中学・高校私たちはどう生きるか

【私たちはどう生きるか04】人生の価値観や情熱を育める「わたしに相性のいい大学」の選び方


みなさんはどのようにして大学を選びますか? また、わが子はどのように大学を選ぶべきだと考えていますか? 「やりたいこと」以外に決め手になるのは、ランキング? それともブランド力? いま一度、大学とはなんのためにあるのか、私たちはなんのために大学に行くのかを考えていきましょう

なにを基準に大学を選ぶべきでしょうか

最近は古典と言語を学ぶことに(中途半端に)ハマっていますが、大学でなにを学ぶのかはっきり決まっていません。

金銭面などを抜きにして考えるときに、なにを基準に大学を選ぶべきかの助言をいただきたいです(海外大学にもわりと魅力を感じています)

アメさん(東京都、高3)

自分が成長できる「文化」を有する大学を選ぼう

高校生までの選択は、周囲の環境に形成される部分が大きいものです。部活の選択や友人との付き合いなど、日常生活での選択は自分を形作るうえで重要ではありますが、自分を取り巻く環境そのものを選択する機会は、一般的にあまり与えられていません。

大学選びでは、環境自体を意識的・主体的に選べる、大きな裁量が受験生自身に与えられます。この機会にしっかりと向き合うことで、自分の人生をどのように形作るかを考える習慣を身につける、いいきっかけとなります。

しかし、どこから考えはじめればいいでしょう? まずは、つぎのシンプルな問いに向き合ってみます。

私は大学に何を求めているのだろう?

当たり前の考えや選択ばかりが頭に浮かんで、自分が大学に求めているものが一向にわからない。これが多くの人の正直な反応ではないかと思います。

それでは問いの主体である「私」は脇において、問いの対象である「大学」を考えてみましょう。大学に関して、日本ではつぎのような意見が一般的かもしれません。

勉強したいことがわからなければ、テストの点数とランキング以外に何の決め手があるのか? つまりは大学の名前が重要なのでは?

ここで日本の外を見てみましょう。アメリカを例にすると、トップレベルとされる大学は40校以上ありますが、テストの点数や高校の成績といった学業的な指標では、じつはどの大学もそれほど大差はありません。

では、各大学の違いとはなにか?

それぞれの大学をユニークなものとしているのは唯ひとつ、大学の「文化」です。文化とは、各大学で特徴的な価値観や伝統、これを求めて集まる人々の集団が生み出す交流です。この文化こそ、大学選びで最重視されるべき点だと私は考えます。

なぜ、文化がそれほど重要なのか?

文化とは、「人的資源」(教授や学生)と「物的資源」(大学の研究施設や芸術的資料など)を束ねる場であり、各大学は独自の手法でこの場を提供します。

材料を揃えても必要な条件が整わなければ反応の起きない科学実験のように、大学にしかできないこととは、他にはない知識・芸術・人々の交流のための場を提供することです。これらの交流を通して、学生はそれまで知らなかった知的・社会的・芸術的その他の分野を発見し、元々の興味関心を深めることができます。

理論を学んだり、スキルを得るだけなら、大学に行く必要はないでしょう。限定された環境で育ってきた学生たちを、内面的にも外的にもより広く深い世界につなげるための触媒が「大学の文化」なのです。

「大学」は学生の価値観や情熱を育む場

大学選びとは「相性」です。どれだけ素晴らしい文化でも、すべての学生に合うことは決してありません。

たとえるならば、文化は「土」で、学生は「種」です。それぞれの種は異なり、成長するために適した土を必要とします。相性のよくない土に種を植えてしまうと、芽を出さないことすらあります。

特徴的な文化のある大学では、学生は大きなひとつの価値観の傘の下に集まります。異なる背景や関心を持ちながらも、根底では共通した態度で世界に向き合う学生たちは、互いの交流から自分の価値観や情熱を深め、強め合うことができます。このような交流は、学生と大学の文化が相性のいい場合に起こります。そして大学での交流は卒業後も長く続き、いい形で互いを刺激します。

「価値観や情熱は幼いころから自然にあるもので、わざわざ育てる必要はない」「専門的な知識や職業的能力を大学では重視するべき」という意見があるかもしれません。しかし、価値観や情熱は自然である以上に、意識的に育てなければ確立されるものではありません。また、大学を出てから生きていくうえで、これがもっとも重要な基盤であると私は考えています。

専門的な知識や職業的スキルそのものは、単なる経済的な価値以上の意味がありません。これらをどのように用いるかが人生で意味を生み出すのであり、価値観や情熱こそが意味の決め手になるのです。そして、人の価値観や情熱は、適した文化がなければ発見または育てるのは困難です。

このための数少ない場所が大学であり、だからこそ、学生と文化の相性が大学選びのカギとなるのです。

大学を構成する要素には、教授・学生・カリキュラム・課外活動・施設や資源・地理的条件などがあり、これらの構成要素をひとつに束ねる場が大学の文化です。

大学ごとに異なる「文化」に注目してみよう

具体例で考えてみましょう。

アメリカの大学の情報を調べるのに便利な、「NICHE」というウェブサイトがあります。大学の基本情報とともに、学生が自分たちの大学をいくつかの形容詞で表したリストも見ることができます。

アメリカでの在学時には、母校や他のさまざまな大学の学生たちと知り合ってきましたが、これらの描写は正確ですし、なかには実情に近すぎて笑ってしまうほどのものもあります。

まず、大学の文化を端的に表した例として、学業レベルが近いとされるふたつの大学を比較してみます。カリフォルニア州の「クレアモント・マケナ大学 Claremont McKenna College」と、コネチカット州の「ウェズリアン大学 Wesleyan University」。

いずれも、名門リベラルアーツ・カレッジとして知られていますが、大学を形容するキーワードがこれほど違うのも驚きますね。

©️ Claremont McKenna College

Claremont McKenna College

  • Econ Majors(経済学専攻)
  • Go getters(成功を求める野心家)
  • Future consultant hoping to get rich(金持ちを目指すコンサルの卵)
©️ Wesleyan University

Wesleyan University

  • Passionate and Creative(情熱的でクリエイティブ)
  • Weird and Diverse(多様な変人)
  • Boring and Narcissistic, go Wes!(退屈なナルシスト、ゴーウェス!)

