いま挑戦しているのは、地元・守山市に暮らす中学生と大人が守山の問題などについて話し合い、一緒に解決する場を作ること。これからの目標は、世界のどこに住んでいる子どもでも平等に教育を受けることができるようなプロジェクトを行うことです
環境問題を通じて自分にできることを考えた
2017年春に参加した「生物多様性研修in屋久島」は、これからを担う私たち子ども(中学生)が、これからの環境問題について考え、いま自分自身にできることを改めて見つめなおすことができる、そんなプログラムです。
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屋久島研修旅行を実施していた「中学生環境作文コンクール2016」は、2017年度以降新しいプログラムにリニューアルされています(新しいプログラムはこの記事の文末で紹介)。
このプログラムには、全国から作文を応募して選ばれた中学生36名とマレーシアからの中学生4名、計40名が参加し、交流を深めながら屋久島で行われました。
4日間の現地での研修を通して、屋久杉の森でのハイキングやアカウミガメが上陸する砂浜へ行き、世界自然遺産にも登録されている屋久島の自然を、自分の身体、そして心で感じました。また、屋久島の産業や伝統工芸品に触れる活動を通じて、自然とともに生きる人々のくらし、生物多様性について学びました。
川掃除は屋久島にもつながっていた
このプログラムに参加しようと考えた最初のきっかけは、私の身近にある川の問題について意識したことからです。
中学になって初めて通ることになった道には、1本の川がありました。ふとその川を覗いたとき、あちこちにレジ袋などのゴミが落ちていました。大量のゴミと無造作に生えた草、そして少しばかり流れるよどんだ水。
そのとき、初めて身近な川や環境の現状を知ることとなり、身近な問題に意識を向け、いま何ができるかを考えました。そして、私が行ったのは「川掃除」です。
1ヵ月に1度の川掃除を何度か繰り返すうち、多くの発見と疑問が溢れ、環境という大きなものを守るためには、多くの人が現状に目を向け、知ることからだと思い、コンクールのテーマである「豊かな自然を守るために、私ができること」(800〜1000字以内)についての作文を書きました。
それが「生物多様性研修in屋久島」につながったのです。
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私は、屋久島に行く前に川掃除についてレポートにまとめておきました。自分がなぜこのプログラムに参加することになったのか、このプログラムで何を学びたいのかを少しでも明確にするためです。
そのときは、あまりうまくまとめることができませんでしたが、研修に参加する目的の確認、そして自分の気持ちを固めるためのいい方法となり、屋久島での学びがより深くなりました。
自然と共存してきた歴史を知り、感じたこと
屋久島での研修は4日間でしたが、毎日、屋久島の自然を体感できるさまざまなプログラムが組み込まれており、とても充実したものとなりました。
4日間のスケジュールを簡単にまとめると、このようになります。
- 屋久島の概要や歴史と生物多様性についての学習
- ヤクスギランドでハイキング
- 大川の滝&西部林道&うみがめ館・いなか浜 見学
- グループ討論
屋久島の自然を肌と心で直接感じ、学んでいく。そんなプログラムを通じて、自然に対してより興味関心を持つことができました。
たとえば、「岳参り」について。岳参りとは、山岳信仰のひとつで、山岳の神秘的な崇高さから「神様の住む場所」として畏敬、崇拝するためのものです。集落の代表者が信仰の対象となる山に、年に2回(旧暦の5月と9月)お参りに行きます。
屋久島では、「前岳」「奥岳」(どちらかだけの場合もある)と呼ばれる、集落ごとに崇拝する山を決めています。しかし、いまは岳参りに行く人も少なく、廃れてきているのだそうです。
では、岳参りと生物多様性とは、どのような関係があるのでしょうか。それは、「自然を守る心」だと私は思います。岳参りが廃れ、山岳などの自然を敬う・大切にする心が薄まってしまえば、自然への意識も薄まってしまうのではないでしょうか。その地の歴史を知る、ということは自然の破壊を止めることにもつながるかもしれません。
圧倒的な自然の生命力から学んだこと
「ヤクスギランド」と呼ばれる広大な自然休養林でのハイキングでは、自然の生命力を目の当たりにしました。

