「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
米国では、政治的逆風の中でもハーバードの留学生数は増加する一方、修士課程全体では留学生が15%減少する見通しが示され、名門校への集中と制度リスクの二極化が鮮明になっています。
教育内容面では、AI時代に「何を学ぶべきか」を巡る議論が本格化。さらにギリシャでは30万人超の“永遠の学生”整理という制度改革が断行されました。
一方でアイルランドは留学生数が過去最高を更新。世界の高等教育は、再編と選別のフェーズに入ったことを実感させる一週間です。
トランプ政権との象徴的な対立継続も、ハーバード大学の2025年留学生数が増加
少し意外な結果ではないでしょうか。ハーバード大学の発表によると、2025年秋時点の留学生数は前年比で50名微増したことが明らかになりました。
トランプ政権による在籍留学生への圧力や長期にわたる双方の確執など、留学への回避志向が強まりかねない状況に反して、名門大学の底堅い需要が示されたようです。
国別では特徴的な変動が見られ、留学生主要供給国インドからの学生は前年水準を30%下回る顕著な減少を記録。
一方、米政権から主な注視対象であり続けた中国の留学生は前年比4.5%増、同じ東アジア地域の韓国人留学生は9%増を示し、インド人学生減少の影響を相殺した主要因と捉えることもできます。
副編集長 城中国のグローバル教育企業「Sunrise International」の共同創業者は「中国人は過去の経験から変動慣れしている一面もあり、そうした政策変動リスクを許容しうるほど米国トップ大学の学位取得メリットは大きい」と分析しています
出典リンク
- THE PIE | Harvard’s international enrolments rise amid Trump attacks
- ハーバード大学 | Enrollment International Fact Book 2025-26, Fall 2025 Enrollment by Country of Citizenship.
新年度米国修士課程の留学生が15%減少見込み、依存度高い分野の人材不足も深刻化
米国の大学市場調査会社「Validated Insights」の最新レポートによると、2025~26年度の修士課程留学生数は前年比で15%減少する見通しが固まりました。
以前から本年度の修士留学生は数%減少することが予測されていましたが、制度面の不安定性などの影響度が強く、新たに算出された約59.5万人は当初の予測値を64,000人ほど下回っています。
また、同レポートは、特定の研究分野に対して留学生減少の影響が色濃く反映されてしまう点を強調。
なかでもSTEM系修士課程は最大80%を留学生が占めており、市場調査責任者Colby氏は「AIやコンピュータ分野で米国が若手人材を失うリスクに直面する」と高等教育分野内にとどまらない負の連鎖を指摘しています。



修士留学生の重要な選択動機といえるOPT制度も、トランプ政権下で引き続き変動リスクにさらされており、2026年も米国留学の回避要因は解消する見通しが立っていません
出典リンク
- THE PIE | US international master’s enrolments to fall by 15%
- Business wire | New Validated Insights Report: Market for Master’s Degree Programs Shows Growth, Along with Mixed Signals
AIネイティブ世代の台頭により、コンピューティングスキルの必要性巡り意見が二分
デジタル教育慈善団体「Raspberry Pi」CEOのColligan氏は、「AIネイティブ世代が読み書き能力と同じくAIリテラシーを身に付けることは、社会的分断を抑えるためにも必要不可欠」という見解を英国ガーディアン紙に語っています。
一方、2025年は大手IT企業による技術革新、人間の自然言語ベースでソフトウエアを構築できる「バイブ・コーディング」が注目されたように、「コーディングスキルはやがて不要になる」という見方も着実にトレンド化しつつあるようです。
Colligan氏は「AIリテラシー教育の機会がない子供たちは、自動化された大量の意思決定に疑問を抱かず一方的に左右される」と想定される悪影響を語り、世界の教育現場に「コンピュータサイエンス不要論」が手を伸ばしている現況に警鐘を鳴らしています。



工芸やスポーツと同じように、よりよく活用・表現するためには一定の専門知識が重要という真理が揺らぐことはないでしょう
出典リンク
- The Guardian | Generation AI: fears of ‘social divide’ unless all children learn computing skills
- The Guardian | ‘Vibe coding’ beats ‘clanker’ to be Collins dictionary’s word of the year
ギリシャ「永続的な」大学生30万人超を除籍、待望の大学近代化へ古き慣行や構造にメス
2026年1月2日、ギリシャの教育省は2016年以前から国営大学に在籍したままの大学生30万人以上を除籍したことを発表。
長年、ギリシャの大学では生涯学習や仕事との両立を促すため、極めて柔軟性の高い在籍ルールが敷かれ、授業料無償という待遇と結び付いて大学生を永続できる慣行(Eternal Student)が保たれてきました。
2025年の法改正を機に、ようやく非アクティブな学生を一掃する運びとなり、高等教育の効率化や国際的地位の向上へギリシャ大学関係者の間では期待感が高まっています。
その反面、テッサロニキ・アリストテレス大学の物理学教授は「学生数を整理しただけでは、根本原因に対処しきれていない」と指摘。在籍年数の長期化そのものを防ぐため、カリキュラムや進級条件の積極的な見直しも求められそうです。



欧州のなかでも独自色の強い印象のあるギリシャですが、これほど特異な大学制度が運用され続けていたとは驚きました
出典リンク
- Times Higher Education | Greek purge of 300,000 ‘eternal’ students ‘long overdue’
- eKathimerini | Almost 310,000 ‘eternal’ students removed from university registries
- eKathimerini | ‘Eternal student’ era ending
アイルランド大学の留学生数が過去最高を更新、留学体験ベースの口コミ評価も後押し
国際的な出願プラットフォームApplyBoardの最新報告書によると、アイルランドの留学生数は前年比10%増の44500人に達し、4年連続の増加トレンドが続くとともに高等教育部門の着実な成長ぶりが示されています。
2024~25年度の伸びを牽引したのは、前年比30%増の9175人を記録したインド人留学生。
第2グループの米国も8%増加しましたが、単一地域に依存しない需要拡大が見られる点も好材料です。
また、ApplyBoardのアンケートによると、ビッグ4やドイツを抑え、留学生への開放性を否定する回答が最も低比率にとどまったのがアイルランドでした。
このように、アイルランド留学の成長は宣伝広告に限らず、留学生のポジティブな実体験や口コミに支えられている側面もあるようです。



2027年からは英国がエラスムス・プラスに再加入するため、近年減少トレンドにあった英国人留学生の回復も確実視されています
出典リンク
- THE PIE | Indian and US students drive record international enrolments in Ireland
- ApplyBoard | International Enrolments in Ireland Rise for the Fourth Straight Year
【教育関係者のみなさまへ】
世界の変化を、教育のチャンスに変えるために。
Weekly Picks では、教育政策、評価制度、AI、留学生市場など、世界の学びをめぐる変化を「ニュース」ではなく、教育の前提条件として整理しています。
こうした知見を、学校運営や教育設計、意思決定にどのように活かせるのかを考えたい方は、こちらのページもご覧ください。














いま、進路をめぐる“前提”そのものが
少しずつ形を変え始めています