「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
米国では大学の「企業化」が進み、人文科学が縮小の危機に直面。一方で研究者は政治的・財政的圧力を避け、海外へ活路を求め始めています。
英国と豪州では子どものSNS規制が本格化し、デジタル環境を社会全体でどう守るかが教育の新テーマに。中東では巨大都市NEOMの停滞が未来型大学構想に影を落とすなど、国家戦略と高等教育の結びつきも揺らいでいます。そんな中、留学の現実解として「低コスト×英語環境」を備えたマレーシアや東欧が注目株に。
学問の価値、学ぶ場所、子どものデジタル環境――それぞれが“進路の地図”を塗り替えつつある今週の5本です。
米大学の学部改革ブームで人文科学系プログラムの存続危機、大学の企業化とも表裏一体
米国の高等教育界では学部改革や組織再編の一環として、人文科学系プログラムが整理・削減対象になるケースが増えており、「収益性の低い」学問分野の将来に対して懸念が広がっています。
例えば、インディアナ州議会は州立大学に対して既存の学術プログラムの20%を削減するよう義務付ける法案を可決。テキサス大学オースティン校やノースカロライナ大学は、地理・地域研究の学術プログラムを削減する方向で動いています。
こうした背景には予算削減や政治的圧力の影響が考えられますが、モンクレア州立大学の英文学科教授は「人文科学プログラムの危機は、収益性重視の組織再編など企業構造を模倣する大学当局によって生み出された」と批判。大学関係者の間でも、学術研究に対する価値基準の対立が表面化しています。
副編集長 城大学の組織再編には、利益志向の強いコンサルタント会社が関わることもあるため、市場性の低い人文科学が削減対象になりやすい一面もあるようです
出典リンク
- The Guardian | ‘Just not monetizable’: humanities programs face existential crisis at US universities
- Academe Blog | The Eternal Synergy of the Spotless Mind
英国教員組合が16才未満SNS禁止の法制化を要請、12月法施行済みの豪に続く動き
英国最大の教員組合(NASUWT)は、ソーシャルメディアが児童の集中力の欠如や不良行動を助長しているという理由から、16才未満のSNS使用禁止を英国政府に要請しています。同組合の調査では、組合員教師5800人の59%がSNSは児童の行動悪化を引き起こすと答えたほか、89%がSNS利用の法的な年齢制限を支持する立場を表明。
NASUWTのトップは、「教師は日々ソーシャルメディアによる影響の対処に追われており、企業サイドには責任ある行動を期待できない」という見方を示し、児童の安全や精神的健康を守るため、早急な法制定の必要性を主張しています。
こうした英国に先行するように、豪州は昨年12月に16才未満がTikTok等のソーシャルメディアアカウントを作成・保持できなくなる法律を施行、スペイン政府も2026年2月にSNS禁止方針を表明したしたばかりです。



各家庭の裁量に任されてきた一面もあるSNS利用、ここに来て法的制限を求める論調も世界的に波及しそうです
出典リンク
- The Guardian | Ban social media for under-16s, top teaching union urges UK government
- UNICEF Australia | Social media ban
米国内大学関係者の海外求人応募数が大幅増加、英語圏と中国語圏が多くを吸収
Times Higher Educationが扱う高等教育の求人データによると、2025年には米国内大学関係者の米国外求人への応募件数が21%増加したことがわかりました。
米国内の海外転職ニーズの大部分は英語圏か中国語圏に引き寄せられており、研究者の流入先としては英国が最大シェアを占めました。また、増加率では、香港で55%、アイルランドでは78%という顕著な変化が示されています。
国際高等教育の研究者Healey氏は、研究資金削減が研究者の米国離れを促しているだけでなく、「トランプ政権の米国内大学への強硬姿勢が、特に共和党寄りの地域のキャンパスにネガティブな環境を生み出している」と指摘。2026年以降は、米国からの頭脳流出がより加速するという展開を予測しています。



世界全体で見ても大学の財務状況は決して良好ではありませんが、「大きな政治的干渉がない」という実態が各研究者の目には魅力的に映るようです
出典リンク
- The Times Higher Education | UK job applications from US-based staff rise by a quarter
- The Times Higher Education | Trump’s anti-DEI agenda ‘already having grave impact’
サウジアラビア、砂漠の巨大都市NEOM計画縮小によりエリート大学開校に暗雲
サウジアラビアでは、経済成長戦略「ビジョン2030」の中核を成す未来都市開発プロジェクト「NEOM」が縮小を余儀なくされたことで、NEOM区域内のエリート大学新設構想が不透明な状況に置かれているようです。
推定5000億ドル規模の新大学は、サウジアラビア最高峰の研究大学「キング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)」に相当する存在を担うことが期待されていましたが、NEOM全体の建設が鈍化するなかで、有識者の間では開校自体が困難なのではという見方も広がっています。
こうした悲観論に対してシンクタンク「ECIA」の専門家は、「過去3年間の国家によるAI分野への集中投資が、新大学にとって重要な研究基盤を形成した」と指摘。より特定分野を強化した大学として、依然として成功への道が残されていることを示唆しています。



各セクターの将来性は高いものの、中東エリア全体で大規模開発計画の難航が目立つ点が気掛かりです
出典リンク
- The Times Higher Education | Uncertain future for Neom U as Saudi megacity scaled back
- The Independent | Saudi Arabia ‘scales back plans for 100-mile desert megacity’ after concerns raised over billions spent
大手出願プラットフォームが選定、2026年に低コスト留学を実現しやすい注目国とは?
大学出願プラットフォームGlobal Admissionsが2026年に推奨するコスパの高い留学地域、その中でも英語留学に対応可能な3カ国をピックアップして紹介しましょう。
マレーシア
マレーシアは、日本人の進学先としても近年注目度が急上昇しています。物価の安さはアジア4位、さらに英語力の高さでもアジア2位に算出されるほど、英語留学先として好条件が揃っている国です。
ハンガリー
比較的物価が安い中央ヨーロッパの中でも、ハンガリーは特に生活費を抑えられる国として知られています。年間学費も40万~90万円程度に収まり、EU圏で最も安価に学べる国と評価できそうです。
ポーランド
東欧のポーランドは、上述のハンガリーと同等か、わずかながら安い水準に学費や生活費を抑えられるでしょう。主要言語はポーランド語ですが、英語学位の選択肢も一定数は用意されています。



国を選べば、欧州でさえ低コスト留学できるチャンスがあるのは朗報ですね
出典リンク
- Global Admissions | 10 Most Affordable Places to Study Abroad in 2026
- The Malaysian Reserve | Malaysia ranks among ASEAN’s most English-proficient countries after Singapore
- 需要の急増で留学生がマレーシアに集まる、とくに中国人志願者の高シェアが鮮明に
- 京都・洛北高校からマレーシア・モナッシュ大学へ:苦手な英語を乗り越え、夢を諦めなかった軌跡
- 鹿児島・出水高からマレーシア・INTI国際大学へ:大学で学ぶ“本当の意味”を求めて
【教育関係者のみなさまへ】
世界の変化を、教育のチャンスに変えるために。
Weekly Picks では、教育政策、評価制度、AI、留学生市場など、世界の学びをめぐる変化を「ニュース」ではなく、教育の前提条件として整理しています。
こうした知見を、学校運営や教育設計、意思決定にどのように活かせるのかを考えたい方は、こちらのページもご覧ください。














いま、進路をめぐる“前提”そのものが
少しずつ形を変え始めています