「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
世界の国際教育は、いま「量の拡大」から「構造の再設計」へとフェーズが移りつつあります。インドは2047年に留学生110万人規模を見据え、国家戦略として国際教育拠点化を構想。
一方、オーストラリアは過去最高の教育輸出額を記録しながらも、新規留学生減少という構造リスクを抱えています。EUではエラスムス・プラス拡充を巡る予算攻防が続き、シンガポールは大学間競争から「協働モデル」へ舵を切りました。
そして教室では、「なぜ?」と問い続けるZ世代が学びの前提そのものを変え始めています。国・大学・学生、それぞれのレベルで“学びの再定義”が進む今を読み解く5本です。
国際教育拠点への課題残すインド、2047年までに留学生110万人到達の可能性
インドの政策シンクタンク「NITI Aayog」が昨年12月にまとめた報告書によると、インドは制度改革の成功を伴えば2047年には最大110万人もの留学生を受け入れる可能性が示されました。
この予測が実現すると、約20年後のインドは現在のアメリカ国内の留学生規模(約120万人)に迫る水準に到達することになります。
同報告書はインドの現状について「海外では130万人ものインド人学生が学び、人材流出の大幅な超過トレンドは続いている」と指摘。実際、インドからの個人の海外送金額(教育目的)は、インド高等教育予算の50%以上に相当するようです。
こうした実情を踏まえ、同報告書は包括的な奨学金制度や国際研究者誘致策の導入、さらには海外分校参入の規制緩和などを提言し、政府主導の取り組み次第でインドが国際教育拠点として台頭する未来図を構想しています。
副編集長 城留学生が分散化する昨今の傾向は、インドの高等教育戦略を後押しする方向に作用しそうですね
出典リンク
- THE PIE | India could host 1.1 million int’l students by 2047, but concerns persist: NITI Aayog
- インドの政府系シンクタンク NITI Aayog | Internationalisation of Higher Education in India: Prospects, Potential, and Policy Recommendations(PDF)
- 独大学の新規留学生数が過去最高に到達、国別ではインド人留学生がトップ 1/10号
- 前年度米国の留学生数が過去最高110万人超え、OPT参加学生の大幅増加が牽引(最大シェアはインド人学生)11/29号
- ランカスターほか英国大学のインド進出が活発、高等教育需要は上昇の一途 10/8号
オーストラリアの国際教育輸出額が過去最高も、国内申請者依存が将来の減収リスク
オーストラリア統計局のデータによると、豪の国際教育輸出額はコロナ禍による一時的停滞からも回復し、2024年時点で過去最高額となる約365億豪ドル(豪大学海外キャンパスの収入は含めず)を記録。
ただし、収益構成における新規留学生の比率が減じていることから、国際教育輸出による収入も将来的には頭打ちになる可能性が懸念されています。
具体的には、2022~23年会計年度において、承認された学生ビザの約5分の1がオーストラリア国内からの申請者に付与されていたのに対して、直近数ヵ月では国内申請ベースの学生ビザ比率が3分の1以上に増加。
また、国外からの申請(新規留学)に限ると、過去2年のうちに高等教育分野の学生ビザ発給件数は27%、その他教育分野では55%の減少傾向を示しています。



今後は留学先の選択肢も多様化するため、国外申請ベースの学生受け入れを再加速できるような制度設計が求められるでしょう
出典リンク
- The Times Higher Education | Record Australian international income ‘from onshore students’
- オーストラリア政府 Department of Education | Education export income – Calendar Year
- 2026–2030 世界の留学生市場 | オーストラリア|調整後の再成長
- 豪の主要教育団体、政府にビザ申請料の緊急引き下げを要請、留学期間による不公平性を指摘 10/11号
- 豪雇用問題の諮問機関、留学生在留率を過小評価と指摘、雇用実態も表面化 10/4号
EU大学団体、エラスムス・プラス成功のため200億ユーロの予算拡張を要請
The European University Association(EUA)をはじめとする17の欧州教育団体は、1月7日付けの共同書簡にて、エラスムス・プラスのビジョンを結実させるためには、現状の有力案に約200億ユーロを加えた600億ユーロ(約11兆円)規模の長期予算が望ましいことを主張しました。
昨年7月に欧州委員会は、エラスムス+向けの2028~34年予算として408億ユーロを提案しましたが、EU各団体の代表者は「戦略的に優先すべき分野への奨学金等を賄えず、既存プログラムを継続させる程度にとどまるだろう」と共同書簡にて懸念を表明。
裏を返すと、世界各地で地政学的緊張が高じている状況下で、今後数年をEU全体で長期的な成長サイクルを確立する最重要期間と捉えているようです。



