海外大学の受験ってどう進めていけばいいの?
まずは、エリアごとに必要となる英語力や難易度、出願方法などを正しく把握することが大切です
今回は、進学先を6つのエリアに分類し、受験や出願手続きに関するエリアごとの特徴を紹介していきます。
海外大学進学 | エリアごとの出願方法&流れを知ろう
6つのエリア
- アメリカ
- カナダ
- イギリス・オーストラリア
- シンガポール・香港
- ヨーロッパ
- 中東
エリアごとに紹介していきますが、かならず大学のサイトでも最新情報を確認してくださいね
海外大学進学 | ①アメリカの大学の出願方法
まずは、日本からの多くの学生が進学するアメリカの大学から。
9月入学が基本となるアメリカの大学は、出願手続きにはおもに「Common Application 」という共通のオンライン願書を用います。
一般出願(Regular Decision)では、1月~2月ごろが応募期日となりますが、ほとんどのアメリカの大学では、早期出願期間が別枠で設けられているのが特徴です。
この制度は、「Early Decision」や「Early Action」と呼ばれ、いずれも早期(入学前年10月~11月)に出願する点は共通ですが、出願者に適用される制約事項がそれぞれ異なります
Early Decisionの場合、合格したらかならずその大学に入学する必要があり、Early Actionは他大との併願も可能で合格時の入学義務もありません。
どちらの方法も、早めに出願書類を揃えるなど大変な一面はありますが、大学からの奨学金が出やすくなる、合格可能性が高まるなどのメリットが期待できます。
ただし、100パーセントそのような恩恵があるとは限らないので、一般出願とどのような違いがあるかは、各大学が定める入試要項をよく確認しましょう。
アメリカの大学出願時に必要となる書類
- 英語能力試験のスコア(TOEFL iBTなど)
- アメリカの大学進学適性試験のスコア(SATやACTなど)
- 高校卒業証明書および成績証明書
- エッセイ
- 課外活動経験
- 推薦状(大学による)
エッセイを書く練習やTOEFLスコアの取得は、できる限り早い段階から取り組むのがおすすめです。
また、アメリカの大学は課外活動実績を重視することで知られており、自己アピールにつながる活動経験は何かしら願書に記載しておく必要があります。
ただし、かならずしも大々的な受賞実績や成功体験である必要はなく、一連の活動で「何を学んだか」「どう成長したか」を大学側に伝えることがもっとも大切です
英語試験については、IELTSやDuolingo English Testのスコアが認められるケースも増えていますが、現状では、アメリカの大学進学のため幅広い選択肢を確保するにはTOEFL iBTで高得点を目指すのが最適です。
また、近年はSATなどの統一試験を任意提出とするケースも見られるため、興味のある大学の規定は早い段階で確認しておきましょう。
海外大学進学 | ②カナダの大学の出願方法
カナダの大学も9月入学がほとんどで、具体的な出願時期は大学により異なっています。
早い大学は入学前年の9月から願書受付が始まり、遅くとも入学前年の12月中に出願書類を準備しておくのが無難でしょう。
カナダの大学出願時に必要となる書類
- 英語能力試験のスコア(TOEFL iBTまたはIELTS)
- 高校の卒業証明書および成績証明書
- エッセイや課外活動(大学による)
カナダの大学入試では、必要な提出書類の種類は原則として多くはありません。そのため、他のエリアより出願の手間はかかりませんが、ひとつ1つの提出書類の重要性は大きくなると認識すべきでしょう。
また、出願に使用できる英語試験についても、TOEFLが主流を占めるアメリカとは異なり、ほとんどの大学でTOEFLとIELTSの両方が提出スコアとして認められます。
そのため、カナダの大学が第一志望の場合は、自分なりに得点しやすい方の試験対策に集中して取り組みましょう。
海外大学進学 | ③イギリス・オーストラリアの出願方法
イギリスとオーストラリアは、広義には英国型の教育システムを基盤としており、イギリスとオーストラリアにニュージーランドも含め、大学では3年制を採用しています。
これは、日本人学生にとって全員が短期間で大学を卒業できるという意味ではありません。
日本の高校卒業資格では、原則として大学の入学基準を満たせず、必要な学力を補うためファウンデーションコース(大学進学準備コース)を約1年間受講するケースが多いです
ただし、国際バカロレアDP資格者や、大学の入学要件を高い水準で満たす場合は、直接大学への進学が認められる可能性もあります。
