海外大学に進学したSENPAIが、留学生活をレポートします!
大浦 夏帆
1997年、日本生まれ。2016年10月に「ダラム大学」に入学、2019年6月に卒業予定。幼少期から高校時代にかけ、イギリスとアメリカに計11年滞在
ダラム大学 | 英国で3番目に歴史のある大学
はじめまして、大浦夏帆と申します。イギリスの「ダラム大学」(University of Durham)2年生で、「Politics, Philosophy and Economics」 (政治・哲学・経済)を勉強しています。
ダラム大学は、ロンドンからは電車で3時間ほど、イギリス北東部でスコットランドのすぐ下に位置するダラム市とストックトン・オン・ティーズ市(ダラム州)にキャンパスがあります。
ダラム大学は日本での認知度は低いですが、イギリスではオックスフォードとケンブリッジにつぐ、3番目に歴史のある大学です(1832年に創立)。また、2018年のイギリス大学難易度ランキングでは、4位か5位くらいに入っています。
ダラム大学を受験した理由は、日本で通っていたインターナショナルスクールの恩師が通っていた大学で、相談したときに勧められたから。第一志望ではなく、また受験した5校のなかで一番下調べをしていなかった大学でしたが、いまではこの大学を選んでよかったと思っています。
大学 | ダラム大学 University of Durham |
設立 | 1832年 |
所在地 | ダラムキャンパス/Stockton Road Durham DH1 3LE UK |
学生数 | 1万8000人ほど(そのうち21パーセントが留学生) |
留学期間 | 2016年10月〜2019年6月 |
留学コスト | 年間2万4800ポンド(約380万円)〜2万1700ポンド(約330万円) |
専攻 | Politics, Philosophy and Economics(政治・哲学・経済) |
出願した大学 | イギリスの5大学 |
この大学を選んだ理由 | インターナショナルスクールの恩師からすすめられたことがきっかけ |
ダラム大学 | なぜイギリスの大学を選んだのか
私が海外の大学を志望し、結果としてイギリスの大学を選んだのは、私の育った環境が大きく関係しています。
日本生まれですが、1才から2才半までアメリカ・コネチカット州 → 5才まで大阪 → 11才までイギリス・ロンドン郊外 → 16才まで大阪 → 18才までアメリカ・コネチカット州と、父の仕事による転勤続きの生活でした。
大阪では、小学校6年生の最後の2学期は吹田市の公立小学校に通いましたが、その後、高1の夏までは「関西学院千里国際学園」(大阪府箕面市)に通うなど、実質日本の一般的な教育を受けた期間はとても少ないです。
インターナショナルスクールでは、周りに海外大学に進学する先輩が毎年数名いて、私も「将来海外に行けたらいいな」と思っていました。
日本の大学も検討はしましたが、見学したときに正直あまりピンときませんでした。海外育ち、日本でもインターナショナルスクール生活だったので、文化的にも日本で普通に生活するのは難しいといまでも感じています。
イギリスを選んだ理由は、小学校生活をこちらで過ごしたので、自分が慣れていてもっとも心地いい環境であることが大きいです。
日本に帰ってきたとき、「英語をしゃべることができるから」と地元の小学校でいじめられました。日本の小学校も楽しかったですが、日本人なのに中身は日本人として受け止めてもらえない…そんなちょっとしたトラウマがあるのかもしれません。
いっぽう、イギリスでは「アジア人だから、日本人だから」という理由で騒がれたこともありませんでした。
ダラム大学 | IB、AP、A-Level を整理しておこう
日本でも、「国際バカロレア(IB)」が普及するのに伴い、DPが海外大学に出願できる資格であることが知られていますが、IB以外にも、「AP」や「A-Level」など海外大学進学の際に活用できる資格もあります。
私は、高校時代にIBとAPを選択し、学びました。まずは、「イギリスの大学に行く」とはっきり決めた高1の夏に、「国際バカロレア」DP※を受講することにしました。
※DPは通常、高2〜高3の2年間で受講しますが、転校などを鑑みて学校の特別な配慮で高1から受講
その後、高2の夏にIBを実施していないアメリカの公立校に転校したため、IBの学習は中断することになりましたが、アメリカの高校では、志望大学の入学要件となっていた「AP(Advanced Placement)」の試験で「Calculus BC」(APで一番レベルの高い数学)など3つのテストで「5」(満点)をとることに集中しました。
結果、5つの試験中4つで「5」を取得しました。
Advanced Placementについて
Advanced Placementとは、アメリカの高校で提供されている授業で、1年間APの授業をとったのち、5月に試験があります(授業を受けなくても試験を受けることは可能)。
