア | なにが得られるプログラムなのか
「国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)」は、国や制度を問わず、世界中で通用する大学入学資格を得られる総合的な教育プログラム。
ジュネーブに本部を置く「国際バカロレア機構」は、1968年以来、多様な文化の理解と尊重の精神を備えたうえで、よりよい世界平和に貢献する、探究心・知識・思いやりに富んだ人材育成を目指し、その評価のしくみの開発に取り組んできました。
国際バカロレア資格(IB:International Baccalaureate)
運営 | 国際バカロレア機構 |
開始年 | 1968年(ディプロマ・プログラム) |
IB認定校 | 世界/約5600校、日本/認定校160校(候補校47校) |
IBDP受験費用 | 約11万6000円(2022年11月時点) |
国際バカロレア教育が目指す10の人物像
国際バカロレアでは、下記のような人の育成を目指してプログラムを提供しています。
- 探究する人
- 知識のある人
- 考える人
- コミュニケーションができる人
- 信念をもつ人
- 心を開く人
- 思いやりのある人
- 挑戦する人
- バランスのとれた人
- 振り返りができる人
また、生徒の年齢や目的に応じて、以下の4種類のIBプログラムを設定しています。
PYP(Primary Years Programme)
3才~12才(幼稚園~小4)の児童を対象とした、言語指定なしの一貫教育プログラム。
MYP(Middle Years Programme)
11才~16才(小5~高1)を対象に、これまでの学習体験と実社会のつながりを重視する言語指定なしのプログラム。
DP(Diploma Programme)
16~19才(高2~高3)を対象に、原則として英語、フランス語またはスペイン語を用いて所定のカリキュラムを2年間履修するプログラム(対象科目のみ日本語も可)。
最終試験で一定以上の成績を収めることで、世界中の大学の入学資格となる国際バカロレア資格(IBDP)を取得できます。
CP (Career-related Programme)
対象年齢はDPと重複しますが(16才~19才)、CPは将来のキャリア形成に関わる実地体験・職業体験に主眼を置いたプログラム。
2012年に導入されたばかりのプログラムで、日本国内の教育機関においては採用されていません(2023年5月時点)
海外大学に進路が広がるIBDP
年齢ごとにPYP・MYP・DP(CP)の3段階で構成される国際バカロレアですが、なかでも2年間のディプロマプログラム(DP)を履修して成績要件を満たせば世界各地の大学に入学するチャンスを得られます。
この場合、PYPやMYPを経由せず、DPのカリキュラムのみを履修しても問題はありません。逆に、PYPおよびMYPを修了しただけでは、大学入学資格は取得できないので注意しましょう。
大学出願時に提出する資格試験としては、TOEFLやIELTSもよく知られています。
ただし、IBDPの場合は2年間のカリキュラムを経て評価が成立することから、TOEFLのような単体試験とは受験プロセスそのものが異なっています。
国際バカロレア | 世界で急増するIB認定校
国際バカロレア認定校は、世界159の国と地域、5600校以上あり、認定校で提供されるIBプログラム総数は、2018年~2022年の5年間でじつに34.2パーセントもの増加率を記録しました。
日本のIB認定校
日本国内でも、「文部科学省IB教育推進コンソーシアム」として、IB教育普及を目的とした環境整備が進み、2023年12月時点で国内のIB認定校・候補校は当初の目標値を上回る229校に到達しています。
- PYP…認定校60校(候補校38校)
- MYP…認定校37校(候補校17校)
- DP…認定校67校(候補校9校)
- CP…認定校0校(候補校1校)
IBDP対応の認定校は、北海道から沖縄まで全国的に広がっていますが、とくに東京や大阪周辺に集中する傾向があります。
大学入学資格が得られるIBDPの対象年齢は16~19才で、プログラム履修に2年間を要するため、通常は高3時にIB試験の受験が可能です。
また、19才も対象に含むことから、高3の次の年度まで受験チャンスがあります。高3時に不合格というケースに限らず、さらに高得点を目指して再受験する選択肢も考えられます。
国際バカロレア | 6つの教科と3つの必修コア科目
DPカリキュラムは、6つの教科グループと3つのコア科目から構成されています。
6つの教科グループ
- Studies in language and literature(言語と文学)
- Language acquisition(言語習得)
- Individuals and societies(個人と社会)
- Sciences(理科)
- Mathematics(数学)
- The arts(芸術)
各グループから1科目ずつ選択しますが、芸術グループのみ他のグループに含まれる科目で代用も可能です。
また、選択科目のうち3~4科目はHL(High Level)、残りはSL(Standard Level)として受講します。
もちろん自身が学びたい科目を選べますが、大学側が特定の科目やレベルを指定するケースもあるので出願要件も正確に把握する必要があります。
3つの必修コア科目(EE、TOK、CAS)
EE:Extended Essay(課題論文)
履修科目に関連した研究課題を自ら設定し、英語で4000語(日本語の場合は8000文字)の論文を執筆。
TOK:Theory of Knowledge(知の理論)
最低100時間を費やして、知識の本質や自己分析法、批判的な思考アプローチなどを学習。エッセイとプレゼンテーションが最終評価の対象です。