イギリスの大学に出願するには、全大学共通のオンライン出願サイト「UCAS」を通じて手続きします。
通常、9月~10月に開始するイギリスの大学は、入学前年の9月頃から願書受付が始まり、多くの大学(学士課程)では入学年の1月中旬に提出締切日が定められています。
イギリスの大学(ファウンデーションコース)出願時に必要となる書類
- 英語能力試験のスコア(IELTSやTOEFL)
- 高校卒業証明書および成績証明書
- Personal Statementの作成(エッセイ・課外活動に相当)
- 推薦状1通
英語試験のスコアは、IELTSとTOEFLともに提出可能ですが、大学に限らずさまざまな機関に向けた提出物ではIELTSが指定されるのが一般的です。
明らかにTOEFLが得意など特別な事情がなければ、IELTS中心に対策を進めるのが無難でしょう。
Personal Statementは、イギリスの大学出願において重要性の高い書類で、自身の興味関心や学生生活で一貫して取り組んだ活動、大学での学びを将来の目標にどう活かすかなどを最大4000文字にまとめる必要があります。
なお、イギリスの大学出願は、UCASを通じて最大5つの大学(学部)までしか申請できず、併願先にはすべて同一内容のPersonal Statementが送られるので注意しましょう
オーストラリアの大学は、入学時期を2月か7月に定める2学期制を採用するケースが多く、ファウンデーションコースもほぼ同時期にスタートします。
そのため、一般的には夏入学を想定し、入学前年の9月~入学年の1月を目途に出願手続きを進めるのがおすすめです。
オーストラリアの大学(ファウンデーションコース)出願時に必要となる書類
- 英語能力試験のスコア(主にIELTS)
- 高校の卒業証明書および成績証明書
オーストラリアの大学は、エッセイや推薦状が求められるケースは少なく、総じて出願しやすいというメリットがあります。
英語試験は、TOEFL iBTも広く採用されていますが、オーストラリアを第1志望に据えるなら、IELTSを取得しておいた方がより可能性は広がるでしょう。
また、出願時に大学の規定スコアを満たせなくても、語学学校やファウンデーションコース経由で大学進学できる「条件付き合格(コンディショナルオファー)」が認められる場合もあります。
海外大学進学 | ④シンガポール・香港の出願方法
シンガポールと香港は、ともに英語を主要言語とするアジアトップクラスの大学がひしめくエリアとして知られています。
2学期制を採用する大学が多く、新年度は7月~9月に開始するケースが一般的です。
出願時期は大学や学部によって開きがありますが、おおまかに入学前年の10月~入学年の3月ごろに出願手続きを行います。
共通の出願サイトではなく、各大学のサイトからオンライン出願が可能です。
シンガポール・香港の大学出願時に必要となる書類
- 英語能力試験のスコア(TOEFL iBTやIELTS)
- SATやACTなど大学適性試験のスコア(IBDPやA-Level資格で代用可能なケースあり)
- 高校の卒業証明書および成績証明書
- 課外活動実績(必須ではないものの、推奨されるケースが目立つ)
- 推薦状(大学による)
複数の資格や試験スコアが出願要件に定められ、カナダやオーストラリアよりは準備すべき提出書類が多い印象を受けます。
同時に、ある条件のクリアが困難でも、いくつかの代替要件を模索することで出願への道が開ける可能性があります。そのため、大学や学部が独自に定めている条件を詳しく確認することが重要です。
海外大学進学 | ⑤ヨーロッパの出願方法
ヨーロッパでは、英語を主要言語として学べるEU圏の大学の出願事情をまとめます。
EU圏では、英語を母国語としないエリアが多いですが、とくに北欧・オランダ・ドイツでは、英語で授業が行われる大学や学部学科も少なくありません。
さらに、認知度は低いですが、ハンガリー・ブルガリアといった東欧諸国、リトアニア・エストニアなどのバルト三国でも全面的に英語で学べる環境が用意されています。
EU圏の大学は、秋と春の2学期制を採用する例が多く、オランダ・ドイツ・フランス・デンマークは11月~1月、ノルウェー・フィンランドは12月~3月、スウエーデンは10月中旬~1月中旬を目安に出願手続きを行います。
英語を使用するオランダの大学出願に必要な書類
- 英語の資格試験のスコア(IELTSやTOEFL iBT)
- 高校の卒業証明書および成績証明書
- 大学1年時の成績証明書(オランダは3年制大学のため提出を求められるケースが多い)
- 国際バカロレア資格(直接進学できる可能性が上がる)
- 志望動機書(Motivation Letter)
- 履歴書(テンプレート利用可)
