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【学ぶKL最終回】IBで学んだことをまとめてみた…マレーシアのインターから日本の公立小へ

学ぶKLシンガポールとマレーシアで約8年を過ごした私と家族は、この春(2019年)日本に帰国し、息子は公立小学校の3年生に編入しました。不定期に綴らせていただいたこのコラムも最終回を迎えます。今回はマレーシアのインターナショナルスクールで学んだ「IBが目指す学習者像」について振り返ります。

KLのインターナショナルスクールの学校行事「ユニバーサル・チルドレンズ・デー」

IBスクールから日本の公立小へ

マレーシアでの小学校選びはいろいろ迷いましたが、結果的には、本人が気に入った学校「EtonHouse Malaysia International School」に決めてよかったと思います。

シンガポールの日本人幼稚園、マレーシアのモンテッソーリ幼稚園を経て、6才から8才の2年8ヵ月間(Year2〜Year4の途中まで)という期間限定ではありましたが、IBの初等教育を受けられたことは、親子にとって貴重な経験となりました。

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IBでは「探究の単元(Unit ot Inquiry:UOI)」が毎日の学習の中心となります。また、教科書を使わない、暗記学習をしない、テストがない(EtonHouse Malaysiaの場合)など、英米式カリキュラムのインターナショナルスクールや日本の公立学校とは違う点がたくさんあります。

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最後の登校日。クラスメイトはみんな仲良し

この学校に決めた当初、私はIBの教育に興味がありましたが、帰国後に息子が日本の公立小学校になじめるかどうかが心配でした。そのため、海外にいる間も母語(日本語)だけは、年齢に応じて自然に身につけられるよう気を配りました。

帰国して4ヵ月が過ぎたいま、息子は日本の小学校生活にすっかりなじんでいます。学習面では、漢字テストに少し苦労しているものの、どの授業も問題なく理解しているようです。帰国後の移行は心配でしたが、わが家の場合は、マレーシアでIBスクールを選んだことに満足しています。

IBの使命を再確認してみると…

ここで改めて、学校でもらった「国際バカロレア(IB)の教育とは?」という日本語版の資料で「IBの使命(IB Mission Statement)」を確認してみます。

国際バカロレアは、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目指しています

IBのプログラムは、世界各地で学ぶ児童生徒に、人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続けるよう働きかけています

このIBの使命は、東南アジアの多文化共生社会で生活してみて、また難民の方々との出会いを通じて、いま私自身が生涯にわたり心がけていきたいと思うことにぴったり重なっていたので驚きました。

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日本もこれからますます多文化共生の社会になっていきます。わが子を含め、未来を生きる子どもたちには、競争や格差をよしとするよりも「多様な文化を理解・尊重し、より平和な世界を築くことに貢献」してほしいと願います。

「10の学習者像」を大切にする学校生活

さて、IB教育には「10の学習者像」というものが定められていて、廊下やクラスルームなど、いつも目にとまる場所に貼ってあります。

教室に貼ってあるIBの学習者像
  • Inquirer 探究する人
  • Knowledgeable 知識のある人
  • Thinker 考える人
  • Communicator コミュニケーションができる人
  • Principled 信念を持つ人
  • Open-Minded 心を開く人
  • Caring 思いやりのある人
  • Risk-Taker 挑戦する人
  • Balanced バランスのとれた人
  • Reflective 振り返りができる人

子どもたちは、日頃から「今日の私は Open-Minded だった」とか、「来週はもっと Reflective でいよう」というふうに、自分にあてはめながら学校生活を送ります。

Year 2(6才)のときの息子の「My Learner Profile Journal(ラーナープロファイル日記)」には、こんなことが書いてありました。

11月17日

今日のぼくは、Thinker(考える人)でした。算数の時間、引き算をいっしょうけんめい考えました。明日はもっとRisk-Taker(挑戦する人)になりたいです。

11月21日
昨日は Caring(思いやりのある人)でした。家でおてつだいをたくさんしました。明日はOpen-Minded(心を開く人)になって、たくさんの友だちと遊びたいです。

12月7日
今日のぼくは、Risk-Taker(挑戦する人)でした。新しいゲームや、なわとびのむずかしいわざに ちょうせんしました。

「探究の単元」も学習者像をキーワードに

約3ヵ月ごとにテーマが変わる「探究の単元(UOI)」でも、各テーマで伸ばしたい学習者像を確認しながら進めます。

たとえば、Year3(7才)のテーマのひとつ、「世界はどのようなしくみになっているのか(How the World Works)ー好奇心が発見につながる(Curiosity Drives Discovery)」では、各自が興味を持ったトピックをひとつ選び、情報を集めながら新しい発見をしていきました。

ここでは、「探究する人」「考える人」「知識のある人」「挑戦する人」などの学習者像がカギになります。

探究の単元 「好奇心が発見につながる」

息子は、遠足先のプラネタリウムで「太陽系最大の惑星:木星」というプログラムを見た後だったので、「一番小さい惑星は何だろう?」と興味を持ち、トピックに選びました。ところが、調べていくうちに、惑星から降格して「準惑星」になった冥王星や、惑星の間にいくつも浮かぶ「小惑星」と呼ばれるものがあることを「発見」し、7才の理解範囲を超えた広い宇宙の 「惑星の定義」に悩むことになりました。

この単元では、最後に大人向けのプレゼンテーションをしなければならなかったので、子どもたちは帰宅後も調べものをしたり、模型を作ったり、資料をまとめたりと必死にがんばりました。

帰宅後もUOIの課題に取り組む

学年末の振り返りでは、「この1年間の自分をもっともよく言い表す学習者像は “Knowledgeable・知識のある人” です。なぜなら、”探究の単元でがんばった” からです」と書いていました。

先生たちも、学年末の成績表には、学習者像をキーワードに評価やコメントを書いてくれます。

「◯◯な人で在ろう」は人生の指針になるはず

また、毎週金曜日には「校長先生の特別賞(Pride of the Principal:PoP)」が発表されました。10の学習者像の観点からとくに努力した生徒を選び、クラスの代表として校長先生と記念写真を撮ります。

たとえば、1週間を通じてスポーツも勉強もがんばった子が「Balanced(バランスのとれた人)」に選ばれたり、けがをしたクラスメイトの課題を手伝ってあげた子が「Caring(思いやりのある人)」に選ばれたり。

賞をもらった生徒には皆が「おめでとう!」といい、校長先生と撮った写真がロビーに貼り出されます。

探究の単元UOIのノート

このように、IB教育の日常にしっかりと根付いている10の学習者像。「◯◯をしましょう」という行動目標ではなく、「◯◯な人で在ろう」という人物像を意識しながら学ぶので、子ども時代だけでなく、大人になってからも人生の指針になるのではないかなと感じました。

服部 駒子
東京生まれ。2011年より約4年間シンガポールに滞在、2015年1月よりクアラルンプール在住。翻訳者・ライター。共訳書に「メディカル ヨガ 〜ヨガの処方箋〜」(バベルプレス)、書籍「アンコールの神々 BAYON」(小学館)、WEBサイト「シンガポール経済新聞」、「シンガポールナビ」、マレーシア在住日本人向けフリーマガジン「Weekly MTown」などに記事を寄稿。

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