CAS:Creativity/Activity/Service(創造性・活動・奉仕)
学校外の社会・コミュニティーと関わり、ボランティアや交流活動に取り組む(最低150時間)
評価方法について
6グループからの選択科目が各7点、6科目トータルでは42点満点で評価。
さらに、必修コア科目のEEとTOKの成績次第で最大3点が加算され、合計45点満点でIBDP全体の成績が表されます(CASは集計対象外)。
選択科目の評価(7点満点)は、DP最終試験のスコア(外部評価)だけでなく、提出課題を主な対象とする内部評価(配分20~30%)も併せて考慮されます。
資格取得とスコアについて
国際バカロレアDP資格を取得するには、45点満点中24点以上を満たすことが条件です。
例年の平均点は30~32点、IBDPの取得率は約80パーセントを記録しています
DP最終試験の時期
DPの最終試験は、世界共通で毎年5月と11月に実施され、日本の一条校では高3の11月に受験し、翌年の1月5日に最終スコアが通知されるのが一般的です。
国際バカロレア | IBDPスコアの活用
24点以上のIB生にはIBDP資格が認められますが、入試に際しては大学や学部ごとに出願可能な得点基準が定められる場合があります。
よって、同じIBDP資格者でも、保有する得点(24~45点)によって進路の選択肢には大きな違いが生まれます。
IBDP30〜40点(国内大学のIB入試)
まず、国内大学のIB入試では、30~40点のレンジで多くの受験生が合格しています。
IBDP35点〜(海外大学のIB入試)
海外大学進学を目指す場合は、35点前後を取得できれば多様な出願先候補が見つかるでしょう。
IBDP42点〜(海外トップ大学)
さらに、アイビーリーグを筆頭とする世界のトップ大学に出願するには、最低スコアとして39点以上を求められるケースが目立ちます。
より合格率を高めるには、難関大学出願時は最低ラインではなく42点程度を取得していたほうが好ましいでしょう。
ただし、IBの成績以外を重要視して評価する大学もあり、他の出願書類などでIBスコアの不足分をカバーできる可能性も少なくありません。
国際バカロレア | 学習の進め方
2年間の学業成果や課外活動そのものが評価対象となるIBDPは、取り組むべき課題も多いため、しっかりとしたタイムマネジメントが求められます。
CASの進め方
おもに週末を活用するであろうCASも、余裕のある時期にスケジュールを組み込んで、日ごろの学業と無理なく両立できるよう工夫しましょう。
とくにCASの場合は、DP1年目となる高2開始時期からコツコツと活動を積み重ねることが大切です。
EEの進め方
また、EE(課題論文)も高2の早い段階から課題リサーチを始め、夏~秋の始め頃には論文テーマを確定させましょう。
DP1年目は、ヒマな時期と忙しい時期にバラつきがあるという声も多く、大学の出願要件に応じてSATやACT、TOEFLなど他の試験対策も余裕をもって進めておくのが理想です。
DP学習の進め方
DP科目別の勉強法は、毎日の予習復習を徹底し、認定校が提供するDP準拠のカリキュラムを確実にこなすことが基本となります。
ある程度勉強を進めて苦手科目が見えてきたら、特定科目のみ受験対策スクールが提供する講座を受講するのも選択肢のひとつです。
その際は、オンラインコースで学ぶなど、なるべく時間を有効活用できる手段を選ぶといいでしょう。
また、各教科の勉強に不安はないものの、EEを執筆するコツがつかめない場合は、エッセイ対策の専用講座を限定的に受講することも可能です。
国際バカロレア | 大学出願における注意点
世界各地の大学が採用しているIB入試ですが、出願先を決めるにあたって、どのような科目要件が設定されているか各大学の公式情報を確認する必要があります(可能であれば、IBDPを受講する認定校を決める前に確認しましょう)。
志望大学の科目要件を確認
とくに注意して確認したいポイントは、以下のとおり。
- 文系の大学(学部)や理系の大学(学部)などで選択科目が指定されるケース
- 特定の選択科目レベルが、HL(High Level)に指定されるケース
- 出願先が選択科目によって「英語受講」を指定するケース
認定校(一条校やインターナショナルスクール)によっては、受講可能な選択科目が限られるか、選択科目がHLに対応していない(SLのみ開講)ケースも見られます。
日本語DPにおける注意点
また、文科省は国際バカロレア機構と連携して、日本語(文学)、歴史、経済、化学、生物、数学(SL/HL)、物理を日本語受講できる「日本語DP」の導入を推し進めてきました。
英語を母国語としない生徒にとっては、明らかに負担軽減につながる制度変更ですが、特定の選択科目を英語で受講するよう大学側が条件を設けるケースもあるようです
以上を踏まえて、志望大学のIB科目要件と、認定校が提供するカリキュラムがマッチするか事前に確認しておくことがおすすめです。
また、志望大学が明確に決まっていない場合、受講科目や対応レベル(SL/HL)が幅広い認定校を選ぶほうがより柔軟に進路決定できる可能性があります。
国際バカロレア | IBDP試験の申し込みと受験料
DP最終試験の申し込みや評価料支払いは、IB認定校が手続きを進めてくれるケースがほとんどです。
最終試験に関わる費用は、高3時の年間授業料に上乗せして支払うか、試験の時期に別途請求されるパターンもあります。
最終テストにかかるコスト(2022年11月現在)
- 科目評価料…1科目あたりUSD119(119×6科目=714ドル)
- コア科目評価料…EE/91ドル、TOK/46ドル、CAS/10ドル
以上を合算すると861ドルとなり、日本円で約11万6000円相当の費用がかかります。
なお、従来は受験登録料も必要でしたが、より幅広い生徒に門戸を開く方針から、2019年より廃止が決まったようです。
国際的な教育プログラム