イギリスの「A-Level」(General Certificate of Education Advanced Level、一般教育修了上級レベル)と「国際バカロレア」DP(大学入学資格)は2年間のコースとなり、難易度は同じくらい。
IBDPは最後のテストだけでなく、2年間勉強するなかで課題などが出て、それも成績に入ります。
APはテストだけが成績として評価されるので、授業の深さなどはAPは比較的低いといえます。
大学からの評価が高い、IBとAP
大学によって入学に必要な資格要件などは異なりますが、主要な大学のほとんどがIBのみで出願でき、APだけでも出願できます。
大学によっては、「SAT」と「ACT」(いずれも米国の大学進学適性試験)両方の成績が必要など、さまざまです。
もし、まだ高校に入りたてであれば、行きたい大学にはどのような資格が必要なのか調べ、IBなどを取っているのであれば、自分の取った・あるいは取る科目で受けられる大学に絞ってから決めたほうがいいです。
たとえば、世界トップレベルの教育機関「ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス」ではAPが5つ必要ですが、全英大学トップ10の「サリー大学」はもっとフレキシブルで、SATやACTも検討してくれます。
ダラム大学 | イギリスの大学の出願の流れ
進学先については、家族でも「どのようにしてイギリスの大学に進むか、費用はいくらかかるのか」など話し合い、高校のカウンセラーとも進路相談を重ねてリサーチしました。
イギリスの学士課程の大学受験(出願)の流れは、下記のような流れとなります。
①UCAS経由で出願する(〜1月15日)
出願期限(ほとんどの大学が1月15日)までに、「UCAS」(UNIVERSITIES & COLLEGES ADMISSIONS SERVICE、ユーカス)という、イギリスの大学の出願状況を管理する機関に書類を提出します(大学へは直接出願しない)。
②大学から返事が来る(〜5月初旬)
例年、大学への出願は9月か10月に開始されるため、早く出せば早く返事が来るところもあります。
私は10月14日にすべての大学に提出し、5校中4校が年内に返事をくれました(一番早かった大学は提出した翌日に返事が来ました)。
大学が合否の返事をする期限は5月初旬なので、人によってはかなり待つこともあるそうです。私の場合、一番遅い大学は3月頭でした。
③第一志望と第二志望を選ぶ(〜5月初旬)
APやIBなど、必要なテスト結果がまだ届いていなければ、返事は条件付き合格(Conditional offer)となります。
返事がすべて来たら、あるいはすべて来なくても満足できる結果であれば、第一志望(Firm Acceptance)と第二志望(Insurance Acceptance)を選びます。
これは、第一志望の大学で条件付き合格(Conditional offer)をもらい、その後の試験結果が合格水準を満たさなかった場合、第二志望の大学が保険となるしくみです。
④試験結果などを提出後、大学が確定
このようなプロセスを経て、私がダラム大学を第一候補にすると決めたのは5月で、ダラム大学に行くことが決まったのは7月半ばでした。なお、イギリスの大学は9月にスタートします。
ダラム大学 | 出願に必須なのはこの4つ!
イギリスの大学を受験するために絶対必要なのは、以下の4つです。
①Personal Statement(志願動機書)
これが一番肝心です。自己アピールのエッセイですが、自分の受験するコースになぜ興味があるのかを説明します。
70パーセントを学術的、30パーセントを学術以外の興味をアピールするような割合で作成します。
ここでは、1校だけを受験するのでない限り、エッセイに大学名を入れてはいけません。
このエッセイは、UCUSを通じて出願する大学すべてに送られるので、「〇〇大学に行きたい理由」と書いてしまえば、他大学からオファーが来る確率は低くなります。
②Letter of Recommendation(推薦状)
学校の先生などに「私」のことをアピールしてもらいます。
私の場合、アメリカの高校は最後の2年だけだったので、日本の高校の先生とアメリカの先生、ひとりずつに書いてもらってから、アメリカの高校の進路相談のカウンセラーにまとめてもらいました。
入学要件となるテストの結果が出ていないときは、予想結果をこの手紙に入れてもらいます。
この手紙も10月15日、あるいは1月15日に提出するので、間に合うようにもらえるよう注意してください(こちらも、Personal Statement同様、大学名を出すのはNG)。
③IELTS
受験時には必要ありませんが、ビザを取得するために必要となります。英語で勉強ができるという証明になります。
数年前までは、TOEICとTOEFLも受け付けていたようですが、現在はIELTSしか受けてくれません。
なるべく早めに受検しておきたいところですが、スコアは2年間しか有効ではないので、あまり前に受検しても使えません。求められるスコアは、平均6くらいだと思います。
④日本の高校から出願する場合は高校の成績
ただし、日本の高校からはそのまま大学1年目に入学することができないので注意!
