「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
ニュージーランドでは、国際教育が国家経済を支える重要分野として位置づけ直され、留学生数の拡大と制度緩和が進んでいます。政府は、単なる人数増ではなく、持続可能な成長とのバランスを重視する姿勢を明確にしています。
一方韓国では大学入試の英語試験をめぐる混乱が起き、厳格な一発勝負型評価の限界が浮き彫りになりました。英国では生成AIを活用した大学教育に対する学生の反発、中国では専門情報の発信に資格を求める新制度が始まるなど、教育のあり方を巡る前提は各国で大きく揺れています。
さらにOECDの調査は、学校外のデジタル利用と学力の関係に新たな視点を示しました。今、問われているのは「どこで学ぶか」だけでなく、「何を基準に学びを選ぶのか」という視点そのものです。
NZ国際教育部門の経済効果が右肩上がり45億NZドル、今後10年の留学生誘致戦略の序章
Stats NZ(ニュージーランド統計局)の最新データによると、ニュージーランドでは、教育関連旅行の輸出額が昨年度36億NZドルに対して2025年9月時点で45億NZドル(約4000億円)に達し、国際教育部門がもたらす経済効果の大きさが浮き彫りになりました。
また、2025年1月~8月の新規留学生数83,535人は、8月集計時点で2024年の年間合計をも上回っています。
ニュージーランド政府は、2034年までに留学生数を年間119,000人まで拡大する国際教育成長計画を2025年7月に立ち上げたばかり。具体策として、学生ビザ保有者の就労許可時間の週25時間への延長などを実施しています。
政府機関「ENZ」のCEOは、国際教育部門の好調を歓迎するとともに「数字を追うのではなく、持続可能なバランスのとれた成長にフォーカスする」と表明しています。
副編集長 城世界情勢とは半歩距離を置き、自国の強みやビジョンにベクトルを向け続ける姿勢が印象的ですね
出典リンク
- THE PIE | NZ’s international education sector delivers NZ$4.5bn economic boost
- THE PIE | NZ debuts growth plan as it eyes 35k more international students
- Immigration New Zealand | Upcoming changes to student visa work rights
韓国の大学共通試験、適性欠く高難度英語テストに苦情噴出、試験主催者は引責辞任
11月実施、韓国大学入試の共通試験「スヌン」の英語科目にて、絶対評価試験を逸脱する難解な問題が出題されたとして、受験生を中心に苦情が噴出。同試験主催団体の責任者が不適切な出題を事実上認め、辞任する事態にまで発展しています
熾烈な競争を伴う高校生統一試験といえば中国の高考(Gaokao)が有名ですが、韓国のスヌンも英語リスニング試験中に飛行機離着陸を国主導で禁止するなど、その厳格さや進学における重要性が知られる試験です。
また、日本の大学共通試験と比べても、大学の合否を直接決定付ける比重が大きいことから、受験生は想像し難いプレッシャーにさらされるといえるでしょう。
本騒動を裏付けるかのように、英語の最高バンドスコア取得者は3%強にとどまり、絶対評価の導入以来最低の記録が示されています。



これほど厳正な試験でありながら、なぜ出題内容への事前チェックが正しく機能しなかったのか、組織構造も関わる問題が潜んでいるかもしれません
出典リンク
- The Guardian | South Korea exam chief quits after complaints English test was too hard
- BBC | Chief of S Korea’s high-stakes exam quits over ‘insane’ English test
英国大学、生成AI主体のエンジニア養成コースを継続提供、受講生からの反発招く
数百万円の補助がある英国の職業訓練プログラムの受講生数名は、スタッフォードシャー大学が提供するコーディング授業の大部分に生成AIが使用されているのを発見。
彼らは、生成AIメインの授業を止めるよう大学に抗議し続けるとともに、「知識や楽しみを奪われた」と学習意欲の低下を主張しました。
大学はコース最終日こそAIに頼らない講師を招いたものの、異議を唱える受講生に対しては「学術専門家のためのAI有効活用の枠組み」を引用し、教員のAI利用を正当化する立場を示したようです。
また、スタッフォードシャー大学は「学術的基準や学習成果は維持された」と言及。
実際、英国政府サイト内の同大学4段階評価(直近1年)は、受講生55名評価「3」、雇用主2名評価「4」を得ており、他のプロバイダーより成果に乏しい実態は確認されません。



受講生の主張は、生成AIによってどれだけ講義の質が損なわれたかが見えづらいため、総じて感情論が支配的という印象があります
出典リンク
- The Guardian | ‘We could have asked ChatGPT’: students fight back over course taught by AI
- イギリス政府公式 | Find Apprenticeship Training
- Find Apprenticeship Training | Digital and technology solutions professional (Level 6)
中国、専門テーマを扱う動画に資格証明を義務化する法律を施行、言論の自由とは対極
中国のサイバースペース管理局は、金融、健康、教育、法律などの話題について専門的な情報提供を行うアカウント(インフルエンサー)に対して、学位などの資格証明を義務付ける新ルールを導入しました。
中国政府は規制の意図として、「オンライン上の誤解を招くアドバイスから、人々を保護するため」と現地メディアを通じて表明。
実際、影響力を増した昨今のインターネット環境下では、特に災害や物議を醸す事件が起きた際には、誤情報が真実であるかのように無闇に拡散される事態が世界各地で生じており、今回のような中国内のルール変更を各国政府がどのように捉えるかも注目が集まります。
本件の反響として、インフルエンサー文化の根幹でもある言論の自由を脅かすという懸念が寄せられる一方、既存の枠を越えた交流を促進したい学術コミュニティにとっては追い風と評する見方もあるようです。



言論・表現の自由と情報の健全性を両立させる最適な落としどころを模索する必要がありそうです
出典リンク
- The Times Higher Education | Influencers told to prove credentials in ‘rare win for expertise’
- Forbes | China’s Credentialing Crackdown: A Reset For The Influencer Economy
学校外1日2~4時間のスマホ利用、学業を妨げない可能性がOECD最新統計から浮上
経済協力開発機構(OECD)の教育部門が2025年10月にまとめた国際学生調査によると、OECD諸国では15才生徒の25%が学校外で1日当たり4時間超をスクリーンタイム(ブラウジング・SNSコミュニケーション・オンラインゲーム等を含む)に費やしていることがわかりました。
ただ、日本の4時間超え比率は、平均値を明確に下回る10%未満に収まっています。
さらに、スクリーンタイムと数学の成績の関係性を調査したところ、まず「学校内」ではスマホ等の使用時間が長ければ長いほど成績が落ち込むという負の相関が判明。
その一方、「学校外」については、1日2~4時間使用するケースが特に数学の成績が優秀という興味深いデータが導かれました。



この結果は、4時間を超えるスマホ使用は学習の阻害要因になりやすいものの、2~4時間に収まる範囲であれば気分転換やモチベーション向上など学習面にプラスの影響があることを示唆するものではないでしょうか
出典リンク
- OECD | What are the trade-offs between learning and digital leisure outside of school?
- OECD | “What are the trade-offs between learning and digital leisure outside of school?”
次回予告:
留学選択肢の増加、コストへのシビアな価値観なども影響し、英国の大学にとっても留学生ニーズの把握は重要事項です。
そうしたなか、学生の母国でのキャリア形成を支援しようとする英国大学の動向に注目が集まっています。














いま、進路をめぐる“前提”そのものが
少しずつ形を変え始めています