- 数学の基礎テスト受験や数学力証明(該当学部・コースのみ)
オランダの大学に出願する際は、オンライン出願システム「studielink」を通じて一括手続き(最大3校)が可能です。
日本の高校卒業資格だけでは大半がファウンデーションコースに進むいっぽう、国際バカロレア資格を有していれば、直接3年制大学に進学できる可能性があります。
上記のとおり、オランダでは比較的多数の提出書類が求められますが、なかでもMotivation Letter(自己PR目的のエッセイ)のクオリティが評価に大きく影響すると言われています。
海外大学進学 | ⑥中東の出願方法
ドバイを中心に経済面で成長著しい中東エリアは、グローバル教育の場としても吸引力を発揮し、世界各地から意欲ある優秀な学生が集っています。
出願プロセスは大学ごとに一様ではありませんが、基本的にはアメリカの大学と同じように、12月~1月頃が出願期日に定められるケースが多いです。
ただし、イスラエルの大学の場合は、約3~4ヵ月出願手続きの時期が遅い傾向にあります。
中東エリアの大学出願時に必要となる書類
- 英語試験のスコア(TOEFL iBTやIELTS)
- SATやACTなどの大学適性試験スコア(大学による)
- 高校の卒業証明書および成績証明書
- エッセイや推薦状(大学による)
中東の大学事情として、アメリカやイギリスの名門校が、教育特区に指定されたアブダビやドバイに進出したケースが目立っています(ニューヨーク大学アブダビ、ミドルセックス大学ドバイなど)。
そのため、母体が米国教育か英国教育かによって、出願時に求められる書類にもその違いが反映されるようです。
海外大学進学 | 必要となる英語力は?
①アメリカ
大学数が圧倒的に多いアメリカの場合、どのレベルを目指すかによって、入学のために必要な英語力水準が大きく異なります。
アメリカの4年制大学入学に必要な目安スコア
- TOEFL iBT 60~80
- IELTS 5.5~6.5
アメリカのトップ大学進学を目指す場合
- TOEFL iBT 90~100以上
- IELTS 7.0以上
②カナダ
カナダの大学進学に求められる英語力水準は、極端に高くはないものの、低めに設定している大学も少ないという状況です。
カナダの大学進学に必要な目安スコア
- IELTS 6.0~6.5
- TOEFL iBT 80~90
③イギリス・オーストラリア
イギリスも、オクスフォード大学やケンブリッジ大学などの難関大学と標準的なレベルの大学を比べると、アメリカほどではないものの要求される英語力の基準に開きがあります。
イギリスの大学入学に必要な目安スコア
- IELTS 6.0~6.5
- TOEFL iBT 80以上
イギリスのトップ大学進学を目指す場合
- IELTS 7.0以上
- TOEFL iBT 100以上
④オーストラリア
日本の高校卒業後はファウンデーションコースに進むケースが多いため、IELTSなどの得点があまり高くない状況でも留学のチャンスが広がっています。
オーストラリアのファウンデーションコース進学に必要な目安スコア
- IELTS 5.5以上
- TOEFL iBT 60~70
オーストラリアの大学進学に必要な目安スコア
- IELTS 6.0~6.5以上
- TOEFL iBT 80程度
⑤シンガポール・香港
シンガポールや香港には、アジア地域のなかでも特に世界的な評価を確立する大学が複数揃っています。そのため、英語力基準もかなり高いと想像されるかもしれませんが、アメリカやイギリスの上位大学並みの水準ほどは必要ありません。
シンガポール・香港のトップ大学進学に必要な目安スコア
- IELTS 6.0~6.5
- TOEFL iBT 85~95
⑥ヨーロッパ
ヨーロッパ圏では、日本での知名度は高くありませんが、西欧・東欧・北欧など幅広いな地域に英語で学べる大学や学科コースが揃っています。
なかでも、スペインや東欧の大学が定める英語力水準が相対的に低い傾向が見られます。
ヨーロッパ(EU圏)の大学進学に必要な目安スコア
- IELTS 5.5~6.5
- TOEFL iBT 70~90
⑥中東
中東の大学が求める英語力水準は、各大学によって設定にかなりばらつきがある印象です。
たとえば、ニューヨーク大学の系列校、ニューヨーク大学アブダビではアメリカ本国の入学審査と同等の英語力基準を採用しています。
どちらかといえば、古くから中東エリアに根差す有名大学より、米英から進出した系列校の方が英語力基準を高く設定している傾向が見られます。
中東の大学進学に必要な目安スコア
- IELTS 5.5~6.5
- TOEFL iBT 60~90
海外大学進学 | 求められる成績は?
