「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
日本の留学生数が政府目標の40万人を前倒しで突破し、専門学校や日本語学校を中心に受け入れが急拡大しています。
一方、海外の大学を巡っては新たな課題も浮上しています。英国ではコロナ禍のオンライン授業をめぐる補償訴訟が広がり、参加する学生は20万人規模に拡大する可能性も指摘されています。米国では外国人研究者の増加が鈍化し、政策変更による研究環境への影響が懸念されています。
さらにオーストラリアではSTEM優遇政策の影響で芸術系コースの縮小が進み、英国ではAI検出ツールの誤判定が学生のストレス要因になっているという調査結果も報告されています。
日本、留学生40万人目標を8年前倒し達成、専門学校・日本語学校が急増
出入国在留管理庁の最新統計によると、2025年6月時点で日本国内の留学生数は、前年比8%増の約43万5000人を記録。第5回教育未来創造会議で提言された「2033年に向けた留学生目標40万人」を、8年も早いタイミングで上回ったことになります。
京都大学大学院講師のBrotherhood氏は、日本政府による国際化戦略が順調な増加の主要因と分析。同戦略には、留学生定員の超過上限緩和や英語学位プログラムの推進策、優秀な海外若手研究者の受け入れ支援事業などが含まれています。
さらに「日本語と職業スキルを習得後、半熟練労働者としての就労ルートが整備された」と同氏は指摘。
実際、2011年から今日まで、大学の留学生が約30%増加したのに対し、専門学校生は約300%、日本語学校生は400%超という顕著な伸びを記録しています。
副編集長 城そうした留学生の大半が在学中にアルバイト就労し、非正規労働力としても日本社会に有益な価値を提供しています
出典リンク
- THE PIE | Japan hits internationalisation target eight years early
- 法務省 出入国在留管理庁 | 「在留外国人統計(令和7年6月末)」統計表
- Study in Japan | 2024年度(令和6年度)外国人留学生在籍状況調査結果
米国内外国人研究者の増加率鈍化、政策変更による減少トレンド入りを専門家警告
米国政府系のデータベースOpendoorsによると、米国の外国人研究者は2024~25年度に約4%増加したものの、前年度の伸び率10%と比べて緩やかな成長が示されました。
現状、米国内では11万5000人以上の外国人研究者が研究・教育・臨床業務で幅広く活躍中。しかし、トランプ政権下の制度面の不安定化により「4年余り続く増加トレンドに陰りが見え始める」と専門家は警告しています。
例えば、外国人研究者数が米国内で4位に入るテキサス州は、最新統計において全米最多の増加数(+1528人)を記録。しかし、同州では、公立大学のH-1B(特殊技能職)ビザ雇用を一時的に禁じる州法が制定された影響で、現年度以降はSTEM分野を中心に人材不足や競争力低下が不安視されています。



統計値は米国の底堅い需要も物語りますが、39ヵ国を対象とした渡航禁止措置などを反映する次回調査はより明確な分岐点が示されるかもしれません
出典リンク
- THE PIE | US international scholar pool set to shrink, experts warn
- Institute of International Education(IIE)| Open Doors 2025 – International Scholars Presentation
コロナ禍訴訟の英名門大学支払い合意報道、賠償求める学生が約20万人に増加
英メディア、フィナンシャルタイムズは2月18日付けで、コロナ禍によって「大学教育の質が低下した」として訴訟を起こした元UCL(University College London)学生6500人が、大学からの2100万ポンド(約44億円)の支払いをもって合意に達した件を報じています。
和解条件については原告・UCLともに機密扱いを貫いているものの、フィナンシャルタイムズは「大学側弁護士が原告宛に送ったEメール内容を確認した」と主張。
真偽の評価はさておき、大手メディアの報道をきっかけとして、36の英国内大学を対象とする同様の訴訟には約3万人の学生が追加登録。原告の代理人弁護士によると、「大学に補償を求める学生団体は合計20万人規模に拡大した」そうです。



今後、英メディアが報じた通りの判例が成立した場合、相当数が財政難に直面する英国の大学業界は、さらに資金繰りに行き詰まる苦境に立たされそうです
学生不足の豪大学芸術コースが消滅危機、STEM優遇によるコスト上昇も影響か
オーストラリアでは10年足らずで40以上のクリエイティブアート学位(美術・音楽・演劇・ダンスを含む)が廃止されており、高等教育で芸術を学べない国になる危機が囁かれています。
The Australian Journal of Educationに掲載された最新研究によると、2018年~23年の5年間で46の高等教育機関中、30大学で芸術系学部への入学者数が減少。そのうちの半数が、30%~100%の入学者減少という深刻な変化を辿っています。
同研究は、2021年に豪政府が導入したJob-ready Graduate Packageによる直接的影響を指摘。この制度によりSTEM分野の学費は明確な減少に転じましたが、それとは相対するように芸術系の学費は約19%上昇。今後5年以内に、クリエイティブな労働力を維持することさえ困難になるだろうと不安視されています。



世界的傾向として、芸術以外に人文科学系プログラムが縮小されるケースも増えているようです
出典リンク
- The Guardian | Australia in danger of becoming an ‘artless country’ as enrolments in creative courses collapse
- Australian Journal of Education(2026) | The Polycrisis for Arts and Creative Education in Australia
英国調査、生成AI不正利用「誤検知」リスクが学生への多大なストレス要因
英国のオンラインリサーチ会社YouGovが実施した調査によると、回答した大学生2373名のうち60%がAIツール使用中にストレスを抱えており、AI利用者の4人中3人が「盗作を誤検知」された経験に多大なストレスを感じていることがわかりました。
学習課題の補助等に生成AIツールを利用する学生は、前年時点の64%から71%までに増加。また、留学生のAI使用率は、ローカル学生より8%ほど高い実態も示されています。
調査結果に基づく報告書は、「学生、ツール、大学が採用する検出方法には、重大な信頼ギャップがある」と指摘したうえで「学生側を誤検知から守る」仕組みの必要性を強調。さらに、どこまでが許されるのか学生間で十分な理解が浸透していない状況を問題視しています。



生成AIの利便性が高まるほど、学生の不正使用を疑う視線が強まるという皮肉な事態。適正な信頼関係を維持するためにも、大学主導の明確なルール整備が求められそうです
出典リンク
- Times Higher Education | Fear of being flagged by AI detectors drives stress among students
- Times Higher Education | Students win plagiarism appeals over generative AI detection tool
【教育関係者のみなさまへ】
世界の変化を、教育のチャンスに変えるために。
Weekly Picks では、教育政策、評価制度、AI、留学生市場など、世界の学びをめぐる変化を「ニュース」ではなく、教育の前提条件として整理しています。
こうした知見を、学校運営や教育設計、意思決定にどのように活かせるのかを考えたい方は、こちらのページもご覧ください。














いま、進路をめぐる“前提”そのものが
少しずつ形を変え始めています