QS世界大学ランキング | 大学や研究分野別のランキングを年に1度公表
「QS世界大学ランキング」は、世界的な高等教育評価機関、イギリスの「Quacquarelli Symonds(クアクアレリ・シモンズ社)」が、年に1度のペースで発表している大学や研究分野別のランキングです。
2004年からランキングを作成
2004年以降、QS社は高等教育情報誌「Times Higher Education(THE)」と共同でランキング作成に取り組みましたが、2009年にTHEが独自の評価基準によるランキング開始を決めたため、2010年からはQS社の単独運営としてQS世界大学ランキングを公表してきました。
世界3大ランキングのひとつ
現在では、「THE世界大学ランキング」「世界大学学術ランキング」と並び、もっとも多く参照されている大学ランキングのひとつとなっています。
また、ランキングの種類も多様化し、科目別やエリア別のほか特定のテーマに焦点を当てたランキングも発表しています。
QS世界大学ランキング | 信頼性について
QSランキングでは、クアクアレリ・シモンズ社のIntelligence Unitが調査およびランキング作成を担い、同部門の責任者にはBen Sowter氏(QS社Senior Vice President)が就いています。
客観性の高い調査結果を採用
論文被引用数など研究成果の測定には、オランダのエルゼビアが運営するScopus(スコーパス)というデータベースを活用。
大学評価の中心的ウェイトを占めるAcademic Reputation(学術的評判)においては、教職員13万人以上からの回答を得てランキング算出に採用しています。
比較対象となるTHE大学ランキングよりも、QSはとくにアンケート回答者数の分母がかなり大きいため、より客観性の高い調査結果を得られると解釈できます
信頼性への疑念について
いっぽうで、その信頼性に疑念を抱く声も一部からあがっているのは事実です。
とくに、QSはReputation(評判)を重視してランキングに反映することから、回答者の主観的要素に依存し過ぎているという意見や、教員の評判は集計するのに学生の評判がいっさい考慮されないのはふさわしくないという見方もあります。
QS世界大学ランキング | 影響力について
こうした大学ランキングの影響力は、多方面の個人や団体にまで及ぶと想定できます。
ランキング活用におけるメリット
まず、海外大学進学を志す学生が、単なる知名度や難易度にとらわれず、教員や雇用者から高い評価を得ている大学を比較検討することが可能です。
また、QSランキングは科目別バージョンも公開しているため、学生自身の興味関心に適した大学を効率よくリサーチできるでしょう。
ランキング活用の注意点
逆に、大学側が留学生を受け入れる際に、自国以外の大学の情報が不十分であった場合、ランキング結果を参照して選考材料とするケースも考えられます。
そして、国や企業が研究資金の支出先を決める局面でも、一定の信頼を得ている大学ランキングがその判断に影響を及ぼす可能性はあります。
QS世界大学ランキング | ランキングの種類
全世界14万以上の大学を集計対象とする「QS世界大学ランキング(QS World University Rankings)」を筆頭に、地域別や研究分野別の大学ランキングも毎年発表されています。
QS University Rankings by Region(地域別)
QS University Rankings by Region(地域別)では、アジア、ラテンアメリカ、アラブ地域、EECA(東欧及び中央アジア諸国)といったエリア別に大学ランキングを更新。
アジア圏はさらに細分化され、東アジア(日本を含む)、南アジア、中央アジア、東南アジアの4区分におけるランキングも公開されています。
QS World University Rankings by Subject
科目別のQS World University Rankings by Subjectは、
- Arts & Humanities(芸術・人文学)
- Engineering and Technology(工学・技術)
- Life Sciences & Medicine(生命科学・医学)
- Natural Sciences(自然科学)
- Social Sciences & Management(社会科学・経営)
の5つの領域を大枠として、トータル54科目の大学ランキングを集計・発表。
発表回数を重ねるごとに科目も追加され、2022年の発表を機に、新たに「データサイエンス」、「芸術史」、「マーケティング」が科目別ランキングに加わりました。
QS Graduate Employability Rankings
QS Graduate Employability Rankingsは、「雇用されやすい学生を輩出する大学」という観点からまとめられたランキング。
通常の大学ランキングでも、雇用者からの評判など一部就職に関わる指標も組み込まれていますが、同ランキングの場合は就職率や雇用側とのパートナーシップなど一貫して雇用可能性を評価した指標のみを採用しています。
その他のランキング
他にも、MBAやMaster of Business(経営学修士)を取得可能な教育機関の世界的ランキングや、社会と環境に対するサステナビリティを評価した新たな大学ランキング(QS Sustainability Rankings)、留学生に最適な街のランキング(QS Best Student Cities)など、幅広いニーズに役立つラインナップが揃っています。
QS世界大学ランキング | 評価指標とスコア
QS世界大学ランキングが集計に用いる評価指標と、総スコアにおける割合は以下のとおりです。
評価指標
評価指標 | 割合 |
Academic Reputation(学術的評判) | 40% |
Employer Reputation(雇用者からの評判) | 10% |
Citations per Faculty(教員1人当たりの被引用数) | 20% |
Faculty Student Ratio(学生1人当たりの教員比率) | 20% |
International Students Ratio(留学生比率) | 5% |
International Faculty Ratio(外国人教員比率) | 5% |
QSの評価指標とその割合の特徴的な点は、スコア比重の50パーセントを教員や雇用者によるReputation(評判)が占めていることです。
また、論文被引用数は教員ひとりあたりで算出するため、各大学の規模や教員数に左右されず、より公平に研究実績を比較できるよう配慮されています。
加えて、THEなど他のランキングと比べると、Faculty Student Ratio(学生・教員比率)がランキング結果に反映されやすくなっています(20パーセント)。
この特徴は、少人数制の教育環境にある大学に有利に働きやすい側面はあるでしょう。
学校関係者の評判が中軸
このようにQS大学ランキングは、とくに学校関係者によるポジティブな評判がハイスコアに結びつきやすいしくみを採用しています。
そして、このReputationを中軸に据えるQSの評価方法に対しては、懐疑的な意見が寄せられることもあります。
なぜなら、回答者は複数の大学を推薦できるものの、個人的印象や第三者から流れてきた噂に左右される可能性も含まれるからです。
実際、教員・研究者は所属したキャリアがなくても任意の大学を評価できるので、その調査内容で信頼性が保たれるのか賛否両論が飛び交っています。
大学ランキングを参照する際は、総合順位のみに着目するのではなく、指標別のスコアにも目を通して、各大学の個性や強みまでフォーカスするのがおすすめです
QS世界大学ランキング | ランキング発表のスケジュール
QSの主要ランキングは年1回ペースで更新されますが、その種類によって発表時期が異なるので整理しておきましょう。
なお、QS World University Rankings 2024については、例年より発表が遅く、2023年6月27日(英国夏時間21時)にスケジュールが定まっています。
- QS World University Rankings(QS世界大学ランキング)…6月上旬(2023年は6月27日)
- QS World University Rankings by Subject(科目別ランキング)…3月下旬~4月上旬
- QS World University Rankings: Asia(アジア圏の大学ランキング)…11月上旬
- QS Business Master’s Rankings(経営学修士のランキング)…9月下旬~10月上旬
- QS World University Rankings: Sustainability(サステナビリティを評価)…10月下旬~12月上旬
- QS Best Student Cities(留学生におすすめの都市ランキング)…6月下旬~7月上旬