海外大学に出願する際に、ほぼ100%の確立で提出を求められるのが高校在籍中の成績証明です。ここでは、海外大学進学を実現するために、どの程度の成績を取得すべきなのかをまとめていきます。
①アメリカ
アメリカの大学入試では、高校3年間の成績を4点満点のGPAに換算して提出するよう求められます。
アメリカの標準的なレベルの大学に入るには、GPA2.5~3.0が目安となり、上位の名門校を目指すのであればGPA3.5(90パーセント相当)に達していることが望ましいです。
②カナダ
カナダは出願書類の種類が少ないこともあり、他の国以上に高校成績(GPA)の重要性が高いと考えられています。
そのため、少なくともGPA3.0(85パーセント相当)以上が手堅く、さらに満点の4.0に近いほど合格可能性が高まると捉えましょう。
③イギリス・オーストラリア
イギリス・オーストラリアともに、ファウンデーションコースに進める程度の水準を考慮すると、高校の成績が5段階評価中2.5~3.0以上、直接大学に進学する場合は5段階評価中3.5~4.0以上の成績が目安となります。
④シンガポール・香港
シンガポールや香港の大学に出願する際、高校の成績は5段階評価中では4.0以上を満たしていると有望です。
アジアを代表する名門校、シンガポール国立大学の場合、合格者平均値は5段階中4.7を記録しており、高校時代に優秀な成績を収めた学生が多くを占めている状況が読み取れます。
⑤ヨーロッパ
ヨーロッパの大学では、高校在籍時の成績は国によって独自の指標を用いて評価するケースが目立ちます。
全体として、高校成績を重点的に評価する傾向があり、基本的に5段階中4以上を確保できていれば選択肢が広がるでしょう。
⑥中東
大学によって一律ではありませんが、全体としてGPA(4点満点)2.5~3.0以上の成績を最低ラインに定めるケースが多いです。
また、GPA1.0以上の出願を受け入れたうえで、GPA値のレンジごとに成績ポイントを加算して評価する例も見られます。
海外大学進学 | 難易度(偏差値)は?
日本の大学難易度を測る指標として偏差値がおなじみですが、じつは、海外大学入試においては偏差値が採用されていません。
なぜなら、アメリカの大学などは、エッセイや課外活動が評価の一定の比重を占め、偏差値だけで各大学の難易度を示すことができないからです。
確かに、TOEFL iBTなどの英語試験や統一試験(SAT/ACT)のスコアを提出するケースは多いですが、得点順に入学できるわけではなく、あくまで評価要素のひとつとして扱われます。
このように、偏差値では比較検討できませんが、大学を選ぶ指標として世界的な調査会社などが毎年発行する世界大学ランキングを参考にする学生は多いようです。
THEとQSが発表するランキングが有名で、入試難易度ではなく、各大学の実績や教育環境について多角的な要素からランク付けしています。
海外大学進学 | おすすめの国やエリアは?
海外大学の入学選考は、偏差値が採用されず、評価プロセスも国や大学によって異なるため、志願者タイプごとにおすすめできる選択肢を紹介します。
IELTSやTOEFLなどの得点が伸びない場合
出願時期が迫っているのに、英語能力試験のスコア取得が思うようにいかない場合は、ファウンデーションコースから留学を始められるオーストラリアがおすすめです。
オーストラリアのファウンデーションコースに入る場合は、高校の成績もそこまで高い水準を要求されないため、学力面に課題を抱える学生には出願しやすい条件が揃っています。
また、アメリカの大学進学はハードルが高い印象があるかもしれませんが、進学先を選ばなければTOEFLなどの得点が伸びなくても出願可能な大学もリサーチできます。
少ない手間で出願したい、海外大学を併願したい場合
海外大学に出願するには、大学が求める複数書類を正しく揃える必要があり、場合によってはエッセイや課外活動に関する対策も必要です。
その点、カナダとオーストラリアは、英語能力試験のスコアが出願要件を満たしていれば、おもに高校在籍時の成績証明を提出するだけで合否が決定します。
その他、大学独自のテスト受験を求められるわけではないので、追加的な時間や労力をかけずに、海外大学進学を実現できる可能性があります。
日本人が少ない環境を求めている、または許容できる場合
日本における知名度は低いものの、ヨーロッパの東欧や北欧エリア(とくにバルト三国)は英語試験スコアの要件が比較的緩い大学が目立ちます。
いずれも周囲にほとんど日本人がいない環境に身を置く可能性が高いですが、そうした希少性ゆえに、学生や講師が興味を持って接してくれるきっかけとなるケースも多いようです。