マレーシアインターナショナルスクール | IBスクールで学ぶこととは?
マレーシアよりこんにちは!
今回は、息子が通うインターナショナルスクールの授業内容についてご紹介します。
この学校の小学部では、「国際バカロレア」(IB)の初等教育プログラム「PYP」(プライマリー・イヤーズ・プログラム)を採用しています。
息子は、幼稚園の「年長」に当たる6才の夏に、「小学2年生」として入学しました(この学校は8月に新学年がスタート。8月時点で5才だと小学1年生になります)。
6才の子は、IBの学校でいったい何を学ぶのでしょう?
マレーシアインターナショナルスクール |「探究」の時間が毎日2コマ
時間割を見ると、まず目に付くのが「Unit of Inquiry (UOI)」という科目。
日本語に訳せば、「探究の単元」。なんだか抽象的で、よくわからない。これが毎日ほぼ2コマ=45分×2あります。
日本の小学校の同学年では、時間割には「国語」がたくさんあります。国語をしっかり学び始める時期に、「探究」という、なんとなくぼんやりとした印象の科目を毎日やる。
これが吉と出るのか、はたまた凶と出るのか? 「UOI」という教科を本人が理解できて、積極的に取り組めるのかどうか、やや心配でした。
「探究=Inquiry」というのは、IBの基本理念のひとつです。
「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する。探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的とする」
これが、IBの使命とされていて、IBが理想とする学習者象の筆頭に挙げられているのも、「Inquirer=探究する人」です。
マレーシアインターナショナルスクール | 教科の枠を超えたテーマ
一見わかりにくい「探究の単元」には、2〜3ヵ月ごとに「Central Idea」(中心的アイデア)と呼ばれる「お題」が設定されていました。
教科書はありません。
先生が教えるわけでもなく、生徒たちが自主的に「お題」についてのアイデアをふくらませていき、先生がそれをサポートする。最後には、締めくくりのプレゼンテーションを行なう——というのがひとつのサイクルになっているようです。
最初に取り組んだお題は「パフォーマーは情報を伝えたり、観客を楽しませるために、自分自身を表現する」。
これまた、難しそう! でも、実際にやることは楽しそうでした。
子どもたちは、新しいクラスのみんなに自己紹介をするために、家から5つ「自分らしいもの」を持ち寄って、クラスメイトに見せました。
そして、自分がどんな人間なのかを周囲に知ってもらうには、どうしたらよいのか? アイデアを出し合ったようです。自分らしく歌う、踊る、しゃべる、描く、書く…などなど。
この時期は、UOIだけでなく、音楽・美術・体育・言語などの時間も「私たちはどのように自分を表現するのか」という共通の土台で進められていきました。
たとえば、音楽や美術では、さまざまなアーティストの表現方法を見比べ、聴き比べて、受け取る印象について話し合ったり、体育では「自分らしいジャンプ」をしてみたり。
IBの初等教育プログラム「PYP」には、このように教科の枠を超えた土台となるテーマが6つあるそうです。
PYPの教科を超えたテーマ
- 私たちは誰なのか— Who We Are
- 私たちはどのような場所と時代にいるのか — Where We Are in Place and Time
- 私たちはどのように自分を表現するのか — How We Express Ourselves
- 世界はどのような仕組みになっているのか — How the World Works
- 私たちは自分たちをどう組織しているのか — How We Organize Ourselves
- この地球を共有するということ — Sharing the Planet
マレーシアインターナショナルスクール | 一冊の絵本を選んで発表
多彩なパフォーマンスについて学んだ後、このUOIの締めくくりとして、一冊ずつ図書室から好きな本を選んで発表しました。
息子が選んだのは、幼い頃から好きな「はらぺこあおむし」。
発表方法は自由で、朗読してもよいし、歌やダンスにしてもOK。息子は、紙芝居のように1ページずつ絵を描いて、それを見せながら本を読むことにしました。
作業は学校だけでは終わらず、家でも絵を描きました。
「ひらめいた!」のが、カラフルな木の棒を使って、コラージュでちょうちょを表現すること。
教室には自由に使える素材がいろいろと置いてあり、この棒でちょうちょを作りたい!と、最初に思いついたようです。
このひらめきを先生にほめてもらえたのが嬉しくて、その後のやる気につながったようでした。
こうして、最初のUOIに楽しく取り組むことができ、親としても、漠然としたイメージしか浮かばなかった「探究」というキーワードについて、なんとなく理解ができてきました。
東京生まれ。2011年より約4年間シンガポールに滞在、2015年1月よりクアラルンプール在住。翻訳者・ライター。共訳書に「メディカル ヨガ 〜ヨガの処方箋〜」(バベルプレス)、書籍「アンコールの神々 BAYON」(小学館)、WEBサイト「シンガポール経済新聞」、「シンガポールナビ」、マレーシア在住日本人向けフリーマガジン「Weekly MTown」などに記事を寄稿。グローバルエデュ 姉妹サイト「旅キッズ」で「てくてくシンガポール」を連載。