欧州で新型コロナウイルス感染が拡大した当初、その中心地でもあったイタリア。いまも非常事態宣言が続くイタリアでの留学はどうなっているのかーーUWCイタリア校に留学している庄山桃子さんが、現地での生活をレポートしてくれました
カレッジにより異なる、UWCの留学状況
イタリア北東部トリエステ近郊のドゥイーノにある「UWCアドリアティック・カレッジ United World College of the Adriatic」1年生の庄山桃子です。今回は、パンデミックのなかで留学できている数少ないひとりとして、ぜひ私の留学についてお伝えできればと思います。
私たちUWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)奨学生は、日本の高校2年生と3年生に相当する2年間、世界に18校ある全寮制インターナショナルスクールで学びます。
UWCでも留学状況はカレッジによって大きく異なり、たとえば中国のカレッジは留学生のビザ取得が困難なため、日本から派遣される予定だった新入生は他の国のカレッジにトランスファーしています。
前年度はIB最終試験も中止に
私はこの9月から1年生となったので、それ以前の状況は人から聞いた話となりますが、イタリアで新型コロナウイルス感染状況が最悪だった3月、アドリアティック・カレッジもロックダウンとなったそうです。
当初は2週間の予定だったので、ヨーロッパからの生徒は自宅に戻り、日本も含むそれ以外の出身の生徒もヨーロッパの同級生の家に滞在していました。
しかし、感染状況が悪化するにつれ、休校期間が1ヵ月、2ヵ月と延びていき、多くの生徒がヨーロッパから帰国することになりました。
結局、学校に戻ることができずにアカデミックイヤーが終了し、例年ならば2年生が5月に受けるIBディプロマプログラム(DP)の最終試験も中止となりました。
何らかの理由で帰国することができなかった生徒は、学校のあるドゥイーノに夏休み期間も含め滞在していたそうです。
2週間のホテル隔離後、寮生活がスタート
新学期は9月にはじまりましたが、イタリアでも入国時には自主隔離が必要なため、ほとんどの生徒が8月末にイタリアに到着。
「シェンゲン協定」(ヨーロッパの国々において検査なしで国境を越えるのを許可する取り決め)により、2週間の隔離が不要な生徒は5日間、それ以外の地域からの生徒は2週間のホテルでの隔離後、すべての生徒とスタッフがPCR検査を受け、寮生活がスタート。ただ、出身国によってはビザ取得や渡航に苦労した生徒もいて、数週間遅れて到着した人も10数名いました。
寮は学校のあるドゥイーノという村に点在していて、平常時は寮の行き来に制限はありませんが、現在はほかの寮や部屋への出入りが禁止されています。
また、多くの場所でマスクの着用が義務づけられているほか、基本的にドゥイーノの外には出られないなど、多くの制限が課されています。
休校期間中は全員がオンラインで授業を受けていて、今学期もはじめのほうはまだ到着していない生徒のためにzoomで授業を中継していました。教室では、いまも一定の距離を保たなければならないなどの制限があり、少し息苦しく感じることもあります。
制限はあるものの、UWC生活は充実
コロナの感染状況は不透明な点が多いですが、私はこの冬休みはイタリアもしくは近隣の国に残ることがほぼ確実です。帰国時の隔離措置などのある国の生徒は同じような状況が予想されており、学校からもそのようにアナウンスされています。
コロナ禍に留学することとなり、ビザをはじめさまざまな不安がありましたが、渡航でき、このような留学生活が実現できていることは本当にありがたいと思っています。
このレポートでは、コロナによる生活面での制限など暗い面に焦点を当ててしまいましたが、寮生活やほかの生徒との交流など、UWCならではの生活の大半は経験できています。
この状況で留学を計画するのは、とても難しいかと思います。でも、世界の他の場と一体になることが難しい時期だからこそ、留学という経験を社会に還元できるのではないかと思っています。