統合的な国際交流プログラム「エラスムス・プラス」には、英国の6年ぶりの復帰も決まり、EU圏では近年になく次世代国際教育への気運が高まっている状況といえます
出典リンク
- THE PIE | Europe’s universities say €40bn isn’t enough for Erasmus+ ambitions
- The Times Higher Education | Hike Erasmus+ budget by €20 billion to boost inclusion, EU told
- European University Association(EUA) | A stronger Europe needs a properly funded Erasmus+
シンガポールトップ大学、競争ではなく協力優先で高次元の研究成果を追求
シンガポールのトップ大学、南洋理工大学(NTU)のHo学長は、2025年8月にシンガポール国立大学(NUS)と締結した「NUS–NTU Collaboration Driving Next-Gen Research」により、両校が研究施設や専門知識を共有して「ウィンウィン」の関係を構築できるだけでなく国全体に好影響が波及しつつあるという見通しを語っています。
両校はシンガポールを代表する名門大学であると同時に、各分野で南洋理工大学がNUSに次いで2番目に甘んじるケースが多いため、一定の競争心理が働いても不思議ではない関係性といえます。
しかし、共有データを両校のプログラム改善に活用するほか、国営投資会社と提携してスタートアップ創出を加速させるなど、競争よりも協力姿勢を優先するスタンスがあらゆる局面で功を奏しているようです。



革新的な研究成果を追い求める共通認識が浸透し、両校にワンチームとしての意識が芽生えているようです
出典リンク
- The Times Higher Education | Singapore universities ditch ‘competition for the sake of it’
- NTU: Nanyang Technological University | OpenGov Asia — 8 Aug 2025: Singapore: NUS–NTU Collaboration Driving Next-Gen Research(PDF)
「なぜ」と意味を問い続ける情報過多Z世代への理解と最適な教育アプローチとは?
ベントレー大学(米)のJef LeBlanc専任講師のクラスでは、「なぜ」という言葉が絶えず飛び交っており、これは彼の講師キャリアの中でも決定的な変化と位置付けるべき現象のようです。
「なぜ」と問い続ける態度は、一見すると講師への反発のように捉えられがちですが、虚偽や誇張を含む情報過多の環境で育ったZ世代学生にとっては「当然の姿勢」とLeBlanc氏は理解を示します。
「なぜ」は反抗や無関心ではなく、むしろ学生の興味関心を示す新たなサイン。知識と目的を繋ぐ糸口や両者の関連性を知ろうとする「潜在的な要求」をLeBlanc氏は感じ取っています。
こうした世代と触れ合うなかで、彼は透明性や言行一致を最優先にすることで、生徒の懐疑心が信頼に変わるという学びを得られたそうです。



授業進捗は従来よりも遅れそうですが、Z世代は無自覚のうちに本質的な学び方を体現しようとしているのかもしれません
出典リンク
- EdSurge | Teaching a Generation That Questions Everything
- Stanford Report | What to know about Gen Z
【教育関係者のみなさまへ】
世界の変化を、教育のチャンスに変えるために。
Weekly Picks では、教育政策、評価制度、AI、留学生市場など、世界の学びをめぐる変化を「ニュース」ではなく、教育の前提条件として整理しています。
こうした知見を、学校運営や教育設計、意思決定にどのように活かせるのかを考えたい方は、こちらのページもご覧ください。














いま、進路をめぐる“前提”そのものが
少しずつ形を変え始めています