1年目の前に「ファウンデーション・イヤー(Foundation Year)」という準備コースを1年間受講する必要があります。
イギリスの大学は通常3年制ですが、ファウンデーション・イヤーを取ることで4年制となります。
ファウンデーション・イヤーを避けたい場合は、国際バカロレアかA-Levelのスコア、APなどで出願するオプションはありますが、日本の高校で取れる資格は少ないと思います。
これらの資格は、入学までに受験し結果が出ていればオッケーです。予想される結果はLetter of Recommendationに入れてもらいます。
受験にかかる費用ですが、1校だけであれば13ポンド(約2000円)、2校以上は24ポンド(約3700円)と、アメリカにくらべるとかなり安いです。
ダラム大学 | イギリス留学のコストは?
イギリスの大学への留学コストは、毎年学費は少し変わりますが、私の場合(2016年度入学)、学費が1万6500ポンド(約250万円)で、1年目の寮費が5500ポンド(約84万円)+生活費が1週間100ポンド計算(1学年28週間)で2800ポンド(約43万円)。
よって、1年目の合計は2万4800ポンド(約380万円)でした。
2年目は、寮ではなく友達と家をシェアしているので、光熱費込みで週125ポンド、1年で6500ポンド(約100万円)です。家は丸ごと1年契約となりますが、寮は1学年で28週間だけの契約となります。
3年目は、光熱費抜きで週100ポンド、1年で5200ポンド(約80万円)とだいぶ安くなりそうです。家は自分で探すので、いい家が安く見つかるかは努力と運次第です。
ダラム大学 | ココがオススメ!
イギリスの大学には一般教養がない
イギリスの大学は一般教養がなく、自分の学部内の授業だけなので、やりたいことが決まっている人にオススメです。
リベラルアーツなどもありますが、構成的に1科目に集中したほうが得るものは大きいと思います。
高校卒業後から大学に入学するまでの間に、「ギャップイヤー」という、旅や仕事をする選択肢もあるので、ギャップイヤーを有効活用するのもアリです。
勉強は、1年目は成績に入らないので、とりあえずテストに合格すればオッケーです。
だからといって勉強をしないわけではないですが、プレッシャーがかからないので、マイペースで大学生活に慣れることができます。
高校よりもさらに自分から進んでやらないといけないので、自分でスケジュールを組んで課題のエッセイを読んだり、経済の問題を解いたりします。
充実している課外活動
大学での課外活動は、バレーボール、「日英協会サークル」と「模擬国連サークル」に参加しています。
1年目はサッカー部でしたが、今年は大学の3部チームに所属するバレーボール部で頑張っています。
大学レベルでやりたくない場合は、カレッジ(ダラム大学はオックスフォード、ケンブリッジと同じくカレッジ制で、学生全員がそれぞれ16個のカレッジに属しています)のチームもあります。
バレーボールは練習が週2回で、試合が水曜日にあります。日英協会サークルと模擬国連サークルは幹事なので、イベントを用意したりしています。
遊びのオプションもたくさん!
友達と遊ぶときは、街中のカフェに行ったり、近くの大きな街に行ったり。
夜はナイトクラブに行ったりしますが、ダラムは小さな街なのでクラブのオプションは少ないですが、それでもなかなか楽しいです。
電車に12分乗れば、イギリスで一番のナイトライフで有名な街「ニューカッスル」にいけます!
大学主催のイベントも盛りだくさん
ダラムは、3学期目のイースター学期が一番楽しいです。
最初の1ヵ月はテスト期間ですが、そのあとは勉強はほとんどなく、カレッジや大学のイベントが盛りだくさんです。
どのカレッジも、1日外でのんびりバーベキューをしたりバンドが演奏したりする「カレッジデー」と、フォーマルディナーを楽しむ「サマーボール」を設けています。
去年のカレッジデーはビーチがテーマで、サマーボールはモノポリーでした!
ダラム大学 | 将来もイギリスで暮らしたい
できればこのままイギリスで就職したいので、この夏インターンできるように頑張っています。
この夏、インターンできなくても就職するチャンスはありますが、ビザも厳しくなっているため日本に帰る可能性もゼロではありません。仕事的には、現在はコンサルティング系に興味を持っています。
好きな国で好きなことを勉強できていることは、すごく幸せだと感じています。いろいろな人に出会ったし、貴重な経験もしています。
ただ、家族が遠いので、学期中にちょっと帰ることもできないので、しんどいときにちょっと親に会いに帰ることができるイギリス人の友達がうらやましいです。
また、私は7人で住んでいますが、キッチンが汚くなったり、ゴミをちゃんと出さなかったり、すべて自分たちでやらなければいけないのが大変ではあります。
自分がいくら頑張っても他の人が片付けなければ意味がないので、コミュニケーションが大切だと実感しています!