1本の木が他の木にまきつき、絞め殺そうとしている光景。

切り倒された大木の切り株から新たに育ち始める木々。
人の手が加えられずとも、ひとりでにたくましく育つ植物。これらの光景を見て、「自然も生きているのだ、これまで強く生き残ってきたのだ」と実感しました。それはどれも人が手を加えたのはなく、植物自身が生きるためにそのような姿になっているのです。
屋久島の自然は、言葉では言い表せないほど神秘的で、美しいものでした。
今回の研修で、「屋久杉」というのは「樹齢1000年を超える杉」のことだと学びました。そして屋久杉のなかでも最大級の杉を指す「縄文杉」。見つかっている最大の縄文杉は推定7200歳、最低でも2170歳と言われています。
つまり、それらの木は発見されるまで、1000年以上もの長い年月を人の手が加えられることなく育ってきたということです。縄文杉を初めて発見した人々は、「その木が縄文時代から生きているのではないか」と思ったほどだそうです。
人の手が加わることなく、長い間生き続けている縄文杉。その様子を見ていると、自然を守るということも大切ですが、「自然がありのままの姿である間は自然を守る必要はない」という考えも湧いてきます。
人は生物の多様性と共存できているか
しかし、屋久島でこのような偉大な光景から一変する、残念な光景も目の当たりにしました。
「ウミガメ館」の前に広がる「いなか浜」での光景です。いなか浜には、時期が訪れるとウミガメが産卵をしに浜辺までやってきます。しかし、そこにはたくさんのゴミが落ちていました。ゴミは自然に大きな影響を与えてしまいます。
最近では、ウミガメがそのゴミを食べてしまって病気になることが増えてきているそうです。他にも、ウミガメの産卵や孵化の時期に観光客が浜に入り、ライトなどで照らしてしまうため、ウミガメの赤ちゃんがそこを海だと勘違いして迷ってしまい、最終的に死んでしまうということも頻繁にあるそうです。
偉大な自然の姿があるいっぽうで、人の手によって破壊されている自然があるーー生物多様性について学ぶなかで、そんなことも考えさせられました。
「破壊」したら「守る」ことの大切さ
この研修を通して私が考えた生物多様性とは、「人も自然の一部として、生きること」です。一見簡単そうに見えますが、実際には実行できていません。
たびたび起こる自然の破壊を止めること、そして人が自然の一部として生きるためにはどうすればいいのでしょうか。
私は「自然を破壊したぶんだけ自然を守ること」が、必要なのだと考えます。自然がありのままで生きているときは、生物はひとりでにたくましく育っていきます。しかし、ときには手を加えないといけないときもあるのです。
たとえば、いなか浜のケースは、人が手を加え、自然を「破壊」してしまったために起こりました。このような場合、手を加えて自然をもとの状態に戻す、「守る」ということをしなければなりません。自然を守ることは、人が破壊したときには、かならず行わなければならないのです。
恩恵を受けたぶんだけ返すーーその精神が大切なのではないでしょうか。そして、その形が人と自然の本来の在り方なのだと思います。
* * *
これからは、学んだことをそのままにしておくのではなく、より多くの人に伝え、そして、まずは私が住む滋賀県の琵琶湖の環境問題をなくしていけるように活動をつづけていきたいです。
2017年からは「食育」をテーマとした研修を実施
<編集部より>
今回紹介した屋久島・生物多様性研修は、「公益財団法人イオンワンパーセントクラブ」が主催した「中学生作文コンクール」金賞受賞者に対して行われました。
この屋久島での研修は2016年の作文コンクールまで実施されていましたが、2017年からは、中学生向けプログラムは「食育」をテーマとした内容に変更となり、金賞受賞者への研修も千葉県内で行われる食育ツアー(1泊2日)となっています。
新しくなったプログラムの詳細は、「イオンワンパーセントクラブ」公式サイトで確認してくださいね。
【中学生作文コンクール】
- 主催:公益財団法人イオンワンパーセントクラブ
- 対象:日本在住の中学1年生〜3年生
- テーマ:「大切な人と”ごちそうさま”」心に残る食事や料理と感謝の気持ち(400文字×3枚)
- 賞品:金賞(10名)/千葉県への食育ツアー1泊2日、図書カード3万円、銀賞(10名)/図書カード1万円分
- 応募締切:2018年1月12日(金)