小学生で英検2級――と聞くと、「すごい!」「特別な才能があるのでは?」と思うかもしれません。
でも、取材を通して見えてきたのは、そんな“特別”ではなく、毎日の中にある“学びのデザイン”でした。
子どもたちはみんな違う方法で、家族と一緒に自分なりの「学びの形」を見つけています。コツコツ続ける力、探究する姿勢、好奇心、家族の伴走…。
8人のストーリーから、“合格のその先”にある成長のヒントをお届けします。
英検2級とは?
英検2級は、高校卒業程度(CEFRでB1〜B2レベル)の英語力が求められます。文法・語彙に加えて、長文読解、リスニング、ライティング、スピーキングの4技能を総合的に評価。
小学生での合格はまだ少数派ですが、確かな英語力と「考える力」が育っている証でもあります。
8人のストーリーから見える“学びの力”
“サポート型”が子どもの主体性を引き出した──J.O.くんの成長
かつては英語を“遊び”として楽しんでいたJ.O.くん。しかし、英検という目標に挑戦する過程で、英語を「学ぶ力を育てるツール」として捉えるように変化しました。👉“遊びの英語”から“学びの英語”へ──J.O.くんの成長記録
“探究型イマージョン教育”が育んだ──Y.H.さんの挑戦
Y.H.さんの通う私立校では、教科を英語で学ぶ“イマージョン教育”を採用。英語を「話す」「書く」だけでなく、考える言語として使う経験が、英検2級への土台になりました。 👉“探究型イマージョン教育”が育んだ──Y.H.さんの挑戦
“コツコツ型”が夢をかなえた──N.S.さんの継続
小さな目標を積み重ね、努力を日常に変えたN.S.さん。「やればできる」を体感した経験が、次の挑戦への原動力になりました。 👉 “コツコツ型”が夢をかなえた──N.S.さんの継続
“探究型”が自分で学ぶ力を育てた──A.I.さんの挑戦
好きなテーマを追いかけるうちに、英語が“手段”に変わっていったA.I.さん。自ら問いを立て、学びを深めていく姿が印象的です。 👉“探究型”が自分で学ぶ力を育てた──A.I.さんの挑戦
“ごほうび型”が努力嫌いを変えた──K.M.くんの挑戦
「合格したらWiiを買ってあげる」。その一言が、努力が苦手だったK.M.くんを動かしました。 👉“ごほうび型”が努力嫌いを変えた──K.M.くんの挑戦
“好奇心型”が世界を広げた──K.O.さんの冒険
興味のままに飛び込み、体験を通して学びを広げたK.O.さん。「やってみたい!」の気持ちを家族が後押しし、英語が世界への扉になりました。 👉“好奇心型”が世界を広げた──K.O.さんの冒険
“バイリンガル型”が英語を武器に世界へ──K.K.くんの歩み
幼少期からのイマージョン教育と海外プログラムの体験が、英語を“使う楽しさ”に変わっていきました。👉“バイリンガル型”が英語を武器に世界へ──K.K.くんの歩み
“多読型”が家族で育てた英語のある暮らし──N.K.さんの学び
家族で続けた多読が、自然に英語がある日常を育てました。英語を“勉強”ではなく“暮らしの一部”にする発想が秀逸です。👉“多読型”が家族で育てた英語のある暮らし──N.K.さんの学び
英検2級を取得した時期
名前 | 学年 | 教育背景 | 特徴・キーワード |
---|---|---|---|
J.O.くん | 小3 | プリスクール→英会話+オンライン | 英語は「遊びの言語」から「学びの言語」へ |
Y.H.さん | 小6 | 私立イマージョン校 | 学校内の探究型学び。自分で朝学習を企画 |
N.S.さん | 小4 | くもん+英会話 | コツコツ型。くもん英語で基礎→英会話で実践 |
A.I.さん | 小1 | プリスクール→私立小 | 家庭が探究マネジメント型。幼少期から一貫教育 |
K.M.くん | 小6 | プリスクール→公立小 | ごほうびで奮起。モチベ管理のリアル実例 |
K.O.さん | 小4 | プリスクール→イマージョン小 | 自主性と好奇心でIB志向。英語が“世界を開く道具” |
K.K.くん | 小4 | イマージョン幼稚園→公立 | 英語×レゴロボットで世界大会へ |
N.K.さん | 小4 | 自宅多読+塾 | 家族全員で学ぶ。多読100万語突破 |
“天才じゃなくても届く”英検2級の裏側
