「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
北米ではカナダを中心に留学生数が急減し、移民・教育政策の揺れが大学経営にも直撃する一方、ドイツは過去最高の留学生受け入れを更新し、アジア・インド勢の存在感が一段と高まっています。
米国ではH-1Bビザ制度の見直しが「留学後」の魅力に影を落とし、進学先選びはよりシビアな時代へ。一方でMENAは「送り出す地域」から「学ぶ地域」へと進化し、世界の学びの地図は確実に多極化しています。
さらにZ世代は「影響力ある仕事」として教職に回帰する動きも。いま進路選択は、国・制度・価値観まで含めた“構造変化”を読む力が問われています。
2025年北米圏大学の学生減少傾向が浮き彫り、カナダ政府による過剰修正も懸案
世界63ヵ国、461の教育機関を対象としたグローバル就学ベンチマーク調査によると、2025年8月~10月間において、カナダの大学の82%、米国の大学の48%が前年比で留学生受け入れが減少したことがわかりました。
留学生の減少率では、米国学士課程の6%減に対してカナダの学士課程は36%減という急激な落ち込みを記録。留学生流入が停滞傾向にある北米圏の中でも、カナダの変動ぶりが顕著に示されました。
専門家の多くは「これは周期的および一時的な混乱ではなく、戦略的な現象」と捉えるとともに、急変するカナダの現況については「政府による過剰な引き締め」を指摘。実際、調査内では大学が直面する最大障害として、カナダ教育機関の90%(世界平均68%)が「政府の制限的な政策」と回答しています。
副編集長 城2026年以降、カナダ大学の半数以上が予算削減や職員リストラを見込んでおり、持続可能な移民政策に伴う負担が各大学に蓄積し続ける可能性があります
出典リンク
- THE PIE | International enrolment declines hit 75% of Canadian universities
- Studyportals | The Global Enrolment Benchmark Survey Global summary report Aug-Oct 2025 intake
独大学の新規留学生数が過去最高に到達、国別ではインド人留学生がトップ
ドイツの国際交流支援機関「DAAD」がまとめた報告書によると、2024~2025年度冬学期時点の独大学への新規留学生は、前年の8万8000人を大きく上回り、過去最高の11万6000人を記録したことが明らかになりました。
国別では、前年比20%増加のインドが中国を抑えてドイツへの留学生供給のトップシェアに躍進。国立大学だけで2400の英語学位プログラムが採用されている学習環境の誘因もあり、アジア地域を筆頭に独大学への入学希望者は戦略的に増加し続けているようです。
また、以前は高く推定されていた留学生の大学中退率は、ローカル学生とのギャップもわずか3%差まで縮小。大学入学後の成果という観点からも明るい兆しと評価できそうです。



アジア・MENAのような留学新興国という立場とも少し異なるドイツですが、ビザ申請プロセスの安定、一定の寛容さも備える制度設計など、留学シフト先としても注目度が上昇するでしょう
出典リンク
- THE PIE | Germany’s record first-year intake drives 6% rise in international enrolments
- DAAD | High number of international students in Germany again – dropout rates lower than previously assumed
米国H-1B就労ビザ見直しで高所得者優遇が確定、留学動機が委縮する可能性も
米国国土安全保障省(DHS)は、H-1B就労ビザ抽選において、より高収入かつ高技能な申請者が有利になる加重選考プロセスの採用を12月29日付けの連邦官報にて発表しました。
H-1Bビザといえば、昨年の申請料10万ドルへの引き上げ(学生ビザ保持者は対象外)が大々的な物議を醸したばかり。DHS側は、昨年の申請料引き上げや、今回の抽選方法を変更する狙いとして「H-1Bビザ制度の乱用を抑止するため」と表明しています。
専門家はこうした変更によって、米国テクノロジー業界に制約が生じるだけでなく、米国留学の魅力が失われる可能性を指摘。非営利団体NAFSAの新調査によると、米国内留学生の53%が「賃金水準によって就労ビザ取得が決まるならば、米国留学を選択していない」と回答しています。



H-1Bビザをめぐる変更は、専門職を目指すF1ビザ学生にとって当選率下落という形で一定の影響が及びそうです
出典リンク
- THE PIE | DHS final rule to overhaul H-1B visa in favour of higher earners
- Federal Register | Weighted Selection Process for Registrants and Petitioners Seeking To File Cap-Subject H-1B Petitions
MENA地域、留学生の供給にとどまらず国際教育フィールドとして力強い存在感
進路選択プラットフォーム「Studyportals」がまとめた最新レポートによると、MENA地域(中東・北アフリカ)が国際教育の提供地として需要拡大するトレンドが浮き彫りになりました。本レポートでは、サイトを訪れた学生5000万人以上の検索行動やエンゲージメントデータを用いて広範な教育需要を測定。
MENA地域からは多くの留学生が国境を超える一方、同地域内高等教育プログラムへの参加者数も3年連続で増加。
こうした結果は、コスト負担への敏感化、伝統的な留学先の政策不安定化等により、身近なエリアへの留学が優先される傾向を反映したといえそうです。



同地域の成長を牽引するUAEやサウジアラビアに共通しているのは、国主導の計画的アプローチに基づく大規模な投資戦略。高等教育インフラだけでなく、奨学金プログラムやデジタルイノベーションを含む包括的且つ安定的な環境整備が最大の成功要因といえるでしょう
出典リンク
- THE PIE | MENA strengthens its role in global student mobility
- Studyportals | Asia, Latin America, and MENA in global education
米国でZ世代の教員志願者が増加、仕事の影響力に価値を見出す志向反映か
大半の先進国と同じく米国でも教員の減少傾向が問題視されていますが、直近では想定外のレベルでZ世代の教員志願者が増加しているようです。非営利教育団体Teach For America(TFA)によると、教職を巡っては給与や労働条件の懸念があるにも関わらず、教員育成プログラムへの応募者数は過去3年間で約43%も急増しています。
TFAチーフ職員のPetersmeyer氏は、「Z世代はコロナ禍により孤立感の強い成長期を過ごした」と指摘したうえで「人との繋がりやリアル感、さらには影響力や目的意識のある職務への切望がある」と分析。
また、同世代は目まぐるしく変化する環境下で成人したからこそ、「そうした経験が生徒と強固な信頼関係を構築するのに役立つ」という評価もあるようです。



若い年代の教員志望者が増えつつあるからこそ、同時に定着率を高める環境づくりにも改めてフォーカスすべきでしょう
出典リンク
- The Guardian | Impact over income: a striking number of gen Zers are becoming teachers
- アメリカ労働統計局 | The decline of the teaching profession
【教育関係者のみなさまへ】
世界の変化を、教育のチャンスに変えるために。
Weekly Picks では、教育政策、評価制度、AI、留学生市場など、世界の学びをめぐる変化を「ニュース」ではなく、教育の前提条件として整理しています。
こうした知見を、学校運営や教育設計、意思決定にどのように活かせるのかを考えたい方は、こちらのページもご覧ください。














いま、進路をめぐる“前提”そのものが
少しずつ形を変え始めています