「海外進学ラボ Weekly Picks」は、グローバル進学に関心のある中高生・保護者向けに、世界の教育ニュースを厳選してお届けしています。進路のヒントが“5分”で見つかる週刊特集です。
英国は留学生数の目標を手放し、教育輸出と質の高い国際展開へ。中国は共通試験導入で量から質への転換を明確にし、ギリシャは規制緩和で新たな国際教育拠点として浮上。
一方で、大学の評価指標や幼児期のスクリーン環境をめぐる研究は、「測れるもの」だけに依存する危うさを示しています。
進路選択の前提となる制度・評価・学習環境そのものが再設計される今、数字の先にある“学びの質”をどう見極めるかが、これからの進路判断のカギになりそうです。
英国、教育輸出額400億ポンドへ新たな国際教育戦略、数重視の留学生受け入れは転換
1月20日に英国政府は、2030年までに教育輸出額を400億ポンド規模に拡大する目標を含む国際教育戦略を発表しました。新戦略では、留学生数の具体的な目標値が定められず、留学生年間60万人という目標を掲げた前回の教育戦略(2019年3月)とは方向性が変化。
一方、50億ポンド上方修正された教育輸出については、トランスナショナル教育(TNE)やEdtech部門など直近の成長セクターを一層強化する方針が示されました。
英国高等教育界の要人Steve Smith氏は、インドに象徴される「英国TNEに対する需要急伸は、ローカル政府の関与度も大きい」と言及。
手頃な費用かつ高品質な高等教育機関が増えれば、優秀な若者の国外流出を防ぐメリットも生じるため、海外分校展開に積極的な英国とローカル政府の間では協力関係を築きやすい利害の一致もあるようです。
副編集長 城英国はソフトパワーを高めることで、TNE展開競争でより有利に立つシナリオも描いています
出典リンク
- THE PIE | UK unveils new international education strategy
- THE PIE | Where will growth come from in the UK’s international education strategy?
- 英国政府 | International Education Strategy: global potential, global growth
- ランカスターほか英国大学のインド進出が活発、高等教育需要は上昇の一途 10/18号
- 国際教育拠点への課題残すインド、2047年までに留学生110万人到達の可能性 1/17号
- イングランド留学生£925新課税、国際色の強い大学ほど高額な税負担に直面 12/3号
- イギリス|経済ニーズ vs 移民削減の綱引き(2026–2030 世界の留学生市場・大再編)
大学の意思決定「測定しやすい」参加データ依存に警鐘、評価指標としての妥当性に疑問
華中科技大学の新たな研究論文によると、ログイン情報、授業出席率、ページビューを含むデータトラッキングに依存した大学側の意思決定は、複数の課題に直面する可能性が指摘されました。
具体的には、一連の参加データ偏重により、オフラインのピアラーニング(対話学習)、批判的内省などトラッキングが困難な学習活動に専念する学生が可視化されません。また、データ上は高評価とみなされる学生が、学習目的ではなく「関わっているように見せたい」という動機に基づいている可能性も排除できないでしょう。
このように論文では、「学習活動の一部しか捉えない参加データが、学生の誤った全体像を映し出すリスク」を強調するとともに、「教育者側も表層的な成果になびいてしまう可能性」を危惧しています。



マーケティングなどエンゲージメントデータが最優先される分野も一部ありますが、本質的に対面で関わり合う教育にはより交流ベースの価値判断が相応しいでしょう
出典リンク
- The Times Higher Education | Tracking student engagement data ‘complex and contested’
- Studies in Higher Education | The challenge of generating meaningful participation data: a critical examination of metrics, meaning, and power in higher education
ギリシャ高等教育、法改正により民間資本&海外分校の参入加速、将来性高い諸条件揃う
長年にわたり国公立大学のみが運営されてきたギリシャですが、2024年法改正で海外大学の分校設立が可能となり、ヨーク大学(英)など承認済み4校に続き、TNE教育の拡大を見据えた5大学が審査プロセスに入っています。
現状、ギリシャの高等教育で学ぶ留学生は全体の1%未満に過ぎず、国内需要に対して都市圏大学は定員不足が顕在化しているため、多用な国籍構成を掲げた入学枠が追加されることは国内外の学生にとって好影響が広がるでしょう。
ギリシャ高等教育の公的機関「Study in Greece」がまとめた共同報告書は、「バルカン半島・中東など国際教育ニーズの高いエリアに物理的に近く、授業料や家賃が手頃である点も費用対効果にシビアな中間層に響く」とギリシャの優位性を分析しています。