①家庭に“英語の空気”をつくる
8人の学びの軌跡をたどると、早期教育の有無よりもはるかに重要だったのが、“環境づくり”と“親の関わり方”でした。
- 英語の絵本を家族で読む
- 「Let’s Go」や「Oxford Reading Tree」を親子で声に出す
- 家庭のなかに英語の空気を“つくる”
- 親自身がオンライン講座(edXなど)で学ぶ姿を見せる
つまり、「教える親」ではなく「一緒に学ぶ親」という共通点がありました。

英語を“科目”ではなく“家族の文化”として楽しむ家庭ほど、子どもが主体的に学びを続けていました
②モチベーション設計の工夫
「努力が嫌い」「飽きっぽい」──そんな子もいました。でも、そこで親がうまく“スイッチ”を見つけているのが印象的でした。
たとえば、K.M.くん(公立小6)は「合格したらWiiを買ってあげる」と約束したのち、半年で英検2級を突破。その後「やればできる」という自己効力感を得て、自然に英語を続けています。
一方で、くもん+英会話で着実に力を伸ばしたN.S.さんは、「ストーリーの続きを読みたい」という好奇心で学びを継続。
やる気の源泉は人それぞれ。大事なのは、「本人の性格に合った設計」ができるかどうか。
③失敗を糧にできる力
J.O.くん(小3)は英検2級取得後に受けた準1級に落ちたあと、自分から単語を辞書で調べ、ノートに書き写すようになりました。
「悔しい」という気持ちを、親に言われる前に“行動”に変えたのです。N.K.さんの母も言います。



親の関わりは、可能な限り最低限に。失敗も経験として見守ることが、結果的に“自分で学ぶ力”につながります
合格の裏にあるのは、「努力させられた」ではなく「努力を選んだ」子どもたちの姿でした。
読む・感じる・使う──多読と体験で“英語が生きる”学びへ
そして、英検2級合格者の多くが、多読+体験学習をセットで取り入れていました。
- 「Oxford Reading Tree」や「CTP」などの絵本を音声付きで多読
- 多読記録を“リーディングログ”として可視化
- 海外サマースクールやホームステイ体験で“使う英語”を実感
読む・聞く・話すを日常的に循環させることで、学びが“勉強”ではなく“ライフスタイル”に変わっていったのです。
非認知スキルという“見えない力”
英検2級に届いた小学生たちに共通していた非認知スキルは、主に3つ。
能力 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
自己調整力 | 学習を自分でコントロールし、習慣化する力 | 朝学習や多読記録を自分で管理 |
好奇心・探究心 | 「知りたい」を原動力にする姿勢 | 読みたい、話したい、海外で体験したい |
内発的動機づけ | “やらされる”ではなく“やりたい”で続く | 英語で算数・音楽を学ぶ楽しさを実感 |
つまり英検2級合格は、「非認知能力が形になった証」でもあるのです。
“引き算の子育て”が育てる、自分で伸びる力
共通していたのは、親が“やらせる”のではなく“見守る”スタイル。
- 「英語を学ばせる」より「学びを支える」
- 「結果を焦る」より「プロセスを喜ぶ」
親が一歩引くことで、子どもは“責任を持って学ぶ”ようになります。
これはまさに、英語力だけでなく人生の学び力を育てる土壌です。
“合格”はゴールじゃない。ここから始まる学びの旅へ
8人の子どもたちは、英検2級をゴールにはしていません。その先には、
- TOEFLやIELTSへの挑戦
- 海外ボーディングスクール進学
- 国際バカロレア(IB)での学び
といった“新しい挑戦”が始まっています。
「英語で世界を広げる」ではなく、「英語で“自分”を広げる」。
このシリーズは、そんな“未来の学び”へと続く第一章です。
編集後記|“家庭で育つ学びのデザイン”
小学生で英検2級に合格した子どもたちに共通していたのは、“環境”よりも“関わり方”でした。
親が焦らず、子どもの興味やリズムを尊重することで、学びが自然に根づいていく──それがこの8人に共通する“学びの力”です。
英語の早期教育や合格実績を目指すことよりも、家庭の中に「一緒に学ぶ時間」「応援する余白」をつくること。それこそが、子どもたちを“合格のその先”へ導く道なのだと感じます。