教育の民主化革命「MOOC」とは?
「ムーク MOOC」(Massive Open Online Courses)は、インターネット上で講義を無料配信している大規模な「公開オンライン教育システム」の総称。
名前やメールアドレスを入力するだけで、誰でも無料で最高レベルの大学の講義を受講できる(一部有料の講義も)。
2011年ごろから米国の有名大学が設立したシステムを中心に急速に広まり、現在数十のMOOCが存在し、すでにのべ1000万人以上が参加。
オンライン教育の進化の象徴として、世界中で注目されている非常に重要なムーブメントである。
世界各国の一流大学がこぞって人気教授の授業を無料でオンライン化しており、日本勢も参入を開始。
東京大学も、2013年9月から主要なMOOCのひとつ「コ―セラ Coursera」で講義をスタートさせる。
ほとんどが英語の授業だが、英語さえできれば高額な費用をかけて大学に行かなくても学べるため、貧しい国の若者たちや、経済的な理由で進学をあきらめざるをえないアメリカなどの若者たちが積極的にMOOCで学んでいる。
このため、MOOCは「教育の民主化革命」とまでいわれる。
大学の講義を撮影しただけのビデオ映像ではなく、たいていは10分単位に編集され、ミニテストで理解度を確認しながらつぎに進む形式。オンライン配信のテキストもある。
受講生は、選んだ講義によって週に5~10時間ほど、3ヵ月程度の期間で受講。宿題をこなし、試験を受けて、基準に合格すれば修了証がもらえる。
しかし、MOOCの普及は、実際の大学への影響や「有名大学による学生誘致のマーケティング活動では?」といった批判など、今後さまざまな角度からその役割や価値が検証されていくだろう。
以下は、とくに人気を集めている主要な「MOOC」である。
東大も参加する「コーセラ Coursera」
スタンフォード大学、プリンストン大学、トロント大学、ロンドン大学など各国から約70校が参加。受講生は440万人を超えた。
日本の大学では東京大学が参加しており、2013年9月3日から素粒子物理学の村山斉教授による「ビッグバンからダークエネルギーまで」、10月15日から政治学の藤原帰一教授による「戦争と平和の条件」をテーマにした講義の配信がスタート。
スタンフォード教授が立ちあげた「ユダシティ Udacity」
スタンフォード大学のセバスチャン・スラン教授が立ちあげた、コンピュータ・サイエンス専門の無料オンライン大学。
スラン教授は、人工知能の研究で世界的な権威。自身の授業をネットで無料配信したところ、たちまち世界190カ国16万人の受講生が殺到したことがきっかけとなった。
しかも、その多くが貧しい国で高等教育をまともに受けられない若者たちだったため、「もはやスタンフォードの200人だけを教える教室には戻れない。世界の若者たちが私を必要としている」と、Udacityの立ち上げを決意した。
プラットフォームとなる「エデックス Edx」
ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が合同で設立。
「白熱教室」で有名なマイケル・サンデル教授の政治哲学講義も視聴できる。エンジニアリングの科目も充実。
2014年春から、京都大学も配信予定。
ほかにも、以下のようなMOOCが運営されている。
イギリスの放送大学が設立した「フューチャーラ―ン Futurelern」。
ビル・ゲイツ氏が支援する教育NPOが2006年に創立した「カーン・アカデミー Khan Academy」。
誰でも講師になって講義をアップロードすることができる、「ユーデミー Udemy」。
日本語の講座を毎月20件ほど配信している、「スク― schoo」。