好立地にありながら、やや保守的・一元的な慣行が優先されてきたギリシャ高等教育。近年の相次ぐ規制緩和によって重大な転換期が訪れそうです
出典リンク
- THE PIE | Greece poised for international student boom after TNE law change
- THE PIE | Four int’l unis to launch in Greece under new education rules
- MSM Unify | Greece 2025: Europe’s Emerging Destination for South & Southeast Asian Students (White Paper)
中国、留学生向け大学共通試験を2028年までに必須化、高等教育の量→質シフトを象徴
2025年9月、中国は留学生向けの大学入学共通試験「CSCA(China Scholastic Competency Assessment)」を正式に制定。2026年以降は中国政府奨学金応募者に限り受験が必須化され、2028年には、国外からの学士課程(bachelor degree)志願者全員にCSCA受験が義務付けられる予定です。
香港大学のPostiglione名誉教授は「中国ではあらゆる分野で品質を重んじる意識が高まっており、高等教育も例外ではない」と言及。
試験科目には、専門中国語、数学、物理、化学がありますが、なかでも数学が出願分野を問わず必修科目に定められています。
専門中国語は完全な英語の学位課程に進む場合は免除扱いになり、物理と化学は主に理系分野志願者が選択式で受験することになりそうです。



優秀な学生を引き付ける一大拠点を目指し、中国学位の権威性を強化していく狙いもあるようです
出典リンク
- The Times Higher Education | International education risk ratings revised again in Australia
- CUCAS | CSCA Exam: 2026 Complete China Admission Guide for New Students
英国調査、2歳児のスクリーンタイムは1日2時間超、過度依存は言語発達阻む可能性も
英国教育省が委託した最新調査によると、2歳児(2023年10月~2024年2月間)の98%が日常的にテレビやデジタルコンテンツに接し、そのスクリーンタイムは平均127分/日に達することが明らかになりました。
また、2歳児の言語発達状況を調べたところ、スクリーンタイムが最短のグループ(1日平均44分)が34語中平均22語を発話したのに対して、最長時間グループ(1日平均5時間以上)は発話単語数が平均18語にとどまったことが判明。
さらに、情緒面や行動面の問題が示唆された2歳児割合は、スクリーンタイム最短層の17%に対して、5時間以上のグループは39%まで増加するという調査結果が導かれました。
現段階では、スクリーンタイムと言語発達等の因果関係の証明には至りませんが、より多面的な要素も絡めた追加調査も実施される見通しです。



過剰なスクリーンタイムが、特定の家庭環境や経済的状況(原因)の結果として表れている可能性も考えられます
出典リンク
- The Guardian | Excessive screen time could limit vocabulary of toddlers, experts warn
- Department for Education (UK) | Children of the 2020s: home learning environment and screen time at age 2 — research brief
【教育関係者のみなさまへ】
世界の変化を、教育のチャンスに変えるために。
Weekly Picks では、教育政策、評価制度、AI、留学生市場など、世界の学びをめぐる変化を「ニュース」ではなく、教育の前提条件として整理しています。
こうした知見を、学校運営や教育設計、意思決定にどのように活かせるのかを考えたい方は、こちらのページもご覧ください。














いま、進路をめぐる“前提”そのものが
少しずつ形を変え始めています