このように、リベラルアーツ・カレッジという客観的要素が似ていても、大学の文化はまったく異なります。

エッセイのお題から大学との「相性」を考える

ここで、相性がいい大学を探そうとはやる気持ちをおさえて、問いの主体である「私」を考え直してみましょう。適した土壌を見つけるためには、自分がどんな種であるのかを知らなければなりません。自分のことなんかわからないという人もいるかもしれません。

しかし、心配することはありません。意識していてもしていなくても、20年弱の人生で、自分について知るための材料は既にたくさんあるはずです。過去を振り返ってみましょう。高校、中学、小学校、それ以前でも、時間は余るほどあります。

考え始めるためのきっかけが必要なので、アメリカの大学受験のエッセイのお題を利用しましょう。

実際にアメリカの大学を受験してもしなくとも、大学そして人生から私たちが求めるものを知るために、エッセイのお題はとても役に立ちます。むしろ、アメリカの大学を受験しない人のほうが、正直にお題に向き合えるかもしれません(合格だけが目的となって、せっかく自分に向き合える機会なのに、見栄えのいい答えを作り上げてしまう生徒がどれだけいることか)。

もちろん、大学受験なので、ある程度の脚色は必要かもしれません。しかし、他人だけでなく自分までをも偽るのは、このプロセスの目的を完全に取り違えることになります。

それはさておき、下にいくつかのお題を紹介します。エッセイのお題だけですでに各大学の文化が垣間見えることでしょう。

アメリカの大学を受験する場合は、エッセイのお題は大学の文化を理解するのにもいい機会となります。どのような学生が求められているのか、そして自分自身がそれらの学生のひとりとなりたいのかーーこれらをエッセイのお題を通して理解を深めることができます。

下のお題からいくつかを選び、考えてみてください。スマホは家において、図書館やカフェなどの静かな場所で、問いに真剣に向き合って書いてみることです。自分がどういう人間なのか、大学に何を求めているのかを知る、とてもいい機会になることでしょう。

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ノートルダム大学 University of Notre Dame

“The founder of the Congregation of Holy Cross described education as ‘the art of helping young people to completeness.’ How are you incomplete?”

The Congregation of Holy Cross(カトリック教会の修道会)の創始者は「若者を完全な状態に導く」のが教育だと定義しました。あなたはどのように不完全なのでしょうか?

シカゴ大学 University of Chicago

Why are you here and not somewhere else?

他のどこでもなく、今の場所にいるのはなぜですか?

ディープ・スプリングス大学 Deep Springs College

Tell us about a time you felt insignificant in the face of some aspect of the world. How did you engage with this insignificance?

世の中のある側面において、自分が全く小さな存在だと感じた時のことを教えてください。そのときに感じた小ささと、あなたはどのように向き合いましたか?

What are the strengths and weaknesses of your upbringing? How have they shaped and limited who you are now? How have they influenced what you want to do in the future?

あなたが生まれ育った環境の長所、短所はなんですか?この環境がどのようにあなたという人間を形作り、また、あなたの可能性を限定してきましたか?将来にあなたがやりたいことは、どのように生まれ育った環境に影響されていますか?

リード大学 Reed College

For one week at the end of January, Reed students upend the traditional classroom hierarchy and teach classes about any topic they love, academic or otherwise. This week is known as Paideia after the Greek term signifying “education” – the complete education of mind, body and spirit. What would you teach that would contribute to the Reed community?

1月最後の週に、教授と学生という垣根をなくして、学生が好きな科目の授業を受け持つという伝統が「Reed College 」にはあります。ギリシャ語で「教育」を意味する言葉になぞって、この週は「Paideia」と呼ばれています。精神と身体、そして魂の完全を目指す教育です。どのような授業を教えて、「Reed College」のコミュニティに貢献しますか?

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以上がエッセイのお題の例です。


もっとアメリカの大学について知りたいですか? 青木さんが、本当に価値ある大学をピックアップして「本音のアメリカ大学案内」にまとめてくれました。

青木 光太郎

インド各地を放浪する修行者。日本で生まれて高校まで日本で育つ。フリーマン奨学金を受けて、大学はアメリカのコネチカット州にあるウェズリアン大学で西洋哲学、特にスピノザとハイデガーを学ぶ。2016年に大学卒業後はグローバル投資会社からバーの皿洗いまで広く社会経験を積む。2018年春に日本を離れてアジアとヨーロッパの各地を訪れ、フランスのキリスト教の共同体「テゼ」にてある気づきを得る。現在はインドを放浪しながら、各地の師からヒンズー教の密教的側面を学んでいる。宗教や哲学の実践を通して人間の内面に関する真実を知り、現代の社会、教育、知識のあり方を問うていくのを使命とする。職業は翻訳家と文筆家。本サイトにて2017年〜18年にかけて「リベラルアーツ入門講座」を連載。

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