「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
今週の海外進学Picksでも、世界の教育現場や留学制度に関する最新動向を5本ご紹介します。
英国NCUKの調査からは、留学生が教育の質とキャリア形成を最重視する最新の進学トレンドが明らかになりました。一方、世界の語学留学市場は伸び悩みつつも、アイルランドが好調という対照的な結果に。
ニュージーランド大学の成績評価では「A評価偏重」の実態が指摘され、学位の信頼性にも課題が浮上しています。また、米国TOEFL採点者によるETSへの透明性要求や、ビザ面接が原則「居住国・国籍国のみ」となる制度改正も登場。
進学を目指す生徒・保護者にとって、教育の質や制度の変化にどう向き合うかを考えるヒントが詰まったラインナップです。

本記事はポッドキャストでも配信しています
教育の質にこだわり、フレキシブルな学習を許容する最新の留学生像が判明
NCUK(英国大学連盟)が約1000人の学生を対象に実施した世界的調査によると、多くの学生が教育の質と将来キャリアの充実を重視して進学先を選ぶ最新の傾向が明らかになりました。
とくに「教育の質」では前年度の58%を明確に上回る69.9%の回答があり、こうした志向はナイジェリア、パキスタン、ミャンマー、ペルーの学生の間でより顕著に表れたようです。ただ、中国の学生が「新しい知識を得る」ことを主要な動機と答えたように、国ごとにユニークな回答パターンが浮上するケースも。
また、学習様式については、全面的なオンキャンパス学習が66%と高い支持を集める一方、完全オンライン学習や、母国の姉妹教育機関も含めたオンキャンパス学習などの回答が増加し、よりフレキシブルな学びに前向きな学生像も示されました。



進学保証付き大学進学準備プログラムも統括するNCUKは、本調査の傾向を汲み取り学生が立地を問わずグローバル教育にアクセス可能な手段を充実させていくようです
出典リンク
- THE PIE | Quality, quality, quality: more international students citing quality and reputation as key factors in decision making
- NCUK(Northern Consortium UK) | Transforming Student Futures | 2nd Insights Report
英語語学スクール学生数、主要国は総じて伸び悩むもアイルランドは例外的好況
BRONARD Education の最新レポートによると、2024年の英語語学学校の学生数は主要国のほとんどが伸び悩み、2019年ピーク時(コロナ禍前)の73%程度の回復にとどまったことが明らかになりました。
レポートでは、ELT (English Language Teaching)分野の停帯について、ここ数年の移民政策厳格化や深刻なインフレが複合的圧力を生み出したと分析。ただ、こうした難局にも関わらず、アイルランドとマルタは学生数および学生滞在週数ともにコロナ禍前水準を超え、アイルランドの学生数は、2024年に限れば語学留学先として人気の米国やカナダをも上回っています。
BORNARDの国際教育ディレクターは「アイルランドやマルタが実施したビザ申請や就労機会の優週は、留学条件の悪化に悩む多くの学生の関心を引き寄せた」と評価しています。



その他、フィリビンやドバイなどELT 新興国は代替留学先として需要拡大につながったようです
出典リンク
- THE PIE | Global ELT recovery stalls across major study destinations
- BONARD Education | Global ELT Annual Report 2025
NZ大学トップ成績評価への偏りが顕著、成績評価が緩くなるインセンティブも背景に
ニュージーランド大手シンクタンクのレポートによると、ニュージーランド全8大学の統計として、成績A評価(A+、A、A-)の割合が22%(2006年)から35%(2024年)に増加し、このA評価偏重の傾向は特にコロナ禍に顕在化したことが明らかになりました。
オークランド大学の心理学教授は、「厳しい学習環境に置かれた学生に対してより寛大さが優先され、そうした意識が採点面にも反映されていた」とパンデミック期を回顧。大学入学者数に公的資金が連動する仕組みも絡み、同レポートは「学生数維持のため、大学が成績評価に寛容になりがちなインセンティブ」の存在も指摘しました。
また、今後の解決策として、受講コース難易度や受講生レベルも考慮した成績評価方法を再設計すること、成績評価の一部に国家試験の受験を取り入れることなどを提案しています。



実際的な問題点として、雇用主が本当に優秀な学生を見極めづらくなること、大学学位の国際的な信頼性が低下することなどが懸念されます
出典リンク
- The Times Higher Education | National exams could combat spiralling NZ grade inflation – report
- The New Zealand Initiative | Amazing Grades: Grade Inflation at New Zealand Universities
シフトが急減した米国のTOEFL採点者ら、運営団体の不透明性や採点の質に対して問題提起
米国在住のTOEFL採点者による2025年8月4日付け嘆願書は、「スピーキングテスト採点者は、毎月の勤務可能時間を提出するよう要請されているものの、ETS(TOEFL運営団体)のシフト割り当てからほぼ締め出された状態にある」と主張しています。
この件について、ETSは2024年12月時点で「採点拠点を米国外にも拡張すること、それに伴い、採点者によって勤務シフトの増減があること」を既存の採点者宛に通知。一方、同嘆願書には「2024年末より、米国在住者向けのシフト削減が始まり、現在ではほぼ完全にインド拠点に移行している」と記され、ETSの透明性の欠如について採点者側の不満の大きさも明かされました。
さらに、採点精度への疑念や試験の信頼性低下を指摘する声も上がっていますが、ETS広報は「英語を母国語とするか否かを問わず、いずれも厳格な研修を経て、高い専門知識を備えた人材を採用している」と説明しています。



シフトの直前キャンセルが多いようであれば、少なくとも管理プロセスを見直す余地はあるように思えます
出典リンク
- THE PIE | US-based TOEFL scorers “shut out” of ETS shifts, petition claims
- Change.org | Demand Fairness and Transparency in TOEFL Speaking Scheduling at ETS
米国のビザ面接、申請者の居住国か国籍国のみにルール変更、遅延に拍車がかかる地域も
米国務省は、2025年9月6日以降、留学生を含む非移民系ビザ申請者は、国籍のある母国か居住国の米国大使館または領事館で面接を予約しなければならないルールを告知しました。
国務省の発表によると、基本的に既存予約は有効なままですが、今後は国籍国や居住国以外で面接予約するとビザ取得が一層困難になる可能性があるそうです。これまで第3国の大使館等を経由したビザ取得は、より待機時間を短縮する選択肢として一部のビザ申請者の間で考慮されてきました。
同省の広報担当者は、「国家安全保障や公共の安全に主眼を置いた大統領令を履行する措置の1つ」と言及。今回、第3国でのビザ取得を実質的に禁じることで、現地の事情に詳しい面接官がより適切かつ慎重にビザ審査に専念する体制を整えたと考えられます。



第3国経由は島国の日本では馴染みが薄いですが、面接予約が10ヵ月待ちのような地域の申請者にはより深刻な影響が及ぶことになります
出典リンク
- THE PIE | US visa applicants required to interview in home country
- アメリカ国務省(U.S. Department of State) | Adjudicating Nonimmigrant Visa Applicants in Their Country of Residence – September 6, 2025
次回予告:
大学が新しい学部・学科を設置しようとした場合、国からの許可がほんの数日で下りることはあり得ません。しかし、中国ではそうした申請期間を可能な限り短縮して、社会のニーズに迅速に応えようとする制度が施行されそうです。
進学の「選び方」そのものが
静かに塗り替わりつつあります