「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
世界の教育と進学をめぐる動きが加速しています。TOEFLの大幅刷新で試験スコアの国際基準がより明確になる一方、サウジでは国家戦略に支えられ私立教育の需要が急拡大。
英国は留学生授業料への追加課税を検討し、大学財政や学生の選択に影響を及ぼしそうです。
米国ではブラウン大学が政権と合意し、大学の自律性をめぐる議論が続く中、香港では欧米の不確実性を追い風に国際化が急進展。
進学を考えるうえで「制度と環境の変化」をどう読み取るかが問われています。

本記事はポッドキャストでも配信しています
2026年1月21日よりTOEFL iBTが大幅アップデート、問題形式のほかスコア表示変更も
2026年1月からの新形式導入が発表されたTOEFL iBTですが、そのアップデート版の詳細がETS Japan合同会社(TOEFL運営会社の日本部門)より明らかにされています。


アップデートの目玉として、ReadingとListeningセクションでは受験者のパフォーマンスに応じてリアルタイムに問題難易度が変わるAdaptive方式を導入。
個別に難易度が最適化されることで、現状の英語スキルがより正確にスコア化される効果が期待できます。
さらに、直感的に把握しやすい1~6のバンド形式(0.5刻み)を新たなスコア表示方法に採用(従来の0~120スコアも試験結果レポートには併記)。
このバンドスコアは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の6レベル(A1~C2)に直接対応しており、従来以上に簡易的かつ一貫性のあるスコア解釈が実現しそうです。





バンドスコア1~9のIELTSに類似した表示方法になることから、見慣れるまで少し違和感が生じる可能性も。新バージョンの公式模擬テストは、以下のリンク先で公開中です


出典リンク
- ETS: TOEFL®テスト日本事務局 | 新時代のグローバルな学習者に対応するためTOEFL iBT®が進化します
- ETS: TOEFL®テスト日本事務局 | 2026年1月21日から始まるTOEFL iBT®アップデート版の詳細が公開されました
サウジアラビア、国家の長期的成長戦略に支えられ私立K-12教育の需要が急伸
ロンドンの国際教育フォーラムにて、サウジアラビアの教育投資担当副大臣Abdulrahman AlHajri氏は、継続的な経済成長の恩恵もあり、K-12教育セクター(幼稚園~高校までの教育部門)への需要が拡大し続けている状況に言及しました。
サウジアラビアは、経済の多様化や国際競争力の強化を盛り込んだ段階的な成長戦略、「VISION2030」を2016年に発表。それ以来、GDPと公共支出の両面で堅調な成長軌道に乗り、開放性を意識したビジョンは国際教育へのニーズを呼び起こし、とくにインターナショナルスクール需要の伸びが目覚ましいようです。
実際、国際教育の新興マーケットとして期待される中東圏のなかでも、サウジアラビアは特に注目度が高く、New Haven大学(米)やWollongong大学(豪)は2025~2026年を目途に分校を設立する計画を発表しています。



教育産業市場の新たな動きには、国家レベルの成長戦略が影響するケースも少なくないですね
出典リンク
英国政府、留学生授業料に対する追加課税に前向き、一流大学への負担増大の見通し
英国政府は2025年5月に発表した移民白書に基づき、留学生授業料に6%の賦課金を導入する方針を固めており、大学全体の負担は年間6億ポンド以上にのぼる可能性が高等教育政策研究所(Hepi)の調査により導かれました。
同調査によると、この賦課金が採用された場合、UCL(年間4300万ポンド拠出)、マンチェスター大学(年間2700万ポンド拠出)など、留学生数の多い一流大学は多大な経済的損失に直面する見通し。
もっとも大学側は直接的な減収を避けるため、賦課金相当を留学生に転嫁する選択肢も残されていますが、後者は留学生数の減少を招き、国際競争力の低下や大学財政の圧迫につながるシナリオも危惧されています。
現段階で政府は「高等教育および技能システム」への投資目的と説明していますが、Hepiディレクターは「資金用途が曖昧なまま、好況なセクターに一方的に課税しようとする姿勢」に疑問を呈しています。



賦課金用途については秋の予算で詳細が明らかになる見込みです。
出典リンク
- The Guardian | International student levy could cost English universities £600m a year
- THE PIE | UK unis could take £620m hit from international student levy
- HEPI(Higher Education Policy Institute) | The true cost of the Government’s proposed levy on international students
ブラウン大学とトランプ政権間の合意、金銭的な罰則を含まず連邦資金5000万ドルを回復
ブラウン大学(米)は2025年7月30日付けで、約5000万ドルの連邦資金の回復とともにトランプ政権による複数の連邦捜査を終了する合意に達したことを発表しました。
同大学の合意声明の約1週間前、同じアイビーリーグのコロンビア大学は2億ドル以上の和解金をもって現政権と合意に至りましたが、ブラウン大学学長Christina Paxson氏は今回の取引に「連邦政府への支払いや罰則金は一切含まない」ことを明かし、政府とは独立した学術環境を維持する自主的な合意となった点を強調しています。
▶︎コロンビア大学、トランプ政権へ和解金2億ドル以上の支払いで連邦資金を回復
ただし、合意条件には、入学試験やキャンパス内における人種差別禁止事項の遵守、連邦職員の入学者データへのアクセス権、大統領令に示された「男性」と「女性」定義の採用などを含み、こうした取り決めが和解金なしの合意に至った背景にあるとも推察されます。



とくに、「政府職員への入学者データの提供」については大学側の大幅な譲歩という見方が目立つようです。
出典リンク
- The Guardian | Brown University reaches deal with Trump administration to restore $50m in funds
- CNN | Trump administration reaches $50 million deal with Brown University to restore funding
米国留学不確実性の高まりを背景に、香港の大学の国際化が急速に進展中
香港の主要大学の状況報告によると、ここ数年、米国を中心に西側諸国からの出願が急増し、香港高等教育の国際化戦略が順調に実を結んでいる状況が明らかになりました。
たとえば、香港科技大学は海外からの出願者数が今年度で過去最高水準に達し、香港恒生大学では過去2~3年でローカル学生以外の出願件数が50~60%増を記録したそうです。香港の大学は、近年では留学生の入学上限を40%に引き上げたり、研究者のビザ発行や研究資金制度を簡素化したりするなど、政府と連携した国際化を一貫して推し進めてきました。
そうしたなか、トランプ政権の留学生に対する厳しい政策転換など、留学先ビッグ4(米・英・豪・加)においてビザ審査が厳格化した背景もあり、より確実性を担保する学術環境を求める学生や研究者にとって、国際化を優先する香港の大学は魅力的な選択肢に映るようです。



現行の欧米留学への懸念材料が、香港の大学にとっては一種の追い風を呼び込んでいます
出典リンク
- THE | Hong Kong university applications surge amid US uncertainty
- THE | Hong Kong doubles limit on non-local undergraduates
次回予告:
「人の悩みをAIに打ち明ける。」一見、現実味の薄い表現に思えるかもしれませんが、海外では生徒の相談先としてAIチャットが成果を示しつつあるようです。
進学の「選び方」そのものが
静かに塗り替わりつつあります